千葉大数III

【数IIBIII 数列・極限】積分式で表される数列とその極限を求める(千葉大2020第11問)

定義域を $0\leqq x\leqq1$ とする関数 $f_n(x)$ と $f(x)$ を以下で定める。

$f_1(x)=0$
$\displaystyle f_{n+1}(x)=\int_0^x(f_n(t)-1)^2\space dt$ $(n=1,2,3,\cdots)$
$f(x)=\cfrac{x}{x+1}$

(1) 正の整数 $n$ に対して,不等式

$0\leqq f_n(x)\leqq1$ $(0\leqq x\leqq1)$

が成り立つことを証明せよ。

(2) 正の整数 $n$ に対して,不等式

$(-1)^nf_n(x)\geqq(-1)^nf(x)$ $(0\leqq x\leqq1)$

が成り立つことを証明せよ。

(3) 実数 $a(0\leqq a\leqq1)$ に対して,極限 $\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}f_n(a)$ を求めよ。

ad

数学的帰納法を用いる

(1) 正の整数 $n$ に対して,不等式

$0\leqq f_n(x)\leqq1$ $(0\leqq x\leqq1)$

が成り立つことを証明せよ。

$f_n$ は $f_1,f_2,f_3,\cdots,f_n$ で表される数列です。ここは数学的帰納法を用いて証明しましょう。

$0\leqq f_n(x)\leqq1$ $(0\leqq x\leqq1)$ ・・・(*)

が成り立つことを数学的帰納法で証明する。

[I] $n=1$ のとき

$f_1(x)=0$

よって,$n=1$ のとき(*)は成り立つ。

[II] $n=k$ のとき(*)が成り立つと仮定して,$n=k+1$ のとき

$\displaystyle f_{k+1}(x)=\int_0^x(f_k(t)-1)^2\space dt$

ここで仮定である(*)の不等式を利用していきます。

$0\leqq f_k(x)\leqq1$
$-1\leqq f_k(x)-1\leqq0$
$0\leqq(f_k(x)-1)^2\leqq1$

だから

$\displaystyle\int_0^x 0\space dt\leqq\int_0^x(f_k(t)-1)^2\space dt\leqq\int_0^x1\space dt$
$\displaystyle0\leqq\int_0^x(f_k(t)-1)^2\space dt\leqq x$

$0\leqq x\leqq1$ だから

$\displaystyle0\leqq\int_0^x(f_k(t)-1)^2\space dt\leqq 1$
$0\leqq f_{k+1}(x)\leqq1$

よって,$n=k+1$ のとき(*)は成り立つ。

[I],[II]より,すべての自然数 $n$ において

$0\leqq f_n(x)\leqq1$ $(0\leqq x\leqq1)$

が成り立つ。(証明終わり)

ad

奇数と偶数でわけて考える

(2) 正の整数 $n$ に対して,不等式

$(-1)^nf_n(x)\geqq(-1)^nf(x)$ $(0\leqq x\leqq1)$

が成り立つことを証明せよ。

$(-1)^n$ は $(-1)^2=1$,$(-1)^3=-1$,$(-1)^4=1$,・・・のように $n$ が奇数のときと偶数のときで符号が変化するので,奇数と偶数でわけて考えてみると良さそうです。

$(-1)^nf_n(x)\geqq(-1)^nf(x)$ $(0\leqq x\leqq1)$ ・・・(*)

が成り立つことを数学的帰納法で証明する。

[I] $n=1$ のとき

$(-1)^nf_n(x)=-f_1(x)=0$
$(-1)^nf(n)=-\cfrac{x}{x+1}$
$0\leqq x\leqq1$ より $-\cfrac{x}{x+1}\leqq0$

したがって,$n=1$ のとき(*)は成り立つ。

[II] $k$ を奇数として,$n=k$ のとき(*)が成り立つと仮定すると

$(-1)^nf_n(x)\geqq(-1)^nf(x)$
$-f_{k}(x)\geqq-f(x)$
$1-f_{k}(x)\geqq1-f(x)$

ここで

$1-f(x)=1-\cfrac{x}{x+1}$
$=\cfrac{x+1-x}{x+1}$
$=\cfrac{1}{x+1}$

だから

$1-f_{k}(x)\geqq\cfrac{1}{x+1}$

(1)より $0\leqq f_n(x)\leqq1$ だったので,$1-f_{k}(x)$ は 0 以上の値です。よって,2 乗しても符号は変わりません。また,右辺も正の値です。

