【数Ⅲ】サイクロイドの速度と道のり

積分のところの速度と道のりの話がよく分からないです。

高校物理習ってるとピンときやすいのだけどね。実際問題解きながら、ポイント押さえていこうか。

半径 $a$ の円が $x$ 軸上を滑ることなく正の方向に回転していくとき,円周上の2つの定点 P と Q の運動について考える。時刻 $t = 0$ のとき P は原点 O にあり,Q は点 $(0, 2a)$ にある。円は毎秒 1 ラジアンの速さで回転する。このとき,点 P の時刻 $t$ における座標 $(x, y)$ は
$x = a(t − \sin t)$,$y = a(1 − \cos t)$
で表される。以下の問いに答えよ。(長崎大2018)

座標を求める

(1) 時刻 $t$ における円の中心 C と点 Q の座標を,それぞれ求めよ。


Cの座標は円の半径が$a$であることから、図を見れば簡単に求められます。

C$(at,a)$ (答え)

Qの座標どうするんですか?

直線PCを2倍に伸ばしたらQに到着するところから考えるよ。

PCの変位はCの座標からPの座標を引けば求められます。
$(at-a(t-\sin t)),\space a-a(1-\cos t))$
$=(a\sin t,\space a\cos t)$

Cの座標にこれを足せばQになります。
$(at+a\sin t,\space a+a\cos t)$
=$(a(t+\sin t),\space a(1+\cos t))$ (答え)

速さを求める

(2) 時刻 $t$ における点 P の速度ベクトル $\displaystyle \overrightarrow{v_P} = \left(\frac{dx}{dt},\frac{dy}{dt}\right)$ を求めよ。また,時刻 $t$ が $0 \leqq t \leqq 2\pi$ の範囲において,速さ $|\overrightarrow{v_P}|$ の最大値と最小値,およびその時の P の座標を求めよ。


速度ベクトル?
ベクトルって呼ぶことはあんまり気にしないでいい。要するに斜めに進むとき速度を横と縦方向に分解したものって考えればいい。
例えば、こんなの。斜めの速さ $2$ を分解すると、縦方向が $\sqrt{3}$、横方向が $1$ ってなる。
理科で見たことあるかも。

分力でしょ?そうそう、考え方同じ。じゃあ、速度ベクトル求めていくよ。

$\displaystyle \frac{dx}{dt}$ ってどういうこと?

式を $t$ で微分するということ。$\displaystyle\frac{\text{道のり}}{\text{時間}}=$速さ、だったよね。中3の理科で習ったので言うと、これ平均の速さというヤツ。で、$\displaystyle\frac{dx}{dt}=$瞬間の速さ になる。$dx$ が横方向の瞬間の変位(道のり)、$dt$が瞬間の時間って捉えたら、同じような形してるでしょ?

なんか、分かったような分からないような。

微分って細かく刻んでいく感じじゃない? $t$で微分するってのは時間を細かく刻んでいくんだから、瞬間の速さになる。

$x=a(t-\sin t)$ より
$\displaystyle \frac{dx}{dt}=a(1-\cos t)$
$y=a(1-\cos t)$ より
$\displaystyle \frac{dy}{dt}=a\sin t$
よって、$\overrightarrow{v_P}=(a(1-cos t),a\sin t))$

ここからベクトルの絶対値出すけど、絶対値って長さのことだったよね。タテとヨコの長さ分かっててナナメを出すから、三平方を使うと良い。

$|\overrightarrow{v_P}|^2=a^2(1-\cos t)^2+a^2\sin^2 t$
$=a^2(1-2\cos t+\cos^2 t)+a^2\sin^2 t$
$=a^2-2a^2\cos t+a^2\cos^2 t+a^2\sin^2 t$
$=a^2-2a^2\cos t+a^2(\sin^2 t+\cos^2 t)$
三角比の公式 $\sin^2 x+\cos^2 x=1$ より
$=a^2-2a^2\cos t+a^2$
$=2a^2(1-\cos t)$

ここから最大・最小を求める。

微分して増減表書きます?

