数学の能力に男女差はない それでも男子が数学が得意になる理由

世の中には数学が苦手な女子高生が大勢います。中学、高校と学年が進むにつれ、どうしても数学は男子の方が得意になるもので、大学の理系の学部も圧倒的に男子の人数が多いのが当たり前の光景となっています。これは日本に限ったことではありません。ところが、教育に関する多くの研究結果によれば、人間の脳に男女差は本来存在しないことがこれまで度々示されています。今回発表された子供に対する調査でも同様の結果が裏付けられています。

”この発見は、STEM分野(科学、技術、工学、数学)で女子よりも男子の方が多くなるという考えに挑戦しています。なぜなら、彼らはそれらの分野が必要とする種類の思考に本質的に優れているからです。”

脳の活動に男女差はない

カーネギー・メロン大学の発達神経学の教授ジェシカ・カントロンは、3歳から10歳までの104人の子供たちに対して調査を行い、磁気共鳴スキャナーを用いて算数の学習を行っている子供の脳を監視しました。

人間が数学に取り組んでいるとき、脳の頭頂間溝と呼ばれる部分が活性化することが知られています。今回の調査では、男女にこの部分の活動の違いは見られませんでした。つまり、脳の仕組み自体に男女差はなく、女子に比べて男子の方が数学が得意になる原因は生まれつきとは言えないのです。

女性が数学が苦手になる理由

しかし、日本に限らず多くの国では、10代の子供たちの数学の能力に差が生まれます。数学で優秀な能力を持つ生徒は男子の方が割合が高くなるのです。なぜそうなるのかについては、いくつか仮説があります。

一つはジェンダーに基づく役割期待の違いです。数学の関係する工学分野の産業はもともと男の力仕事の世界でもあり、女性の仕事ではないと思われてきました。また、一度そうした産業が男性によって占められてしまうと、あとから女性がそこに参入するのかなり勇気のいることで、結果的に女性がますます数学から遠ざかってしまったと考えられます。

もう一つの仮説はなかなか興味深いものです。ミズーリ大学のデイヴィッド・ギアリー教授はアメリカなど男女の公平性が高い国では、むしろ女性が数学やコンピューターサイエンスで学位を取得する割合が低くなっていることを指摘しています。その理由は、経済的に豊かな国では女性が経済的理由によって学問の分野を選択しなければならないというプレッシャーが少なく、自分の興味に合わせて自由に学問を選ぶことができるからだと説明しています。女性の方が選択肢の幅が広ければ、それだけ理系分野を選択しようとする女性の割合は低くなる、ということです。

この結果は日本にも通じるところがあるのかもしれません。日本では、四年制大学では男子の進学率が高いものの、短大を含めた場合では男子の進学率は55.6%、女子の進学率は57.1%と女子の方が進学率が高くなっています(平成28年度の数値)。男子は一家の稼ぎ頭となることが期待されているため、理系の大学に進むか、それが無理なら高校を出てすぐに働き始めるか、むしろ男子の方が選択肢が少ないがゆえに、日本の男子中高生たちは数学の勉強に向かわざるを得ないのかもしれません。