両辺を 2 乗して

$(1-f_{k}(x))^2\geqq\Big(\cfrac{1}{x+1}\Big)^2$
$\displaystyle\int_0^x(1-f_{k}(t))^2\space dt\geqq\int_0^x\cfrac{1}{(t+1)^2}\space dt$

ここで,右辺について

$\displaystyle\int_0^x\cfrac{1}{(t+1)^2}\space dt$
$\displaystyle=\int_0^x(t+1)^{-2}dt$
$=\Big[-(t+1)^{-1}\Big]_0^x$

ここは $-(t+1)^{-1}$ を微分したら $(t+1)^{-2}$ になるのを確認して。

$=-\cfrac{1}{x+1}+1$
$=\cfrac{-1+x+1}{x+1}$
$=\cfrac{x}{x+1}$
$=f(x)$

となるので

$f_{k+1}(x)\geqq f(x)$

よって,$n$ が奇数のとき(*)は成り立つ。

奇数の次は偶数だから,$(-1)^nf_n(x)\geqq(-1)^nf(x)$ は両辺とも符号がプラスになって上の不等式になる。つまり,奇数の場合から偶数のときの式が証明できたってこと。

そうすると,今度は偶数の場合から奇数の式が証明できるのではないかと推測できます。実際にやってみましょう。

[III] $k$ を偶数として,$n=k$ のとき(*)が成り立つと仮定すると

$(-1)^nf_n(x)\geqq(-1)^nf(x)$
$f_{k}(x)\geqq f(x)$
$f_{k}(x)-1\geqq f(x)-1$
$f_{k}(x)-1\geqq \cfrac{x}{x+1}-1$

ここで

$\cfrac{x}{x+1}-1=\cfrac{x-x-1}{x+1}$
$=-\cfrac{1}{x+1}$

だから

$f_{k}(x)-1\geqq-\cfrac{1}{x+1}$

$0\leqq f_n(x)\leqq1$ より $-1\leqq f_n(x)-1\leqq0$ です。つまり左辺は負の値です。

ここから両辺を 2 乗したいのですが,負の数のままだと都合が悪いので符号を逆にします。

$1-f_{k}(x)\leqq\cfrac{1}{x+1}$

この状態では両辺とも正の値です。両辺をそれぞれ 2 乗すると

$(1-f_{k}(x))^2\leqq\cfrac{1}{(x+1)^2}$

よって

$\displaystyle\int_0^x(f_{k}(t)-1)^2\space dt\leqq\int_0^x\cfrac{1}{(t+1)^2}\space dt$

右辺の計算は[II]と同じです。よって

$f_{k+1}(x)\leqq f(x)$

よって,$n$ が偶数のとき(*)は成り立つ。

今度は $n$ が偶数の場合に,奇数の式が証明できたってこと。これで,奇数→偶数→奇数→偶数→・・・とつながったので,すべての自然数 $n$ について不等式が正しいってことになる。

[I],[II],[III] より,すべての自然数 $n$ において(*)が成り立つ。(証明終わり)

ad

極限を推測して証明する

(3) 実数 $a(0\leqq a\leqq1)$ に対して,極限 $\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}f_n(a)$ を求めよ。

ここは(2)の不等式を利用します。

$(-1)^nf_n(x)\geqq(-1)^nf(x)$ $(0\leqq x\leqq1)$

この不等式は,$n$ が奇数のときは

$-f_n(x)\geqq-f(x)$
$f_n(x)\leqq f(x)$

$n$ が偶数のときは

$f_n(x)\geqq f(x)$

となります。

ここから言えることは,$f_n(x)$ は $n$ の値が増えるごとに,$f(x)$ の上と下を行ったりきたりするということです。

つまり問題文から,もし $f_n(a)$ がどこかに収束するのだとしたら,$f(a)=\cfrac{a}{a+1}$ に収束するのではないかと推測できます。

答え出ましたね。

そうなんだけど,これを証明するのが結構大変かも。

まず,不等式を移項します。

$(-1)^nf_n(x)\geqq(-1)^nf(x)$
$(-1)^n\{f_n(x)-f(x)\}\geqq0$

推測から言えば,$n\rightarrow\infty$ で左辺は 0 に収束するはずです。
ここで証明の方針を立てましょう。上の不等式にもう一つ付け加えて

$0\leqq(-1)^n\{f_n(x)-f(x)\}\leqq\boxed{\textsf{極限が0になる式}}$ ・・・①

として,はさみうちの原理より

$\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}(-1)^n\{f_n(x)-f(x)\}=0$

とすれば,$f_n(a)$ は $f(a)=\cfrac{a}{a+1}$ に収束することが証明できます。

極限が 0 になる式ってどうしたらいいの?

