中心 $(0,a)$, 半径 $a$ の円を $xy$ 平面上の $x$ 軸の上を $x$ の正の方向に滑らないように転がす。このとき円上の定点 $P$が原点 $(0,0)$を出発するとする。次の問いに答えよ。(九州大2010)
(1) 円が角 $t$ だけ回転したとき、点 $P$ の座標を求めよ。
(2) $t$ が $0$ から $2t$ まで動いて円が一回転したときの点 $P$ の描く曲線を $C$ とする。曲線 $C$ と$x$ 軸とで囲まれる部分の面積を求めよ。
(3) 曲線 $C$ の長さを求めよ。


イメージとしてはこんな感じ。この軌跡をサイクロイドと言う。

大量生産された下っ端のロボット兵っぽい名前ですね。
弧の長さ=移動距離の関係で解決

$l=r\theta$

弧度法で考えるんですね。

大学入試問題では、角度は基本的に弧度法で考えるものだと思って。半径に角度をかければ弧の長さになる。

なんでこうなるのか分からない。

$x=at-a\sin t=a(t-\sin t)$
また、$y$ 座標は
サイクロイドで囲まれた図形の面積を求める


んー、$\int a(1-\cos t)\enspace dt$ ですか?

気持ちは分かるけど、それをやらないようにね。横軸は $x$ だから、$dt$ じゃなくて $dx$ の積分にしないとダメよ。
$\displaystyle\int_0^{2\pi a} y\enspace dx$

はいはい質問。

はい。

$\int a(1-\cos t)dx$ ってしたら $x$ 以外の文字は定数だから、$=[ax-a\cos t\cdot x]$ みたいにしたらダメなんですか?

だめよ。$t$ は定数ではないから。$x=a(t-\sin t)$ ってなってるでしょ?これは $x$ の値によって $t$ の値も変化するっていうこと。つまり $\cos t$ は $t$ の中に $x$ で表す式が入っていて、合成関数になってるの。だから定数項として考えたらダメ。
曲線の長さを求める
曲線 $x=f(x),y=g(t) (a\text{≦}t\text{≦}b) $ の長さ $L$ は
$\displaystyle L=\int_a^b \sqrt{\left(\frac{dx}{dt}\right)^2+\left(\frac{dy}{dt}\right)^2}\enspace dt$

これってどういうことなんですか?

ざっくり言うと三平方の定理だよね。三角形の底辺と高さをそれぞれ微分して、めちゃくちゃ小さい三角形を作るの。そこから三平方の定理で斜めの長さを求めて、積分で積み上げるってのがイメージ。
失敗したら別の戦略を考える―トライ&エラーで積分を突破する

では、これを使って積分するよ。

$\sin t$ に $2\pi$ 代入したら $0$ になりますよ。

そうね。$0$ の除算はアウトだったね。つまり、積分失敗。

えー!失敗なんですか。じゃあ、どうしたらいいんですか?

大学入試レベルの積分って失敗するのが普通。人間は失敗から学ぶ生き物なのよ。
半角の公式を加工してみる
どう考えても $\sqrt{1-\cos t}$ の積分がうまく処理できません。ルートがついているのがやっかいです。では、このルートを外す方法はないかと考えます。

ルートの中が何かの2乗であれば、$\sqrt{3^2}=3$ みたいな感じでルート外れるよね。

どうやって2乗にするの?

今まで習った公式で、$1-\cos t$ みたいな形のヤツない?部分的でいいんだけど。

えーと、半角の公式。

そうそう、それで問題解決。

案外、あっさりだった。
この方針で、$1-\cos t$ を加工します。このとき、この形が半角の公式に似ていることに気づけば、問題解決です。
$\displaystyle\sin^2 t=\frac{1-\cos 2t}{2}\\\displaystyle\sin^2\frac{t}{2}=\frac{1-\cos t}{2}\\\displaystyle 2\sin^2\frac{t}{2}=1-\cos t$
よって
$\displaystyle L=\int_0^{2\pi} \sqrt{2a^2\cdot2\sin^2\frac{t}{2}}\enspace dt\\\displaystyle=2a\int_0^{2\pi} \sin\frac{t}{2}\enspace dt\\\displaystyle=2a\left[-\cos\frac{t}{2}\cdot2\right]_0^{2\pi}\\\displaystyle=-4a\left[\cos\frac{t}{2}\right]_0^{2\pi}\\=-4a(\cos\pi-\cos0)\\=-4a(-1-1)\\=8a$
(答え)
自分の頭で考えると言っても、問われるのはあくまでこれまで学んできた知識をどう組み合わせるかです。教科書で学んだ知識を表面上だけでなくどれだけちゃんと理解して使いこなすことができるか、を問うのが大学入試です。「常に教科書に立ち返る」。これが受験勉強の正攻法かつ王道なのです。