ロボットは人の仕事を奪ったか? リーマンショック後アメリカの調査

AIが人の仕事を奪うという話題をよく見かけるようになりました。AIが私たちの仕事にどのような影響を与えるかはまだこれからの話ですが、その一方で自動化された機械は産業革命以来、絶えず工場で働く労働者を置き換えてきました。特に、コンピューターによって制御されるロボットの普及は目覚ましいものがあり、それが雇用にどう影響しているかについての調査も進みつつあります。

”国際ロボット連盟(IFR)によると、2009年から2017年にかけて、アメリカの職場でのロボットの使用(「ロボット・エクスポージャー」と呼ばれることが多い)は、労働者1000人あたり0.75台から1,000人あたり1.81台に倍増した。”

分野によって明暗が分かれるロボット導入

ウィリアム・ロジャースは、この10年の間にロボットの普及によってアメリカの雇用がどのように変化したかを調査しました。ロジャースによると、アメリカの雇用全体としてはロボットの影響はほとんど見られないものの、特定の分野では変化が起こっていることを指摘しています。

アメリカでは2008年のリーマンショックでロボットの普及は大きく落ち込んだものの、その後は順調な回復を見せています。特に製造業では溶接や組み立てなど、ロボットの普及率がこの10年で2倍になっています。全体としては、高卒の若年労働者の雇用の増加、賃金の上昇がみられました。ロジャースはその理由は、ロボットによる商品需要の刺激や新しい市場の創出が賃金の上昇を促進したためであると推測しています。一方で、ロボットの普及が進んだアメリカ北東部中央州の製造業ではその反対の現象がみられました。ロジャースは、リーマンショック以降のアメリカの景気回復がなければ、この地域の若年労働者の雇用の状況はもっと悪化していただろうと考えています。

ロボットの導入は特定の産業では若者の仕事を奪ったものの、その一方で他の産業において高卒の若者がより高い給料を得られる新しい雇用が創出されたと言えます。

ドイツフォルクスワーゲンの組み立て工場。ロボットは仕事を奪うが、新たな需要を刺激し雇用を創出する面もある。

ロボットによる自動化は労働者の仕事の50%を奪うと言われることもありますが、今のところそれを示すような兆候はありません。しかし、ロボットが従来の仕事を変えつつあることも事実であり、失われた仕事を埋め合わせるためには経済の安定や新たな需要の創出が欠かせないようです。