確率漸化式を考える(東京都立大2020理系第3問)

図 1 のように,グラウンドにかかれた四角形 $\text{A}_1\text{A}_2\text{A}_3\text{A}_4$ を考える。$i=1,2,3,4$ に対し,頂点 $\text{A}_i$ に生徒 $S_i$ が立っているとする。この状態から出発して,自然数 $n$ に対し,次の試行(*)を $n$ 回続けて行った後に,生徒 $S_1$ が頂点 $A_i$ に立っている確率を $p_i(n)$ とする。

(*)四角形の辺をひとつ選び,その両端に立っている生徒の位置を交換する。ただし,四角形の辺の選び方は同様に確からしいとする。

例えば,図 2 は,$n=2$ のとき,1 回目の試行で辺 $\text{A}_1\text{A}_2$ を選び,2 回目の試行で辺 $\text{A}_2\text{A}_3$ を選んだ後の状態である。以下の問いに答えなさい。(東京都立大2020)

(1) $p_1(1),p_2(1),p_3(1),p_4(1)$ を求めなさい。

(2) $i=1,2,3,4$ とする。このとき,$p_i(n+1)$ を $p_{i-1}(n),p_i(n),p_{n+1}(n)$ を用いて表しなさい。ただし,$p_0(n)=p_4(n),p_5(n)=p_1(n)$ とする。

(3) $p_2(n)=p_4(n)=\cfrac{1}{4}$ であることを示しなさい。

(4) $p_1(n)$ を $n$ を用いて表しなさい。

1 回だけ入れ替えたときの確率

(1)から始めます。

問題文の解釈が少しややこしいですが,$p_1(n)$ は 2 人の生徒の場所を入れ替えたときに生徒 $S_1$ が移動せずにそのままの場所にいる,ということです。

このとき生徒 $S_1$ 以外の 2 人が入れ替わっているので,$S_2$ と $S_3$,または $S_3$ と $S_4$ が入れ替わる場合の 2 通りが考えられます。また,辺が 4 つあるのだから,全事象は 4 通りです。よって

$p_1(1)=\cfrac{2}{4}=\cfrac{1}{2}$

$p_2(1)$ は $S_1$ と $S_2$ が入れ替わったときだけなので

$p_2(1)=\cfrac{1}{4}$

次に $p_3(n)$ を考えると,生徒どうしが 1 回入れ替わっただけで $S_1$ が $A_3$ の位置に来ることはないので

$p_3(n)=0$

最後に,$p_4(1)$ は $S_1$ と $S_4$ が入れ替わったときだけなので

$p_4(1)=\cfrac{1}{4}$

したがって

$p_1(1)=\cfrac{1}{2}$,$p_2(1)=\cfrac{1}{4}$,$p_3(n)=0$,$p_4(1)=\cfrac{1}{4}$ (答え)

漸化式をつくる

(2)に進みます。

例えば,生徒どうしを 2 回入れ替えたときに生徒 $S_1$ が $A_2$ の位置に来る場合を考えると,$S_1$ が $A_1$ から $A_2$ にやってくる場合と,$A_3$ から $A_2$ にやってくる場合が考えられます。これらが起こる確率ははそれぞれ $\cfrac{1}{2}$ です。
また,その前の段階で生徒がすでに $A_2$ にいて,そのまま動かなかった場合もあることに注意しましょう。これが起こる確率は $\cfrac{1}{2}$ です。よって

$p_i(n+1)=\cfrac{1}{4}p_{i-1}(n)+\cfrac{1}{4}p_{i+1}(n)+\cfrac{1}{2}p_i(n)$ (答え)

全事象は 1 であることを利用する

(3)に進みます。

(2)で求めた式を利用すると

$p_2(n+1)=\cfrac{1}{4}p_1(n)+\cfrac{1}{4}p_3(n)+\cfrac{1}{2}p_2(n)$ ・・・①
$p_4(n+1)=\cfrac{1}{4}p_3(n)+\cfrac{1}{4}p_5(n)+\cfrac{1}{2}p_4(n)$

