現代人は昔の人よりも太りやすい 腸内細菌の変化と健康

現代人は昔の人に比べて太りやすくなっています。もしかすると、その理由は現代人の生活が食べ過ぎで運動不足だからだ、と思うかもしれません。しかし、アメリカで30年前の人々と比較した研究結果では、必ずしもそれらが理由ではないことが示唆されています。

”奇妙なことに、運動、タンパク質、脂肪、および主要栄養素の摂取が一致した場合でも、2006年の人は1988年の人の2倍以上のBMIを示した。これは、食事に関係なく、私たちは以前の世代より10%重いことを意味する。”

運動量は増え、タンパク質と脂肪の摂取は減少した

アメリカにおいてこの30年の変化を調査したところ、運動量については47~120%増加した一方で、炭水化物の摂取量は10~14%増加し、タンパク質と脂肪の摂取量は5~9%減少しました。

また上に述べたように、運動量や栄養摂取の内容が変化していないとしても、現代の私たちは30年前の人々より太りやすくなっているのです。

その理由の一つは、食品に含まれる農薬や防腐剤が私たちのホルモンに影響を与えている可能性です。また、もう一は私たちの飲んでいる薬が腸内細菌の生態系に与える影響です。

人間を含む生物の腸内には莫大な数の細菌が存在します。私たちは学校の理科の授業で、人間は消化液を使って食べたものを分解し腸から栄養を摂取していると学びます。しかし実際には消化液で食べ物を分子レベルで分解することは困難であると言われています。

そこで、腸内に住む細菌が人間が食べたものをエサとして分解し、それを人間が栄養として腸壁を通じて取り入れているのです。つまり、人間は腸内細菌なくして生きていくことはできない存在なのです。

腸内細菌は私たちの体質に大きな影響を与えている。

また、腸内細菌と言ってもその種類は膨大で、多様な細菌がお互いに食べたり食べられたりを繰り返しながらその人によって独自の生態系を築いています。これもまた、理科の時間に学んだ生態系のピラミッドの話と同じで、サバンナでライオンを頂点とした生態系のピラミッドが築かれているのと同じように、人間の腸内でも細菌同士が一定の割合を保ちながら暮らしているのです。

そして、最近の研究では腸内細菌の生態系がその持ち主の体質に影響を与えていることも分かってきました。例えばある種の細菌の割合は肥満と相関関係があると考えられています。

今回の研究で示唆されていることをまとめると、30年前と今を比べ食事や運動の状態が同じだったとしても今の私たちの方が肥満になりやすく、その理由として最も有力なのは腸内細菌の生態系の変化である、ということです。腸内細菌の生態系に変化をもたらした要因は、農薬や防腐剤、薬などが推測されているものの、これはあくまでも可能性であり、さらなる調査が必要になります。