分けるよ。区間を2つに分けて足し算するのがポイント。
例として,∫−22∣x∣ dx を求めてみましょう。
絶対値の記号があるときのグラフは上のようになります。y=x のグラフを考え,x 軸より下の部分を上に向かってひっくり返すと絶対値のグラフになります。
このとき,x は −2 から 2 まで変化していきますが,−2 から 0 の区間で符号を逆にしなければならないことが分かります。
式を書き換えると
∫−20−x dx+∫02x dx
=[−21x2]−20+[21x2]02
−21{0−(−2)2}+21(22−0)
=4
このように,式に絶対値がある場合には,積分区間を分けて計算し,それらを合計して積分します。
演習問題
x は 0≦ x≦ 1 をみたす実数とし,e は自然対数の底とする。以下の問いに答えなさい。(東京都立大2017)
(1) 定積分 ∫xx+1∣1−t∣e1−t dt を求めなさい。
(2) 定積分 ∫xx+1∣πsin(π t)∣ dt を求めなさい。
(3) 関数
f(x)=∫xx+1{∣1−t∣e1−t−∣πsin(π t)∣} dt (0≦ x≦1)
の最大値と最小値,およびそのときの x の値を求めなさい。
積分区間を分ける
(1)から始めます。
やり方分かったけど,区間の区切りかたが分からないです。
上の例のときは区切るポイント簡単に見つかったけど,実際の入試問題だと複雑になるね。でもていねいに考えれば大丈夫。
問題文の 0≦ x≦ 1 をもとに絶対値を区切るポイントを見つけましょう。
∫xx+1∣1−t∣e1−t dt
式を見ると,t が x から x+1 まで変化することが分かります。よって
0≦ x≦1 より
x=t とすると
0≦ t≦1
−1≦−t≦0
0≦1−t≦1
つまり,積分のスタート地点では絶対値の中はプラスの値です。次に
0≦ x≦1 より
1≦ x+1≦2
x+1=t とすると
1≦ t≦2
−2≦−t≦−1
−1≦1−t≦0
積分の終わりの地点では絶対値の中はマイナスの値です。
今度は,絶対値の区切ポイントを見つけましょう。
1−t=0 のとき
t=1
これらから,1−t はプラスから始まって t=1 で符号が逆転,あとはマイナスになることが分かります。よって積分区間を [x,1] と [1,x+1] に分けて,2つ目の積分は符号を逆にして絶対値を外せばうまくいきそうです。
∫x1(1−t)e1−t dt+∫1x+1(t−1)e1−t dt
式がかけ算なので部分積分に持ち込みましょう。
=∫x1(1−t)(−e1−t)’ dt+∫1x+1(t−1)(−e1−t)’ dt
=∫x1(t−1)(e1−t)’ dt+∫1x+1(1−t)(e1−t)’ dt
=[(t−1)e1−t]x1−∫x1(t−1)’e1−t dt+[(1−t)e1−t]1x+1−∫1x+1(1−t)’e1−t dt
=−(x−1)e1−x−∫x1e1−t dt−xe−x+∫1x+1e1−t dt
=−(x−1)e1−x−[−e1−t]x1−xe−x+[−e1−t]1x+1
=−xe1−x+e1−x+1−e1−x−xe−x−e−x+1
=2−xe1−x−xe−x−e−x
式をなるべくまとめておきます。
=2−(xe+x+1)e−x
e−x× e=e1−x でもとに戻るのを確認して。
=2−{x(e+1)+1}e−x (答え)
三角関数の場合
(2)に進みます。
(1)と同じ手順で積分区間を分けます。
0≦ x≦1 より
x=t とすると
0≦π t≦π
0≦sin(π t)≦1
また
1≦ x+1≦2 より
x+1=t とすると
π≦π t≦2π
−1≦sin(π t)≦0
つまり,絶対値の中はプラス→マイナスに変化します。符号が逆転するポイントを求めると
sin(π t)=0 とすると
π t=0,π,2π,⋯
t=0,1,2,⋯
よって
∫x1πsin(π t) dt−∫1x+1πsin(π t) dt
上で作った不等式くっつけると
0≦ x≦1≦ x+1≦2
だから,途中で 1 を通るってこと。あとは符号を考えて絶対値を外せばオッケー。
もう少し厳密に言うと,x=0 のとき,式は
∫01πsin(π t) dt−∫11πsin(π t) dt
となり,2 つ目の項は 0 になります。
同様に x=1 のとき
∫11πsin(π t) dt−∫12πsin(π t) dt
となり,今度は 1 つ目の項が 0 になります。
このように,t=1 が積分区間の端になることがありますが,式としてはちゃんとつじつまが合います。
∫x1πsin(π t) dt−∫1x+1πsin(π t) dt
=[−cos(π t)]x1−[−cos(π t)]1x+1
=−{cosπ−cos(π x)}+cos{π(x+1)}−cosπ
=1+cos(π x)+cos(π x+π)+1
[te]三角比の相互の関係から
cos(π x+π)=−cos(π x) が成り立つ。ピンと来ないときは加法定理で求めると良い。
=2+cos(π x)−cos(π x)
=2 (答え)
最大値と最小値
(3)に進みます。(1)と(2)の答えを使って式を作りましょう。
f(x)=∫xx+1{∣1−t∣e1−t−∣πsin(π t)∣} dt (0≦ x≦1)
=2−{(e+1)x+1}e−x−2
=−{(e+1)x+1}e−x
グラフの形を調べるために,微分して増減表を作りましょう。
f′(x)=−{(e+1)x+1}’e−x−{(e+1)x+1}(e−x)’
=−(e+1)e−x+{(e+1)x+1}e−x
={−(e+1)+(e+1)x+1}e−x
={(e+1)x−e}e−x
{(e+1)x−e}e−x=0 とすると
e−x=0 より (e+1)x−e=0
x=e+1e
増減表は
x f′(x) f(x)0−⋯−
e+1e0⋯+
1+
ここから,最大値と最小値を考えます。増減表から最大値は x が 0 または 1 のときなので,二つを比べてみます。
f(0)=−{(e+1)⋅0+1}e−0=−1
f(1)=−{(e+1)⋅1+1}e−1
=−(e+2)e−1
式をもう少し変形してみます。
=−1−e2
e2>0 だから
−1>−1−e2
よって,最大値は x=0 のとき。
また,最小値は x=e+1e のときだから
f(e+1e)=−{(e+1)e+1e+1}ee+1e
=−(e+1)ee+1e
したがって
最大値は x=0 のとき −1
最小値は x=e+1e のとき −(e+1)ee+1e
(答え)
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