$p_5(n)=p_1(n)$ より

$=\cfrac{1}{4}p_3(n)+\cfrac{1}{4}p_1(n)+\cfrac{1}{2}p_4(n)$ ・・・②

①-②は
$p_2(n+1)-p_4(n+1)=\cfrac{1}{2}\{p_2(n)-p_4(n)\}$

ここは帰納法で考えます。(1)より $p_2(1)-p_4(1)=\cfrac{1}{4}-\cfrac{1}{4}=0$ です。これを上の式の右辺に当てはめると,左辺は $p_2(2)-p_4(2)=0$ となり,これを再び上の式に当てはめると,左辺が $p_2(3)-p_4(3)=0$ ・・・となり,結局 $p_2(n)-p_4(n)=0$ が成り立ちます。

考え方は帰納法ですが,あえて帰納法の証明で記述しなくても構いません。

$p_2(1)-p_4(1)=0$ より
$p_2(n)-p_4(n)=0$
$p_2(n)=p_4(n)$

次に,$p_2(n)=p_4(n)=\cfrac{1}{4}$ を証明します。

①より
$p_2(n+1)=\cfrac{1}{4}p_1(n)+\cfrac{1}{4}p_3(n)+\cfrac{1}{2}p_2(n)$

$\cfrac{1}{2}$ を $\cfrac{1}{4}$ と $\cfrac{1}{4}$ に分けます。

$=\cfrac{1}{4}p_1(n)+\cfrac{1}{4}p_3(n)+\cfrac{1}{4}p_2(n)+\cfrac{1}{4}p_2(n)$

$p_2(n)=p_4(n)$ だから

$=\cfrac{1}{4}\{p_1(n)+p_2(n)+p_3(n)+p_4(n)\}$

ここで注意。生徒どうしを入れ替えたとき,生徒 $S_1$ は必ず $A_1$ から $A_4$ のどこかにいるのだから,すべての確率を合計したら 1 になるはず。
全事象か。

$p_1(n)+p_2(n)+p_3(n)+p_4(n)=1$ より

$p_2(n)=p_4(n)=\cfrac{1}{4}$ (証明終わり)

特性方程式を解く

(4)に進みます。

(2)の漸化式に当てはめて,式を整理していきましょう。

$p_1(n+1)=\cfrac{1}{4}p_0(n)+\cfrac{1}{4}p_2(n)+\cfrac{1}{2}p_1(n)$

$p_0(n)=p_4(n)$ より

$=\cfrac{1}{4}p_4(n)+\cfrac{1}{4}p_2(n)+\cfrac{1}{2}p_1(n)$

$p_2(n)=p_4(n)=\cfrac{1}{4}$ より
$p_1(n+1)=\cfrac{1}{2}p_1(n)+\cfrac{1}{8}$

漸化式がこのような形になったら,特性方程式を使って解きます。

$\alpha=\cfrac{1}{2}\alpha+\cfrac{1}{8}$
$\cfrac{1}{2}\alpha=\cfrac{1}{8}$
$\alpha=\cfrac{1}{4}$

よって

$\begin{aligned}&p_1(n+1)&&=\cfrac{1}{2}p_1(n)+\cfrac{1}{8}\\+)&\space\alpha&&=\cfrac{1}{2}\alpha+\cfrac{1}{8}\\\hline&p_1(n+1)-\alpha&&=\cfrac{1}{2}\{p_1(n)-\alpha\}\end{aligned}$
$p_1(n+1)-\cfrac{1}{4}=\cfrac{1}{2}\Big\{p_1(n)-\cfrac{1}{4}\Big\}$

$p_1(n)-\cfrac{1}{4}=a_n$ とすると

$a_{n+1}=\cfrac{1}{2}a_n$

また

$a_1=p_1(1)-\cfrac{1}{4}=\cfrac{1}{2}-\cfrac{1}{4}=\cfrac{1}{4}$

よって,$a_n$ は初項 $\cfrac{1}{4}$,公比 $\cfrac{1}{2}$ の等比数列だから,一般項は

$a_n=\cfrac{1}{4}\Big(\cfrac{1}{2}\Big)^{n-1}$
$=\Big(\cfrac{1}{2}\Big)^2\Big(\cfrac{1}{2}\Big)^{n-1}$
$=\Big(\cfrac{1}{2}\Big)^{n+1}$

したがって
$p_1(n)-\cfrac{1}{4}=\Big(\cfrac{1}{2}\Big)^{n+1}$
$p_1(n)=\cfrac{1}{4}+\Big(\cfrac{1}{2}\Big)^{n+1}$ (答え)