ここは問題文の条件から何とか式をひねりだしていきます。ここは考えて思いつくものでもないので,やり方を習得していきましょう。

$0\leqq(-1)^n\{f_n(x)-f(x)\}$

$g_n(x)=(-1)^n\{f_n(x)-f(x)\}$ とすると

$\displaystyle g_{n+1}(x)=(-1)^{n+1}\int_0^x(f_n(t)-1)^2dt-(-1)^{n+1}\int_0^x\cfrac{1}{(t+1)^2}dt$

ここは(2)で $\displaystyle\int_0^x\cfrac{1}{(t+1)^2}\space dt=f(x)$ となる計算をしていたことを思い出しましょう。これの逆を当てはめています。

$\displaystyle=(-1)^{n+1}\int_0^x(f_n(t)-1)^2-\cfrac{1}{(t+1)^2}\space dt$

因数分解 $a^2-b^2=(a+b)(a-b)$ を利用して

$\displaystyle=(-1)^{n+1}\int_0^x\Big\{f_n(t)-1+\cfrac{1}{t+1}\Big\}\Big\{f_n(t)-1-\cfrac{1}{t+1}\Big\}\space dt$

$(-1)^{n+1}$ を $(-1)^n\cdot(-1)$ に分けて積分の中に放り込みます。

$\displaystyle=\int_0^x(-1)^n\Big\{f_n(t)-1+\cfrac{1}{t+1}\Big\}\Big\{\cfrac{1}{t+1}+1-f_n(t)\Big\}\space dt$

ここで

$-1+\cfrac{1}{t+1}=\cfrac{-t-1+1}{t+1}=-\cfrac{t}{t+1}$

となるので

$\displaystyle=\int_0^x(-1)^n\Big\{f_n(t)-\cfrac{t}{t+1}\Big\}\Big\{\cfrac{1}{t+1}+1-f_n(t)\Big\}\space dt$
$\displaystyle=\int_0^x(-1)^n\Big\{f_n(t)-f(t)\Big\}\Big\{\cfrac{1}{t+1}+1-f_n(t)\Big\}\space dt$

$g_n(x)=(-1)^n\{f_n(x)-f(x)\}$ としていたことを思い出しましょう。よって

$\displaystyle g_{n+1}(x)=\int_0^x g_n(x)\Big\{\cfrac{1}{t+1}+1-f_n(t)\Big\}\space dt$

ここで①は

$0\leqq g_n(x)\leqq\boxed{\textsf{極限が0になる式}}$ ・・・①’

となっています。そして不等式右側の極限が 0 になる式をひねりだしていきます。

$0\leqq x\leqq1$ より

$\cfrac{1}{2}\leqq\cfrac{1}{t+1}\leqq1$
$\cfrac{3}{2}\leqq\cfrac{1}{t+1}+1\leqq2$

また,$0\leqq f_n(x)\leqq1$ だから不等式の最大の部分は変わりません。つまり

$\cfrac{1}{t+1}+1-f_n(t)\leqq2$

です。よって

$\displaystyle\int_0^x g_n(x)\Big\{\cfrac{1}{t+1}+1-f_n(t)\Big\}\space dt\leqq\int_0^x g_n(x)\cdot2\space dt$
$\displaystyle g_{n+1}(x)\leqq2\int_0^xg_n(x)\space dt$ ・・・②

具体的な形を考えてみます。

$g_n(x)=(-1)^n\{f_n(x)-f(x)\}$ より

$g_1(x)=-\{f_1(x)-f(x)\}$
$=f(x)-f_1(x)$
$=\cfrac{x}{x+1}-0=\cfrac{x}{x+1}$

となるので②に代入して

$\displaystyle g_2(x)\leqq2\int_0^xg_1(x)dt$
$\displaystyle g_2(x)\leqq2\int_0^x\cfrac{t}{t+1}\space dt$

ここで,$\cfrac{t}{t+1}$ は $0\leqq x\leqq1$ より区間 $[0,x]$ ではつねに正の値です。

そして,$\cfrac{t}{t+1}\leqq t$ が成り立つので

$\displaystyle g_2(x)\leqq2\int_0^x\cfrac{t}{t+1}\space dt\leqq2\int_0^x t\space dt$

とすることができます。

なんでこんなことするの?

