【III微分・極限】式が単調増加であることを利用して不等式を証明する/はさみうちの原理(東京都立大2016理学部第2問)

$n$ を自然数とし,

$h(x)=x-n\log x$

とおく。ただし,$\log x$ は自然対数とする。以下の問いに答えなさい。(東京都立大2016)

(1) $x\geqq2n$ のとき,$h'(x)\geqq\cfrac{1}{2}$ が成り立つことを示しなさい。ただし,$h'(x)$ は $h(x)$ の導関数とする。

(2) $x\geqq2n$ のとき,$h(x)-h(2n)\geqq\cfrac{1}{2}(x-2n)$ が成り立つことを示しなさい。

(3) $x\geqq2n$ かつ $x\geqq2n-2h(2n)$ のとき,$h(x)\geqq0$ が成り立つことを示しなさい。

(4) (3)を利用して $\displaystyle\lim_{x\rightarrow\infty}\cfrac{x^{n-1}}{e^x}=0$ が成り立つことを示しなさい。ただし,$e$ は自然対数の底とする。

自然対数の微分

(1)から始めます。自然対数の微分は公式として暗記しましょう。

$(\log x)’=\cfrac{1}{x}$

$h(x)=x-n\log x$ より

$h'(x)=1-\cfrac{n}{x}$

このままでは証明できないので,問題文の条件 $x\geqq2n$ を変形して $1-\cfrac{n}{x}$ の形にしてみることを考えます。

$x\geqq2n$
$1\geqq\cfrac{2n}{x}$
$\cfrac{n}{x}\leqq\cfrac{1}{2}$
$-\cfrac{n}{x}\geqq-\cfrac{1}{2}$
$1-\cfrac{n}{x}\geqq\cfrac{1}{2}$

$h'(x)\geqq\cfrac{1}{2}$ (証明終わり)

式が単調増加であることを示す

(2)に進みます。

不等式の証明するときには,右辺を 0 として,左辺が正の数または負の数であることを示す方法が一般的です。

$h(x)-h(2n)\geqq\cfrac{1}{2}(x-2n)$

右辺を移項して

$x-n\log x-2n+n\log2n-\cfrac{1}{2}(x-2n)$ とすると

$=\cfrac{1}{2}x-n\log x-n+n\log 2n$

これが 0 以上であることを示せば証明終わり。
0 以上になるかどうか,さっぱり分からないです。
とりあえず,$x\geqq2n$ で $n$ は自然数だから,$x\geqq2$ だよね。この条件で $x$ をどんどん増やしていっても式はつねに正の値であるってのを示すことになる。
関数のグラフ描いたらいいですか?
グッドアイデア。

関数がどのようなグラフになるかを考えるときは,微分して増減表を書いてみるのがセオリーです。微分してみましょう。

$f(x)=\cfrac{1}{2}x-n\log x-n+n\log 2n$ として

$f'(x)=\cfrac{1}{2}-\cfrac{n}{x}$

(1)より

$1-\cfrac{n}{x}\geqq\cfrac{1}{2}$

$\cfrac{1}{2}-\cfrac{n}{x}\geqq0$

$f'(x)\geqq0$

増減表は

$\def\arraystretch{1.5}\begin{array}{|c|c|c|}\hline x&2&\cdots\\\hline f'(x)&+&+\\\hline f(x)&0&\nearrow\\\hline\end{array}$

$x\geqq2n$ だから,$x$ が 2 のとき,あてはまる自然数 $n$ は 1 のみです。よって

$f(2)=1-\log 2-1+\log 2=0$

これで,$x$ が 2 以上のときに,関数がつねに正の数であることが示されました。

したがって

$h(x)-h(2n)\geqq\cfrac{1}{2}(x-2n)$

(証明終わり)

不等式の証明

(3)に進みます。

ここは次の(4)のための準備作業なので,さっさと解決しましょう。

(2)より

$h(x)-h(2n)\geqq\cfrac{1}{2}(x-2n)$

移項して

$h(x)\geqq\cfrac{1}{2}(x-2n)+h(2n)$
$h(x)\geqq\cfrac{1}{2}x-n+h(2n)$ ・・・①

また,$x\geqq2n-2h(2n)$ より

$\cfrac{1}{2}x\geqq n-h(2n)$

移項して

$\cfrac{1}{2}x-n+h(2n)\geqq0$ ・・・②

①,②より

$h(x)\geqq0$

(証明終わり)

はさみうちの原理で極限を求める

(4)に進みます。(3)を利用して,とあるので,(3)を確認しましょう。

$h(x)=x-n\log x\geqq0$

移項して

$x\geqq n\log x$
$x\geqq\log x^n$

ここで,左辺の $x$ を対数の式に変換します。$x=\log e^x$ となるので

$\log e^x\geqq\log x^n$
$e^x\geqq x^n$
$1\geqq\cfrac{x^n}{2^x}$
$\cfrac{1}{x}\geqq\cfrac{x^{n-1}}{e^x}$

$x\geqq2n$ より $x$ は正の数だから $x^{n-1}$ は正の数です。よって

$0\leqq\cfrac{x^{n-1}}{e^x}\leqq\cfrac{1}{x}$

はさみうちの原理より

$\displaystyle\lim_{x\rightarrow\infty}0\leqq\lim_{x\rightarrow\infty}\cfrac{x^{n-1}}{e^x}\leqq\lim_{x\rightarrow\infty}\cfrac{1}{x}$
$\displaystyle0\leqq\lim_{x\rightarrow\infty}\cfrac{x^{n-1}}{e^x}\leqq0$

したがって

$\displaystyle\lim_{x\rightarrow\infty}\cfrac{x^{n-1}}{e^x}=0$

(証明終わり)