漸近線の求め方/極限を求めるのに平均値の定理を用いる問題(神戸大2018理系第2問)

$k$ を 2 以上の整数とする。また

$f(x)=\cfrac{1}{k}\Big((k-1)x+\cfrac{1}{x^{k-1}}\Big)$

とおく。以下の問に答えよ。

(1) $x>0$ において,関数 $y=f(x)$ の増減と漸近線を調べてグラフの概形をかけ。

(2) 数列 $\{x_n\}$ が $x_1>1,x_{n+1}=f(x_n)$ $(n=1,2,\cdots)$ を満たすとき,$x_n>1$ を示せ。

(3) (2)の数列 $\{x_n\}$ に対し,

$x_{n+1}-1<\cfrac{k-1}{k}(x_n-1)$

を示せ。また $\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}x_n$ を求めよ。

漸近線を求める

(1)から始めます。

$f(x)=\cfrac{1}{k}\Big((k-1)x+\cfrac{1}{x^{k-1}}\Big)$
$=\cfrac{k-1}{k}x+\cfrac{1}{kx^{k-1}}$

$x$ に大きな数を入れてみる。例えば,$=\cfrac{k-1}{k}\times10000+\cfrac{1}{k\times10000}$ とか。そうすると $x$ の値が大きくなるほどこの式って $=\cfrac{k-1}{k}x$ に近づいていく。$x$ が 1 億とかだったら,$\cfrac{1}{kx^{k-1}}$ はほとんど 0 って言っていいよね。
$\cfrac{1}{kx^{k-1}}$ が消えてしまうカンジ?
そう。だから,$f(x)$ のグラフは $x$ が大きくなると限りなく $\cfrac{k-1}{k}x$ という直線の式に近づいていく。こういうのを漸近線って言う。

また,式を微分すると

$f'(x)=\cfrac{1}{k}\{k-1+(1-k)x^{-k}\}$

$\cfrac{1}{k}\{k-1+(1-k)x^{-k}\}=0$ とすると両辺を $k$ 倍して

$k-1+(1-k)x^{-k}=0$
$(1-k)x^{-k}=1-k$
$x^{-k}=1$
$\cfrac{1}{x^k}=1$
$x^k=1$

$k$ は 2 以上の整数で,また $x>0$ だから,方程式が成り立つのは $x=1$ のときです。

増減表は

$\def\arraystretch{1.5}\begin{array}{|c|c|c|c|c|c|}\hline x&(0)&\cdots&1&\cdots&(\infty)\\\hline f'(x)&&-&0&+\\\hline f(x)&&\searrow&1&\nearrow\\\hline\end{array}$

$f(1)=\cfrac{1}{k}(k-1+1)=1$

(答え)

数学的帰納法

(2)に進みます。

ここは数学的帰納法を用いて証明していきましょう。

$x_1>1$ のとき

$x_n>1$ ・・・(*)

とする。

[I] $n=1$ のとき

$x_1>1$

よって,$n=1$ のとき(*)が成り立つ。

[II] $n=k$ のとき,(*)が成り立つと仮定して,$n=k+1$ とすると

$x_{k+1}=f(x_k)>f(1)=1$

(1)で作ったグラフをもとに考えると,$x$ の値が 1 以上のときは $y$ も 1 以上だから,$x_k$ が 1 以上なら $x_{k+1}$ は 1 以上です。

[I],[II] より,すべての自然数 $n$ について(*)が成り立つ。(証明終わり)

平均値の定理を用いて極限を求める

(3)に進みます。

$x_{n+1}-1<\cfrac{k-1}{k}(x_n-1)$

を変形すると

$\cfrac{x_{n+1}-1}{x_n-1}<\cfrac{k-1}{k}$

(2)より

$\cfrac{f(x_{n})-f(1)}{x_n-1}<\cfrac{k-1}{k}$

となります。

ここで,数 III で不等式の証明といえば平均値の定理だよねってのがひらめくと良い。
でも不等式のとき必ず平均値の定理ってワケでもないし,判断つかない。
不等式の左辺を見てほしいのだけど,式変形した結果,$\cfrac{y\textsf{の変化量}}{x\textsf{の変化量}}$ という形ができあがると平均値の定理が使える。式変形しながら試行錯誤してるうちに気づくかどうかは練習量の問題だろうね。

平均値の定理より

$\cfrac{f(x_{n})-f(1)}{x_n-1}=f'(c_n)$ $(1<c_n<x_n)$

を満たす $c_n$ が存在する。

(1)より

$f'(x)=\cfrac{1}{k}\{k-1+(1-k)x^{-k}\}$

$f'(c_n)=\cfrac{1}{k}\{k-1+(1-k){c_n}^{-k}$
$=\cfrac{k-1}{k}\Big(1-\cfrac{1}{c_n}\Big)$

$1<c_n$ だから,$1-\cfrac{1}{c_n}$ は 1 より小さい値です。よって

$\cfrac{k-1}{k}\Big(1-\cfrac{1}{c_n}\Big)<\cfrac{k-1}{k}$

$f'(c_n)<\cfrac{k-1}{k}$

が成り立ちます。左辺をさかのぼっていくと

$\cfrac{x_{n+1}-1}{x_n-1}<\cfrac{k-1}{k}$

$x_{n+1}-1<\cfrac{k-1}{k}(x_n-1)$

(証明終わり)

次に極限を求めます。

不等式があって極限求めるから,ここははさみうちの原理使うっぽい。ここも練習積んでいくとそういう予感がしてくるもの。

(2)より $x_n>1$ だから,$x_n-1>0$ が成り立ちます。よって

$0<x_{n+1}-1<\cfrac{k-1}{k}(x_n-1)$
$0<x_n-1<\cfrac{k-1}{k}(x_{n-1}-1)$

ここで,$x_n-1=a_n$ とすると

$a_n<\cfrac{k-1}{k}a_{n-1}$ ・・・①

という関係になります。

これって漸化式だから,この関係が $n-2$,$n-3$,・・・,$1$ までつながっていくイメージができあがるとうまくいく。

$a_{n-1}<\cfrac{k-1}{k}a_{n-2}$
$\cfrac{k-1}{k}a_{n-1}<\Big(\cfrac{k-1}{k}\Big)^2a_{n-2}$ ・・・②

となるので,①,②より

$a_n<\cfrac{k-1}{k}a_{n-1}<\Big(\cfrac{k-1}{k}\Big)^2a_{n-2}$

これを繰り返していくと

$a_n<\cfrac{k-1}{k}a_{n-1}<\Big(\cfrac{k-1}{k}\Big)^2a_{n-2}<\cdots<\Big(\cfrac{k-1}{k}\Big)^{n-1}a_1$

$0<a_n<\Big(\cfrac{k-1}{k}\Big)^{n-1}a_1$
$0<x_n-1<\Big(\cfrac{k-1}{k}\Big)^{n-1}(x_1-1)$

$\cfrac{k-1}{k}<0$ だから

$\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}\Big\{\Big(\cfrac{k-1}{k}\Big)^{n-1}(x_1-1)\Big\}=0$

はさみうちの原理より

$\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}(x_n-1)=0$

$\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}x_n-\lim_{n\rightarrow\infty}1=0$

$\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}x_n-1=0$

したがって

$\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}x_n=1$

(答え)