ナポレオンの暗号開発が点字を産んだ 点字の産みの親ルイ・ブライユ

視覚障害のある人々が指の感覚で文字を読み取る方法として点字というものがあります。

“点字のシステムは、もともとは兵士たちが夜に明かりなしで静かに意思疎通するために利用できる符号に対するフランスのナポレオン将軍の要求に応じて開発された意思疎通の方法に基づいていた。しかし、このシステムは兵士たちが学ぶにはあまりに複雑すぎたので、それは軍によって却下された。”

現代の点字の仕組みを作ったルイ・ブライユ

フランス人のルイ・ブライユ Louis Braille は1824年に6つの凹凸によって文字を表現する点字のシステムを考案しました。

今日、目が不自由な人々が用いている点字は2列×3行の6つの点によって文字を表現することになっています。この6つの点によって表現できる文字の種類は2の6乗=64文字です。アルファベットは26文字なので、ブライユは凹凸の数は6つで十分だと考えました。

実際、他の人が考案した12の凹凸で記述する方式もあったようですが、凹凸が12個ある場合は2の12乗=4096文字となります。西洋圏の言語で言えばこの数は多すぎます。ブライユは数学的に合理性のある無駄のない点字のデザインを考案したというところが画期的だったと言えるでしょう。

言いかえれば、点字の凹凸とは現代のデジタル情報技術における0と1の関係に等しく、モールス信号が発明される前の時代にデジタル情報を圧縮する方法を考案したブライユには先見の明があったと言えるでしょう(モールス信号が特許申請されるのは1840年)。

また、ブライユ自身も実は視覚障害者でした。彼はのちに盲学校の教員となりますが、肺結核で43歳で亡くなります。

使う側の立場に立つことが新しい発見をもたらす

その後、英語では点字のことを Braille (英語読みではブレイル)と呼ぶことになりました。ブライユ自身は、12ドットの点字は1文字が大きすぎて指の感覚で捉えるには複雑すぎると考えていたようです。彼が合理的なシステムを考案した背景には、彼が実際に指で触れた際の直感が大きく影響しているのです。これをネット時代の今なら「ユーザー・エクスペリエンス」と呼ぶのかもしれませんが、「使う側の身になって考える」という基本的な姿勢が偉大な発明を生んだという良い事例の一つと言えるでしょう。