【数II3次式の因数分解】4次方程式の解が重複する場合を考える(神戸大2021理系第4問)

(1) $\angle\text{AOB}=\cfrac{\pi}{2}$ が成り立つことを示せ。

(2) 3 点 A,B,O を通る円の方程式を求めよ。

(3) 放物線 $y=x^2$ と(2)の円が A,B,O 以外の共有点をもたないような $m$ の値をすべて求めよ。

解と係数の関係

(1) $\angle\text{AOB}=\cfrac{\pi}{2}$ が成り立つことを示せ。

共有点を求めます。

$y=x^2$ と $y=mx+1$ を連立して

$x^2=mx+1$
$x^2-mx-1=0$ ・・・①

ここで,解と係数の関係を使います。

2 次方程式 $ax^2+bx+c=0$ の 2 つの解を $\alpha,\beta$ とすると
$\alpha+\beta=-\cfrac{b}{a}$,$\alpha\beta=\cfrac{c}{a}$

ここで共有点の座標を $\text{A}(\alpha,\alpha^2)$,$\text{B}(\beta,\beta^2)$ とすると,①の解は $\alpha$ と $\beta$ になります。

解と係数の関係より

$\alpha+\beta=m$ ・・・②
$\alpha\beta=-1$ ・・・③

直線 AO の傾きは

$\cfrac{\alpha^2}{\alpha}=\alpha$

直線 OB の傾きは

$\cfrac{\beta^2}{\beta}=\beta$

となるので,③より

$\angle\text{AOB}=\cfrac{\pi}{2}$ (証明終わり)

垂直に交わる 2 つの直線の傾きを $m,n$ とすると,$mn=-1$ が成り立つんだった。

円の方程式

(2) 3 点 A,B,O を通る円の方程式を求めよ。

中学で習った円周角の定理を思い出しましょう。

$\angle\text{AOB}$ が 90° なら AB は直径を表します。

よって,円の中心を P とすると,点 P は辺 AB の中点です。また,半径は辺 OP となります。

中心の座標と半径が分かれば円の方程式が作れます。

AB の中点を P とすると,②より

$\cfrac{\alpha+\beta}{2}=\cfrac{m}{2}$

ここも解と係数の関係を利用しています。

これを $y=mx+1$ に代入すると

$y=m\cdot\cfrac{m}{2}+1$
$=\cfrac{m^2}{2}+1$

よって,点 P の座標は

$\text{P}\Big(\cfrac{m}{2},\cfrac{m^2}{2}+1\Big)$

次に半径を求めます。三平方の定理を用いて

$\text{OP}^2=\Big(\cfrac{m}{2}\Big)^2+\Big(\cfrac{m^2}{2}+1\Big)^2$
$=\cfrac{m^2}{4}+\cfrac{m^4}{4}+m^2+1$
$=\cfrac{m^4}{4}+\cfrac{5}{4}m^2+1$

円の方程式
点$(a,b)$ を中心とする半径 $r$ の円の方程式は
$(x-a)^2+(y-b)^2=r^2$

円の方程式は

$\Big(x-\cfrac{m}{2}\Big)^2+\Big(y-\cfrac{m^2}{2}-1\Big)^2=\cfrac{m^4}{4}+\cfrac{5}{4}m^2+1$

式を整理していきます。$\Big(y-\cfrac{m^2}{2}-1\Big)^2$ の部分は公式を使いましょう。

公式 $(a+b+c)^2=a^2+b^2+c^2+2ab+2bc+2ca$

$x^2-mx+\cfrac{m^2}{4}+y^2+\cfrac{m^4}{4}+1-m^2y+m^2-2y=\cfrac{m^4}{4}+\cfrac{5}{4}m^2+1$
$x^2+y^2-mx-(m^2+2)y=0$ (答え)

因数分解

(3) 放物線 $y=x^2$ と(2)の円が A,B,O 以外の共有点をもたないような $m$ の値をすべて求めよ。

共有点を求めるので,(2)で求めた円の方程式と $y=x^2$ を連立します。

$x^2+y^2-mx-(m^2+2)y=0$ に $y=x^2$ を代入すると

$x^2+x^4-mx-(m^2+2)x^2=0$
$x^4-(m^2+1)x^2-mx=0$

このようにして,$x$ の式とします。

式に $x$ も $y$ もあるとやっかいだから,どっちかに合わせると良い。

$x\{x^3-(m^2+1)x-m\}=0$

$x^3-(m^2+1)x-m$ をさらに因数分解します。

数IIで三次方程式習ったときに因数分解のやり方習ったよね。こういうときは,$x$ に何らかの値を入れてみて,$=0$ になるかどうかを確かめるのがやり方だった。

そこで,$x=-m$ とすると

$-m^3+(m^2+1)m-m=0$

このとき,式は $x+m$ で割り切れます。組立除法を用いましょう。

$\begin{matrix}1&0&-m^2-1&-m&|\underline{-m}\\&-m&m^2&m\\\hline1&-m&-1&0\end{matrix}$

よって

$x(x+m)(x^2-mx-1)=0$ ・・・④

この式は 4 次方程式なので 4 つの解を持ちます。一方,問題文の条件で A,B,O 以外の共有点をもたないとあるので,解は 3 つにしなければなりません。

重解?
そういうこと。

④の解は $x=0,-m$ または $x^2-mx-1=0$ の解です。$x^2-mx-1=0$ は基本的に 2 つの解をとるので 4 つの解が存在することになるのですが,$m$ の値によって解が 3 つになる場合があります。解が重複するケースを検討してみましょう。

たとえば $m=0$ とすると,④は

$x^2(x^2-1)=0$
$x^2(x+1)(x-1)=0$

となるので,解は $x=0,1,-1$ となり 3 の解を持ちます。

また別のパターンとして $x^2-mx-1$ が重解を持つときも,④の解は 3 つだけになるはずです。

$x^2-mx-1=0$ が重解を持つとき,判別式を用いて

$D=m^2+4=0$
$m^2=-4$

これどうするんですか?
このパターンはアウトってこと。虚数を用いれば $m=\pm2i$ ってなるけど,$m$ は実数じゃないとダメだから成り立たない。

あともう一つ考えられるパターンは $x^2-mx-1=0$ の解の一つが $-m$ になる場合です。

$x=-m$ とすると

$m^2+m^2-1=0$
$2m^2-1=0$
$m^2=\cfrac{1}{2}$
$m=\pm\cfrac{1}{\sqrt{2}}$

したがって

$m=0,\pm\cfrac{1}{\sqrt{2}}$ (答え)