小人数クラスが生徒にとって良いものとは限らない ヨーロッパの調査

教室の生徒は人数が少ない方が質の高い教育が実現できるという考えは長年一般的なものとして認知されてきました。教師にとってもクラスコントロールが容易になるため効果的な指導を行うことができ生徒の学力の向上が期待できます。保護者もまたなるべくなら小人数クラスの方がよいと考えています。

しかし、小人数クラスで学力が向上するという見方にはバイアスがあります。少人数クラスが設置された場合そのクラスには能力の高い教師が割り当てられることが多いため、そうしたクラスと人数の多いクラスを比較しても客観的なデータは得られません。

クラスの人数と学力の相関関係を考えようとするなら、生徒の学力や教師の質、カリキュラムなどさまざまな要素が関係してくるため、両者の相関を単純に測ることは困難なのです。

これまでにも欧米や日本、東南アジアなどの国々で少人数クラスについての調査が行われましたが、それらの調査は規模が小さく特定の学年のある教科で成績の向上が見られたことを示すものもあれば有意な差が見られなかったものもあり、結果はまちまちでした。

大きな規模の調査でも少人数クラスのメリットは見出されなかった

今回行われた調査では国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)の長期に渡る国際的なデータからヨーロッパのハンガリー、リトアニア、ルーマニア、スロベニアの4か国で大規模なデータをもとに検証が行われました。調査対象は151の学校の231クラス、4,277人の生徒です。8年生(日本の中学2年生)の数学、物理、生物、化学、地学で学力や授業の楽しさなどの要素を調べました。

調査の結果、ルーマニアでは少人数のクラスで数学が楽しいと答えた生徒がわずかに増えることが分かりました。一方でリトアニアでは2011年では生物、化学の楽しさは増加し、2007年には生物で大規模クラスで成績の向上が見られ、地学では小規模クラスで成績が向上しました。リトアニアでのケースでは少人数のクラスの効果はさまざまであったと言えます。

研究者は調査全体を見た場合部分的に良くなった面があるとは言え、全体としては少人数クラスの効果はほとんど無いに等しいと結論づけています。また調査結果は平均して教師の質が低い国において少人数クラスの効果が得られる傾向があることを示唆していると述べています。

少人数のクラスが学力の向上に効果があるというデータは実際には存在しない。

少人数クラスが良いとは限らない

日本の40人学級は国際的に見ればかなり人数が多い方です。ちなみに今回調査が行われた4か国ではクラス人数の平均は22人から26人で。それにも関わらずOECDのデータでは日本はこれらの国の学力を上回っています。

確かに少数精鋭のクラスに優秀な教師を割り当てれば高い効果が期待できるかもしれません。しかしそうした要因を取り除いて純粋に人数と学力だけでデータを計測してみると、人数と学力の間に相関関係は見出せなくなるのです。

日本では40人学級に対する批判が長年存在していますが、直感的な感覚に反してクラスの人数を減らすことは学力の向上につながりません。もちろんクラスの人数が多くても問題ないと簡単に結論づけることはできませんが、教室に何人の生徒を入れることが適切なのかということについては慎重に考えていく必要があるのかもしれません。