アマゾンには木の実を食べる魚がいる 驚きの生態とアマゾンに住む人々との深い関係とは?

陸上の動物や鳥類が果実を食べることでその種子を周囲に広げていることはよく知られていますが、多様な生態系が保存される熱帯雨林では、魚がその役割を担う場合もあるようです。

“鳥類やほ乳類は樹木から提供されるおいしい果物を食べるのが大好きだ。アマゾン川に住んでいる魚でさえ森の木から落ちてくる果物に頼っている。反対に、果樹はその果物を食べるそれらの動物に依存しており、動物が果物を食べることは果樹の種子が森の遠く離れた部分に広がるのに役立っている。(兵庫県立大)”

長期間温暖であることが熱帯雨林の生物多様性を生んだ

地球の赤道付近に広がる熱帯雨林は生物多様性の宝庫として知られています。世界の生物の種のおよそ半数が熱帯雨林に生息していると考えられています。

なぜ熱帯雨林がこれほどの生物多様性を生み出したのか。地球はこれまで何度も氷河期を経験しており、最も新しい氷河期はおよそ1万年前に終わったと考えられています。しかし、氷河期の間でも赤道付近の熱帯雨林はその影響をあまり受けなかったと考えられています。氷河期と言えば、地球全体が氷で覆われていたようなイメージがあるかもしれませんが、実際は平均気温が今より5度程度低かったということであり、冬が長かったは言え、一年を通して氷に覆われていたわけではありません。平均気温が5度違うというのは日本で言えば大阪と福島の違いに相当するので、生き物が生存できないほどの極限の世界、というほどではなかったようです。

その上、赤道付近まで行けば氷河期の影響はさらに小さくなります。熱帯雨林の広がる地域は生態系にダメージを与える気候変動の影響を受けることなく、極めて長期間に渡って森林が途切れることなく続いてきました。場所によってはその期間は1億年以上とも言われます。つまり、恐竜が生きていた時代からその森林が続いてきたということですから、それだけ生物の多様性が保存され、他の地域と比べ物にならないほど豊富な生態系が作り出されました。そして、種が枝分かれしていく中で、多様な種同士が複雑に依存し合う関係を築いてきたのです。

アマゾン川の水面に落下した木の実を食べるコロソマ

コロソマは養殖魚としても重要な魚である

アマゾン川などに生息する雑食性の淡水魚であるコロソマは水面に落ちてくる木の実などを食べます。固い木の実の殻を砕くために臼歯が発達しており、体長70センチ、体重30キロに達します。

コロソマの食事は雨季と乾季で異なっており、雨季に川の水面が高くなると木の実を食べる割合が上がるようです。調査によれば、雨季の食事の80%以上が木の実で構成され、その他にも自生する穀物類の種子が含まれていました。コロソマが食べた種子は別な場所で排泄されることで、遠くまで運ばれていきます。森の樹木にとってもコロソマは重要な存在なのです。

アマゾン川周辺の人々にとってもコロソマは食用魚として重要な位置を占めてきました。しかし、近年は乱獲により個体数の減少が問題となっています。一方で、コロソマは酸素が少ない環境でも生息でき、病気になりにくいなど養殖に適した魚でもあるため、今日では広く養殖が行われるようになり、ブラジルでは主要な養殖魚の一つとして経済的にも重要な役割を担っています。