チョコレートを食べるほどノーベル賞が増える!? 統計を用いた教授のジョークとは

チョコレートに含まれるカカオポリフェノールには血管を広げる効果があり、摂取することで肉体的・精神的に活動的になれることが分かっています。健康のためにチョコレートを毎日少しずつ食べることが大切です。

ところで、チョコレートを食べるとノーベル賞が獲れるかもしれないという意外な主張をしている人がいます。

”メサーリはある国におけるノーベル賞受賞者の数を国全体の知的能力の指標をして取り上げ、それを国のチョコレート消費量と比較した。その結果は驚くべきものであった。「チョコレート消費量とノーベル賞受賞者の数の2つを比較すると、そこには近い関係があるのです。」と彼は述べている。(東京都市大)”

ノーベル賞とチョコレート消費量には相関関係がある

コロンビア大学のフランツ・メサーリ医学博士は、22か国についてノーベル賞受賞者数とその国における年間チョコレート消費量を比較し、そこに強い相関関係があることを発見しました。

ここに実際の相関関係を表したグラフを載せておきます。


調査結果が公表されると、この話題に興味を持ったイギリスのマスコミが実際にノーベル賞受賞者にインタビューをして本当にチョコレートを食べているかどうか確認したのですが、実際は毎日食べている人もいればほとんど食べない人もいて、結局は人それぞれ、という結果だったようです。

また、グラフを見るとスウェーデンは相関関係から外れた位置にあります。スウェーデンは国民一人当たりのチョコレート消費量に比べて、ノーベル賞受賞者の数が多いということを意味しています。

スウェーデンは教育システムが非常に優れている国として有名で、チョコレート消費量と関係なくノーベル賞受賞者を多く輩出しているようです。

相関関係を用いた疑似科学

実際のところ、チョコレートとノーベル賞に相関関係があるというのは本当なのでしょうか? この説が発表されたのは2012年なのですが、現在ではこれは統計的手法を用いた一種の疑似科学であるというのが概ねの見解です。

私たちは統計的に相関関係があることを示されると、その2つの事柄には何か密接な因果関係があると考えがちです。しかしそれが科学的に正しいかどうかは、単純な相関グラフだけで証明することはできません。科学的な証明とは、より多角的な観点に基づいた調査を行い、多くの追試験を経たものでなければなりません。また、少なくとも因果関係があるというなら、そのメカニズムが科学的に説明される必要があります。

メサーリ教授はチョコレートとノーベル賞の相関関係をwikipediaを基に作成しています。要は教授が思いついたタチの悪いジョーク、というあたりが真相のようです。

私たちがチョコレートについて科学的に正しいと断言できるのは、チョコレートは毎日少しずつ摂取することで健康に過ごすことの手助けになる、ということだけです。もしかすると、チョコレートとノーベル賞には何か重大な関係があるのかもしれません。しかし、それを一つの相関グラフで立証するには無理があるのです。

統計的データに安易にだまされず、科学的に正しいとはどういうことなのかを見極める能力が現代の私たちには大切です。メサーリ教授の発表は、私たちに科学を見極める能力があるかどうかを試す意地の悪いクイズであると言えるのかもしれません。