ライブ配信の起源は19世紀のパリ テアトロフォンによるストリーミングサービス

インターネットのライブ配信を視聴した経験はありますか? 最近では日本の代表的な音楽イベントであるフジ・ロックフェスティバルが Youtube を通じてライブ配信を行っており、ライブストリーミングによる映像配信はますます一般的なものになってきています。

しかしながら、インターネットが普及する以前からテレビやラジオの生放送を始めとするライブストリーミングサービスは存在していました。そして、その起源をさかのぼると 19 世紀パリのテアトロフォンにたどり着きます。

”テアトロフォンは好奇心をそそるものであった。その概念には、ステージから両耳に音を伝える2チャンネルのオーディオシステムにつながる配線が含まれていた。そこから、その配線は受信側のオーディオソースに音を送信する。博覧会のために、80台の電話送信機がパリオペラのステージ全体に設置され、(パリの下水道を通るケーブルを通じて)パリ電気展示室に接続された。”

世界初のライブストリーミング放送は19世紀のパリ

テアトロフォンは世界発のステレオ放送を実現した。

テアトロフォンが初めて公開されたのは 1881 年のパリ国際電気博覧会においてです。展覧会ではエジソンが発明した電球やグラハム・ベルの電話機など、今日でも知られる重要な発明品が展示されました。

上に紹介したように、テアトロフォンは上映されているオペラ公演をマイクを通じて会場から遠く離れたヘッドフォンに送信するシステムでした。配線は下水管を通じて設置され、オペラ会場から2キロ離れた受信機でオペラをリアルタイムに聞くことができました。

また、テアトロフォン放送が画期的だったのは、会場にマイクを二本立てることでステレオ放送を実現した点です。今から 100 年以上前のできごとですが、その当時ステレオ音声で音を空間的に聞いていた人々がいたという事実は驚きです。

博覧会のあと、この技術を模倣してヨーロッパ各地で定額制のライブ配信サービスが始まります。イギリスでは Electrophone という名前のサービスが始まりましたが、その金額は月額5ポンドで当時の人々の家賃2か月分に当たる高価なものでした。そのため、サービスはあくまで上流階級の人々のものだったようです。

フランスではホテルのロビーやカフェでコイン式の受信機が普及しました。テアトロフォンはその当時、パリの最先端のファッションだったのです。

しかし、一世を風靡したテアトロフォンも 1930 年代により手軽なラジオ放送が普及するとひっそりと消えていきました。

今日では忘れ去られたテアトロフォンですが、ライブストリーミングとステレオ放送という重要な技術を初めて実用化したという点で評価に値する発明だったと言えるでしょう。