sin x/x の最大値とはさみうちの原理(神戸大理系第4問)
$n$ を自然数とし,$2n\pi\leqq x\leqq(2n+1)\pi$ に対して $f(x)=\cfrac{\sin x}{x}$ とする。以下の問に答えよ。
(1) $f(x)$ が最大となる $x$ の値がただ 1 つ存在することを示せ。
(2) (1)の $x$ の値を $x_n$ とする。このとき,$\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}\cfrac{n}{\tan x_n}$ を求めよ。
微分する
(1) $f(x)$ が最大となる $x$ の値がただ 1 つ存在することを示せ。
式を微分して増減表をつくり,関数の形を調べてみましょう。
$f(x)=\cfrac{\sin x}{x}$
商の微分 $\Big\{\cfrac{f(x)}{g(x)}\Big\}’=\cfrac{f'(x)g(x)-f(x)g'(x)}{\{g(x)\}^2}$
$f'(x)=\cfrac{(\sin x)’x-\sin x(x’)}{x^2}$
$=\cfrac{x\cos x-\sin x}{x^2}$
分母は単調増加です。あとは分子について調べましょう。
$g(x)=x\cos x-\sin x$ として
積の微分 $\{f(x)g(x)\}’=f'(x)g(x)+f(x)g'(x)$
$g'(x)=(x)’\cos x+x(\cos x)’-\cos x$
$=\cos x-x\sin x-\cos x$
$=-x\sin x$
$\def\arraystretch{1.5}\begin{array}{|c||c|c|c|c|c|}\hline x&2n\pi&\cdots&\alpha&\cdots&(2n+1)\pi\\\hline g'(x)&0&-&-&-&0\\\hline g(x)&2n\pi&\searrow&0&\searrow&-(2n+1)\pi\\\hline\end{array}$
範囲が $2n\pi$ から $2n+1$ ということは,たとえば,$2\pi$ から $3\pi$ や $4\pi$ から $5\pi$ ということです。
この範囲では $\sin x$ は正の値(または 0)なので,$-x\sin x$ は負の値(または 0)です。よって,$g(x)$ は減少していきます。
$g(x)$ の値ははじめ正の値で $x=\alpha$ で 0 になり,負の値で終わります。
$\def\arraystretch{1.5}\begin{array}{|c||c|c|c|c|c|}\hline x&2n\pi&\cdots&\alpha&\cdots&(2n+1)\pi\\\hline f'(x)&&+&0&-\\\hline f(x)&0&\nearrow&&\searrow&0\\\hline\end{array}$
$g(x)$ が $x=\alpha$ で 0 になるとすると,$f'(x)$ も 0 になるので,ここで $f(x)$ が極値をとることになります。
また,増減表から $f(x)$ が最大となる $x$ の値は 1 つだけ,ということも分かります。
増減表より,$f(x)$ は $x=\alpha$ で最大となる。(答え)
はさみうちの原理
(2) (1)の $x$ の値を $x_n$ とする。このとき,$\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}\cfrac{n}{\tan x_n}$ を求めよ。
(1)の $x$ の値というのは,最大値をとるとき,ということです。つまり $x$ は $x=\alpha$ のようにある決まった値で最大値をとり,そのときの $x$ の値を,$x_1,x_2,x_3,\cdots,x_n$ という数列として並べようというわけです。
$f(x)$ が最大値をとるとき
$f'(x)=\cfrac{x\cos x-\sin x}{x^2}=0$
$x\geqq2\pi$ だから分母はつねに正の数です。よって
$x\cos x-\sin x=0$
$x\cos x=\sin x$
$x=\cfrac{\sin x}{\cos x}$
$=\tan x$
このとき,等式を満たす $x$ の値は 1 つではありません。$2\pi$ と $3\pi$ の間に 1 つ,$4\pi$ と $5\pi$ の間に 1 つ,・・・と存在しています。これを並べていくと,$x_1,x_2,x_3,\cdots,x_n$ という数列ができあがるわけです。
$x$ を $x_n$ とすると
$x_n=\tan x_n$
よって
$\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}\cfrac{n}{\tan x_n}$
$\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}\cfrac{n}{x_n}$
あとは,$x_n$ の範囲からはさみうちの原理に持ち込みます。
$2n\pi\leqq x_n\leqq(2n+1)\pi$
$\cfrac{1}{(2n+1)\pi}\leqq\cfrac{1}{x_n}\leqq\cfrac{1}{2n\pi}$
$\cfrac{n}{(2n+1)\pi}\leqq\cfrac{n}{x_n}\leqq\cfrac{n}{2n\pi}$
$\cfrac{n}{(2n+1)\pi}$ は分母と分子の両方に $n$ があるので極限を求めることができません。いわゆる不定形です。こういうときは分母・分子を $n$ で割って不定形を解消するというのがやり方でした。
$\cfrac{1}{\Big(2+\cfrac{1}{n}\Big)\pi}\leqq\cfrac{n}{x_n}\leqq\cfrac{1}{2\pi}$
ここで
$\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}\cfrac{1}{\Big(2+\cfrac{1}{n}\Big)\pi}=\cfrac{1}{2\pi}$
$\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}\cfrac{1}{2\pi}=\cfrac{1}{2\pi}$
だから
はさみうちの原理より
$\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}\cfrac{n}{x_n}=\cfrac{1}{2\pi}$ (答え)
SNSでシェア