右辺の側に極限が 0 になる式を作ろうとしていることを思い出して。不等式がちゃんと成立していて,極限が 0 になる式が作れれば何でもいいの。だったら $\cfrac{t}{t+1}$ じゃなくて $t$ にしちゃえば計算ラクじゃね?って話。

$\displaystyle2\int_0^xt\space dt=\Big[t^2\Big]_0^x=x^2$

となるので

$\displaystyle g_2(x)\leqq x^2$ ・・・③

今度は $g_3(x)$ を求めてみましょう。②より

$\displaystyle g_3(x)\leqq2\int_0^xg_2(x)\space dt$

③より

$\displaystyle g_3(x)\leqq2\int_0^xg_2(x)\space dt\leqq2\int_0^xt^2\space dt$

右辺は

$\displaystyle2\int_0^xt^2\space dt=2\Big[\cfrac{t^3}{3}\Big]_0^x=\cfrac{2}{3}x^3$

となるので

$\displaystyle g_3(x)\leqq\cfrac{2}{3}x^3$ ・・・④

③,④で比べると右辺が小さくなったよね。これを進めていくと 0 に収束する式ってのが作れそうよ。

$\displaystyle g_4(x)\leqq2\int_0^xg_3(x)dt$
$\displaystyle g_4(x)\leqq2\int_0^xg_3(x)dt\leqq2\int_0^x\cfrac{2}{3}t^3dt$

右辺は

$\displaystyle2\int_0^x\cfrac{2}{3}t^2dt=\cfrac{2}{3}\Big[\cfrac{2t^4}{4}\Big]_0^x=\cfrac{2}{3}\cdot\cfrac{2}{4}x^4$

となるので

$g_4(x)\leqq\cfrac{2}{3}\cdot\cfrac{2}{4}x^4$

もう一つ求めてみましょう。

$\displaystyle g_5(x)\leqq2\int_0^xg_4(x)dt$
$\displaystyle g_5(x)\leqq2\int_0^xg_4(x)dt\leqq2\int_0^x\cfrac{2}{3}\cdot\cfrac{2}{4}t^4dt$

右辺は

$\displaystyle2\int_0^x\cfrac{2}{3}\cdot\cfrac{2}{4}t^4dt=\cfrac{2}{3}\cdot\cfrac{2}{4}\Big[\cfrac{2t^5}{5}\Big]_0^x=\cfrac{2}{3}\cdot\cfrac{2}{4}\cdot\cfrac{2}{5}x^5$

となるので

$g_5(x)\leqq\cfrac{2}{3}\cdot\cfrac{2}{4}\cdot\cfrac{2}{5}x^5$

これで法則性が見えてきました。

$g_n(x)\leqq\cfrac{2}{3}\cdot\cfrac{2}{4}\cdot\cfrac{2}{5}\cdots\cfrac{2}{n}x^n$

ここも不等式をひねりだしましょう。

$\cfrac{2}{3}\cdot\cfrac{2}{4}\cdot\cfrac{2}{5}\cdots\cfrac{2}{n}\leqq\cfrac{2}{3}\cdot\cfrac{2}{3}\cdot\cfrac{2}{3}\cdots\cfrac{2}{3}$

とすることができるので

$g_n(x)\leqq\cfrac{2x}{3}\cdot\cfrac{2x}{3}\cdot\cfrac{2x}{3}\cdots\cfrac{2x}{3}\cdot x^2$
$0\leqq g_n(x)\leqq x^2\Big(\cfrac{2x}{3}\Big)^{n-2}$

$\Big(\cfrac{2x}{3}\Big)^{n-2}$ は $n\rightarrow\infty$ で 0 に収束します。

はさみうちの原理より

$\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}g_n(x)=0$

したがって

$\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}f_n(a)=f(a)=\cfrac{a}{a+1}$ (答え)

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