そこまでしなくても大丈夫。式の形から言って $\cos$ が $-1$ のときに明らかに最大でしょ?

$|\overrightarrow{v_P}|^2=2a^2(1-\cos t)$
$\cos t=-1$ のとき最大
$|\overrightarrow{v_P}|^2=2a^2(1+1)=4a^2$
$|\overrightarrow{v_P}|=2a$
また
$\cos t=-1$
$t=\pi$
したがって、最大値は $t=\pi$ のとき $2a$ (答え)
$t=\pi$ を点Pに代入すると
P$(a(\pi-\sin\pi),a(1-\cos\pi))$
=P$(a\pi,2a)$ (答え)

また、最小値を求めると
$\cos t=1$ のとき最小
$|\overrightarrow{v_P}|^2=2a^2(1-1)=0$
$|\overrightarrow{v_P}|=0$
また
$\cos t=1$
$t=0,2\pi$
したがって、最小値は $t=0,2\pi$ のとき $0$ (答え)

$t=0$ を点Pに代入すると
P$(a(0-\sin 0),a(1-\cos 0))$
P$(0,0)$ (答え)
$t=2\pi$ を点Pに代入すると
P$(a(2\pi-\sin 2\pi),a(1-\cos 2\pi))$
=P$(2\pi a,0)$ (答え)

速度ベクトルを求める

(3) 時刻 $t$ における点 Q の速度ベクトル $\overrightarrow{v_Q}$ を求めよ。さらに,内積 $\overrightarrow{v_P}\cdot\overrightarrow{v_Q}$ を求めよ。


(2)でやったのと同じように点Qについて微分していけばいい。

$\displaystyle \overrightarrow{v_Q}=\left(\frac{dx}{dt},\frac{dy}{dt}\right)$

$\displaystyle\frac{dx}{dt}=a(1+\cos t)$
$\displaystyle\frac{dy}{dt}=-a\sin t$
したがって
$\overrightarrow{v_Q}=(a(1+\cos t),-a\sin t)$ (答え)

次に内積求めるよ。上で求めたベクトルの成分を公式に入れていく。
内積 $\vec{a}=(x_1,y_1),\space\vec{b}=(x_2,y_2)$ のとき
$\vec{a}\cdot\vec{b}=x_1 x_2+y_1 y_2$

$\overrightarrow{v_P}\cdot\overrightarrow{v_Q}=a(1-\cos t)\cdot a(1+\cos t)+a\sin t(-a\sin t)$
$=a^2(1-\cos^2 t)-a^2\sin^2 t$
$=a^2-a^2\cos^2 t-a^2\sin^2 t$
$=a^2-a^2(\sin^2 t+\cos^2 t)$
三角比の公式 $\sin^2 x+\cos^2 x=1$ より
$=a^2-a^2=0$ (答え)

道のりを求める

(4) 時刻 $t = \cfrac{\pi}{2}$ から $t=\cfrac{3\pi}{2}$ までの間に点 P が動く道のり $L_P$ と,点 Q が動く道のり $L_Q$ を,それぞれ求めよ。


速度を積分したものが道のりになるって考えるとよい。

そうなんですか?

たとえば秒速ってのは1秒あたりに進む道のりのことだよね?だから1秒ごとの道のりを積み上げていくとそれが全体の道のりになる。積分ってのは値を積み上げていくことだから、速度の積分は道のりになるの。

$\displaystyle L_P=\int_{\small{\cfrac{\pi}{2}}}^{\small{\cfrac{3}{2}}\pi}|\overrightarrow{v_P}|dt=\int_{\small{\cfrac{\pi}{2}}}^{\small{\cfrac{3}{2}\pi}}|\sqrt{2a^2(1-\cos t)}|dt$

ここは半角の公式を使うとルートが外せる。このテクちょくちょく使うから、マスターしてね。

$\sin^2 x=\cfrac{1-\cos 2x}{2}$

$2\sin^2 x=1-\cos 2x$ より

$\displaystyle =\int_{\small{\cfrac{\pi}{2}}}^{\small{\cfrac{3}{2}\pi}}\left|\sqrt{2a^2\cdot 2\sin^2 \cfrac{t}{2}}\right|dt$

