風力発電に朗報? 地球の風が強くなっている

地球環境は年月とともに常に変化し続けており、温暖化や氷河期のような寒冷化など時代によって気温が大きく変動してきたことが知られています。今回発表された論文では、そこに風速の変動という新しい要素を加えようとしています。

”Nature Climate Changeで11月18日に発行された論文では、1978年から10年ごとに風速が約2.3%減少したのに対し、2010年以降、風速はほぼ3倍の速さで増加したことが示されれた。”

風はいったん弱くなったあと強くなった

研究者は1978年から2017年において、北米、ヨーロッパ、アジアの1400箇所以上の気象観測所のデータを収集し、風速の記録を分析しました。その結果、1978年から2010年までの10年ごとに風速はおよそ2.3%ずつ減少していました。近年までは風は徐々に弱くなっていたのです。

これまで風が弱まっている原因は、都市化にあると言われてきました。観測所の周辺に建物が増えると風がブロックされるため、観測値が低くなります。しかし、それでは2010年以降の風速の増加は説明できません。世界規模で観測所の周辺の建物が取り壊されて更地になったということはあり得ないでしょう。つまり、もっと大きな要因が関係していると推測されます。

研究者は、海水が場所によって不均一に温められることで海上の風を生み出し、それが陸地の風の流れにも影響することを確かめました。つまり、風が強くなった原因は海水温の変動によるものと言えるのです。

また、研究者は調査結果をもとに風力発電の発電量についても計算を行いました。その結果、風力タービンは平均で2010年より2017年の方が17%多く発電し、さらに2024年には37%多く発電することを予測しました。

風力発電の効率は地球規模の気候変動の影響を受ける

このまま風が強くなっていくことは風力発電にとっては朗報かもしれませんが、研究者はそれに警告を与えます。予測では当面は風が強くなる可能性が高いと言っても、その先は再び風が弱くなる可能性が十分にあるからです。風力タービンの寿命は20年ほどと言われており、将来の気象予測に基づいて適切な投資を行うことが肝心だと述べています。