絶対値が 2 つある式 |x+1|+|x-1| の対処法-3つに場合分け(東京都立大2017文系第3問)

絶対値が 2 つある式を考えるよ。

$|x+1|+|x-1|$
絶対値の記号を外すには,中の式が正の数になるときと負の数になるときで場合分けをします。
たとえば $|x+1|$ なら,いったん $x+1=0$ を考えます。
すると,$x=-1$ となるので,$x\geqq-1$ のときと,$x<-1$ のときに場合分けします。

$x$ が $-1$ より大きい,たとえば,$x=0$ とかだと $0+1=1$ だから,中の式が正の数になる。
$x=-2$ だと $-2+1=-1$ で負の数か。

次に,絶対値の記号が 2 つある式を考えます。
$|x+1|+|x-1|$
上の考えでいけば,$|x+1|$ は $x=-1$ をさかい目にして正の数と負の数に分かれます。同様に,$|x-1|$ は $x=1$ がさかい目です。
上の考えを組み合わせると,式は $x=-1$ と $x=1$ の 2 つのさかい目があるということになります。したがって
・$x<-1$ のとき
どちらも負の数になるので
$(-x-1)+(-x+1)$
・$-1\leqq x<1$ のとき
$x+1$ は正の数で $x-1$ は負の数のになるので
$x+1+(-x+1)$
・$1\leqq x$ のとき
どちらも正の数になるので
$x+1+x-1$
このように 3 つに場合分けすればオッケーです。

実戦問題

$a,b$ を実数とし,$a>0$ とする。$f(x)=ax^2+b$,$g(x)=|x+1|+|x-1|$ とするとき,以下の問いに答えなさい。(東京都立大2017)
(1) $g(x)=6$ をみたす $x$ の値をすべて求めなさい。
(2) $y=f(x)$ のグラフと $y=g(x)$ のグラフがちょうど 3 点で接するような $a,b$ の値を求めなさい。
(3) $a,b$ が(2)で求めた値のとき,$y=f(x)$ のグラフと $y=g(x)$ のグラフで囲まれた 2 つの部分の面積の和 $S$ を求めなさい。

絶対値を場合分けする

(1)から始めます。
(i) $x<-1$ のとき
$(-x-1)+(-x+1)=6$
$-2x=6$
$x=-3$
(ii) $-1\leqq x<1$ のとき
$x+1+(-x+1)=6$
$2=6$
式が成り立たないので,不適。

つまり,$-1\leqq x<1$ の範囲ではつねに $g(x)=2$ となるから,6 になることはない。

(iii) $1\leqq x$ のとき
$x+1+x-1=6$
$2x=6$
$x=3$
したがって
$x=-3,3$ (答え)

グラフの形を考えてみる

(2)に進みます。
$f(x)$ は $a$ と $b$ の値によって,さまざまなグラフができるのですが,$g(x)$ はグラフの形が決まっています。$g(x)$ のグラフを描いてみましょう。
(i) $x<-1$ のとき
$g(x)=-x-1-x+1=-2x$
(ii) $-1\leqq x<1$ のとき
$g(x)=x+1-x+1=2$
(iii) $1\leqq x$ のとき
$g(x)=x+1+x-1=2x$

$f(x)$ と $g(x)$ が 3 点で接するグラフを考えてみると上のようになります。
このとき,$b=2$ です。
よって
$f(x)=ax^2+2$
として,他の接点を求めてみます。
$ax^2+2=-2x$ とすると
$ax^2+2x+2=0$
これが1か所で接するので,判別式 $D=0$ となります。
$\cfrac{D}{4}=1-2a=0$
$a=\cfrac{1}{2}$
また $ax^2+2=2x$ とすると
$ax^2-2x+2=0$
$\cfrac{D}{4}=1-2a=0$
$a=\cfrac{1}{2}$

グラフの形は左右対称だから,$f(x)$ と $y=-2x$ が 1 点で接するなら,$f(x)$ と $y=2x$ も 1 点で接するってのは当然と言えば当然の話。

したがって
$(a,b)=\Big(\cfrac{1}{2},\space 2\Big)$ (答え)

面積を求める

(3)に進みます。
面積を求めるには積分区間を知る必要があります。そこで $f(x)$ と $g(x)$ の接点の $x$ 座標を求めてみましょう。
$1\leqq x$ のとき,(2)より
$f(x)=\cfrac{1}{2}x^2+2$
$g(x)=2x$ として
式を連立すると
$\cfrac{1}{2}x^2+2=2x$
$\cfrac{1}{2}x^2-2x+2=0$
$x^2-4x+4=0$
$(x-2)^2=0$
$x=2$
グラフは左右対称なので,片側を求め,それを 2 倍します。
$\displaystyle S=2\Big\{\int_0^1\frac{1}{2}x^2+2-2\space dx+\int_1^2\cfrac{1}{2}x^2+2-2x\space dx\Big\}$
このように,上のグラフから下のグラフを引く,という要領で式を作ります。下の直線は途中で折れ曲がっているので,積分区間を 0 から 1 までと 1 から 2 までに分け,それを合計することで全体の面積を求めます。
$\displaystyle=\int_0^1x^2\space dx+\int_1^2x^2-4x+4\space dx$
$=\Big[\cfrac{x^3}{3}\Big]_0^1+\Big[\cfrac{x^3}{3}-2x^2+4x\Big]_1^2$
$=\cfrac{1}{3}+\cfrac{8}{3}-8+8-\cfrac{1}{3}+2-4$
$=\cfrac{2}{3}$ (答え)