$\displaystyle =\int_{\small{\cfrac{\pi}{2}}}^{\small{\cfrac{3}{2}\pi}}2a\left|\sin\cfrac{t}{2}\right|dt$

$=-2a\left|\left[\cos\cfrac{t}{2}\cdot 2\right]_{\small{\cfrac{\pi}{2}}}^{\small{\cfrac{3}{2}\pi}}\right|$

$=-4a\left|\left[\cos\cfrac{t}{2}\right]_{\cfrac{\pi}{2}}^{\cfrac{3}{2}\pi}\right|$

$=-4a\left(\cos\cfrac{3}{4}\pi-\cos\cfrac{\pi}{4}\right)$

$\displaystyle =-4a\left(-\cfrac{\sqrt{2}}{2}-\cfrac{\sqrt{2}}{2}\right)$

$=4\sqrt{2}a$ (答え)

$\displaystyle L_Q=\int_{\small{\cfrac{\pi}{2}}}^{\small{\cfrac{3}{2}\pi}}|\overrightarrow{v_Q}|dt=\int_{\small{\cfrac{\pi}{2}}}^{\small{\cfrac{3}{2}\pi}}|\sqrt{2a^2(1+\cos t)}|dt$

$\displaystyle \cos^2 x=\cfrac{1+\cos 2x}{2}$

$2\cos^2 x=1+\cos 2x$ より

$\displaystyle =\int_{\small{\cfrac{\pi}{2}}}^{\small{\cfrac{3}{2}\pi}}\left|\sqrt{2a^2\cdot 2\cos^2 \cfrac{t}{2}}\right|dt$

$\displaystyle =\int_{\small{\cfrac{\pi}{2}}}^{\small{\cfrac{3}{2}\pi}}2a\left|\cdot 2\cos^2 \cfrac{t}{2}\right|dt$

さっきは、絶対値の中がつねにプラスだったからそのまま外せばよかったんだけど、今度はプラスのときとマイナスのときがあるから分けて計算する。

$t$ が $\cfrac{\pi}{2}\rightarrow\cfrac{3}{2}\pi$ と変化するとき

$\cfrac{t}{2}$ は $\cfrac{\pi}{4}\rightarrow\cfrac{\pi}{2}\rightarrow\cfrac{3}{4}\pi$ と変化するので

$\cfrac{\pi}{2}\rightarrow\cfrac{3}{4}\pi$ のとき $\cos$ はマイナスになる

$\cfrac{t}{2}=\cfrac{\pi}{2} \hArr t=\pi$ だから

$\displaystyle =\int_{\small{\cfrac{\pi}{2}}}^{\pi} 2a\cos \cfrac{t}{2}dt-\int_{\pi}^{\small{\cfrac{3}{2}}\pi}2a\cos\cfrac{t}{2}dt$

$\pi$ から $\cfrac{3}{2}\pi$ までは値がマイナスになるから、符号をひっくりかえして、足し算が引き算になる。

$=2a\left[\sin\cfrac{t}{2}\cdot 2\right]_{\small{\cfrac{\pi}{2}}}^\pi – 2a\left[\sin\cfrac{t}{2}\cdot 2\right]_\pi^{\small{\cfrac{3}{2}\pi}}$

$=4a\left(\sin\cfrac{\pi}{2}-\sin\cfrac{\pi}{4}\right)-4a\left(\sin\cfrac{3}{4}\pi-\sin\cfrac{\pi}{2}\right)$

$=4a\left(1-\cfrac{\sqrt{2}}{2}\right)-4a\left(\cfrac{\sqrt{2}}{2}-1\right)$

$=8a-4\sqrt{2}a$

$=4(2-\sqrt{2})a$ (答え)

絶対値って必要なんですか?

道のりはどっち方向に進んでもプラスとして考えるから絶対値が必要。この辺もポイントだから、忘れずにね。