絶対値のある関数のグラフと領域(神戸大2016文系第2問)
$a$ を正の定数とし,$f(x)=|x^2+2ax+a|$ とおく。以下の問に答えよ。
(1) $y=f(x)$ のグラフの概形をかけ。
(2) $y=f(x)$ のグラフが点 $(-1,2)$ を通るときの $a$ の値を求めよ。また,そのときの $y=f(x)$ のグラフと $x$ 軸で囲まれる図形の面積を求めよ。
(3) $a=2$ とする。すべての実数 $x$ に対して $f(x)\geqq2x+b$ が成り立つような実数 $b$ の取りうる値の範囲を求めよ。
負の値をとるとき・とらないとき
(1)から始めます。
絶対値があるので,絶対値の中が正の数になるときと負の数になるときで,分けて考えなければなりません。とは言え,それは $a$ の値によって変わります。
$x^2+2ax+a$ は下に凸のグラフなので,いったん平方完成して頂点が $x$ 軸より上になるか下になるかを考えましょう。
$y=x^2+2ax+a$ として
$=(x+a)^2-a^2+a$
$=(x+a)^2+a-a^2$
頂点は $(-a,a-a^2)$ となるので,$a-a^2\leqq0$ のとき,関数は負の値をとる部分ができ,$a-a^2>0$ ならば 0 または正の値をとることになります。
$a-a^2\leqq0$
$a^2\geqq a$
$a$ は正の数だから両辺を $a$ で割ることができます。
$a>1$
また
$a-a^2>0$
$a^2<a$
$a<1$
$a$ は正の数だから,$a\geqq1$ のときと,$0<a<1$ のときでグラフの形が変わります。
グラフの概形を 2 つに分けて描きましょう。
$a\geqq1$ のとき
$0<a<1$ のとき
面積を求める
(2)に進みます。
$y=|x^2+2ax+a|$ に $(x,y)=(-1,2)$ を代入すると
$2=|(-1)^2+2a(-1)+a|$
$2=|1-2a+a|$
$2=|1-a|$
絶対値の部分を考えると,$a$ が 1 より小さければ $1-a$ は正の数で,1 より大きければ負の数になります。
$0<a<1$ のとき
$2=1-a$
$a=-1$ →$a$ は正の数だから,不適
$a\geqq1$ のとき
$2=-1+a$
$a=3$
よって,$a=3$ (答え)
次に,面積を求めます。
$f(x)$ に $a=3$ を代入すると
$f(x)=|x^2+6x+3|$
$=|(x+3)^2-9+3|$
$=|(x+3)^2-6|$
$(x+3)^2-6=0$ とすると
$(x+3)^2=6$
$x+3=\pm\sqrt{6}$
$=-3\pm\sqrt{6}$
面積を求めます。ここは,2 次関数と直線で囲まれた領域になるので,6 分の 1 公式を利用しましょう。
$S=\cfrac{(\beta-\alpha)^3}{6}$
$=\cfrac{(-3+\sqrt{6}+3+\sqrt{6})^3}{6}$
$=\cfrac{(2\sqrt{6})^3}{6}$
$=\cfrac{48\sqrt{6}}{6}$
$=8\sqrt{6}$ (答え)
直線との関係
(3)に進みます。
$a=2$ とすると
$f(x)=|x^2+4x+2|$
$f(x)\geqq2x+b$ ということは,曲線と直線をタテ方向で比べたとき,曲線が直線よりも上にあるということです。
$y=2x+b$ は $b$ の値によってタテ方向に平行移動するので,いろいろパターンを考えてみると,①と②の場合が考えられます。グラフはあくまで概形なので,この段階ではどちらになるかは分かりません。
②の場合について考えてみましょう。このとき,直線は曲線の接線になるので,傾きは 2 です。
$y=x^2+4x+2$ として
$y’=2x+4$
$2x+4=2$ とすると
$2x=-2$
$x=-1$
曲線と $x$ 軸の交点は
$x=-2\pm\sqrt{2^2-2}=-2\pm\sqrt{2}$
だから
$-1<-2+\sqrt{2}$
より,②の形にはなりません。
したがって,①の形で考えると,直線は $(-2+\sqrt{2},0)$ を通るので
$y\geqq ax+b$
$0\geqq2(-2+\sqrt{2})+b$
$b\leqq4-2\sqrt{2}$ (答え)
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