【数III微分積分】x を定数としてみなして微分する/回転体の体積(九州大2021理系第3問)
座標平面上の点 $(x,y)$ について,次の条件を考える。
条件:すべての実数 $t$ に対して $y\leqq e^t-xt$ が成立する。・・・(*)
以下の問いに答えよ。必要ならば $\displaystyle\lim_{x\rightarrow+0}x\log x=0$ を使ってよい。
(1) 条件(*)をみたす点 $(x,y)$ 全体の集合を座標平面上に図示せよ。
(2) 条件(*)をみたす点 $(x,y)$ のうち,$x\geqq1$ かつ $y\geqq0$ をみたすもの全体の集合を $S$ とする。$S$ を $x$ 軸の周りに 1 回転させてできる立体の体積を求めよ。
x を定数としてみなす
(1)から考えます。
すべての実数 $t$ に対して不等式が成り立つという条件から,$y\leqq e^t-xt$ を $x$ の関数ではなく $t$ の関数として考えると良いでしょう。
このとき,$t$ が変化し,$x$ は定数とみなします。
例えば $x=1$ と仮定して,$y=e^t-t$ とすると
$y’=e^t-1$
$e^t-1=0$ として $e^t=1$ だから $t=0$
増減表を作ると分かりますが,$t=0$ のときに $y$ は最小となります。
$t=0$ のとき,$y=e^0-0=1$ となるので,もともとの不等式は
$y\leqq1$
つまり,$y$ 座標が 1 より下の部分を塗りつぶすことになります。
$f(t)=e^t-xt$ として
$f'(t)=e^t-x$
$e^t-x=0$ のとき
$e^t=x$
両辺で対数をとって
$\log e^t=\log x$
このとき,真数条件から $x>0$
$t\log e=\log x$
$t=\log x$
増減表は
$\def\arraystretch{1.5}\begin{array}{|c|c|c|c|}\hline t&\cdots&\log x&\cdots\\\hline f'(t)&-&0&+\\\hline f(t)&\searrow&&\nearrow\\\hline\end{array}$
$f(\log x)=e^{\log x}-x\log x$
ここで,$e^{\log x}$ を整理しておきます。
$e^{\log x}=k$ として
$e$ の $\log x$ 乗が $k$ であるという関係を対数で表すと,次の式が出来上がります。
$\log k=\log x$
$x=k$
よって
$f(\log x)=x-x\log x$
$e^t-xt$ の最小値が $x-x\log x$ であるということは
$y=x-x\log x$ が領域の境界であるということです。ただし,これは $x>0$ の範囲においてです。
他の場合も考えてみましょう。
・$x=0$ のとき
$y\leqq x-x\log x$
を考えると,問題文の条件
$\displaystyle\lim_{x\rightarrow+0}x\log x=0$
より
$y\leqq0$
となります。
・$x<0$ のとき
$f'(t)=e^t-x$ から考えると,すべての実数 $t$ において,$f'(t)$ は正の数となります。つまり,$f(t)$ は単調増加です。このとき
$\displaystyle\lim_{t\rightarrow-\infty}f(t)=-\infty$
となり
$y\leqq-\infty$
をみたす $y$ の値は存在しません。
したがって
$y\leqq x-x\log x$ $(x>0)$
$y\leqq 0$ $(x=0)$
ここで,$x$ 軸との交点を求めておきましょう。
$x-x\log x=0$ とすると
$x(1-\log x)=0$
$1-\log x=0$ のとき
$\log x=1$
$x=e$
よって,$x=0,e$
また,グラフの最大となる点は
$g(x)=x-x\log x$ として
$g'(x)=1-\Big(\log x+x\cdot\cfrac{1}{x}\Big)$
$=-\log x$
$-\log x=0$ のとき
$x=1$
$g(1)=1-\log 1=1$
よって,グラフが最大となる点は $(x,y)=(1,1)$ です。
(答え)
回転体の体積を求める
(2)に進みます。
回転体の体積は,断面の円の面積を積分して求めます。
断面の円の面積は
$S=\pi r^2$
$=\pi(x-x\log x)^2$
$\pi\{x^2-2x^2\log x+x^2(\log x)^2\}$
回転体の体積は
$\displaystyle S=\pi\int_1^e x^2-2x^2\log x+x^2(\log x)^2\space dx$
一度に計算するとタイヘンなので,分けて計算していきます。
$\displaystyle \int x^2\space dx$
$=\cfrac{x^3}{3}+C_1$
$\displaystyle\int2x^2\log x\space dx$
式がかけ算なので,部分積分を用います。
$\displaystyle=2\int\Big(\cfrac{x^3}{3}\Big)’\log x\space dx$
$\displaystyle =2\Big\{\cfrac{x^3}{3}\log x-\int\cfrac{x^3}{3}\cdot\cfrac{1}{x}\space dx\Big\}$
$\displaystyle=\cfrac{2}{3}x^3\log x-\cfrac{2}{3}\int x^2\space dx$
$=\cfrac{2}{3}x^3\log x-\cfrac{2}{9}x^3+C_2$
$\displaystyle\int x^2(\log x)^2\space dx$
$\displaystyle=\int\Big(\cfrac{x^3}{3}\Big)'(\log x)^2\space dx$
$\displaystyle=\cfrac{x^3}{3}(\log x)^2-\int\cfrac{x^3}{3}\cdot2(\log x)\cdot\cfrac{1}{x}\space dx$
$\displaystyle=\cfrac{x^3}{3}(\log x)^2-\cfrac{1}{3}\int 2x^2\log x\space dx$
ここで,先ほど積分した結果を利用しましょう。
$\displaystyle=\cfrac{x^3}{3}(\log x)^2-\cfrac{1}{3}\Big(\cfrac{2}{3}x^3\log x-\cfrac{2}{9}x^3\Big)$
$\displaystyle=\cfrac{x^3}{3}(\log x)^2-\cfrac{2}{9}x^3\log x-\cfrac{2}{27}x^3+C_3$
($C_1,C_2,C_3$は積分定数)
よって
$V=\pi\Big[\cfrac{x^3}{3}-\cfrac{2}{3}x^3\log x+\cfrac{2}{9}x^3+\cfrac{x^3}{3}(\log x)^2-\cfrac{2}{9}x^3\log x+\cfrac{2}{27}x^3\Big]_1^e$
$=\pi\Big[\cfrac{17}{27}x^3-\cfrac{8}{9}x^3\log x+\cfrac{x^3}{3}(\log x)^2\Big]_1^e$
$=\pi\Big(\cfrac{17}{27}e^3-\cfrac{8}{9}e^3+\cfrac{1}{3}e^3-\cfrac{17}{27}\Big)$
$=\cfrac{27}{\pi}(17e^3-24e^3+9e^3-17)$
$=\cfrac{\pi}{27}(2e^3-17)$ (答え)
SNSでシェア