方程式の解が複素数のとき,その共役な複素数も解であることの証明(東京都立大2018文系第3問)

ii を虚数単位とする。mm を整数とし,g(x)=x35x2+mx13g(x)=x^3-5x^2+mx-13 とする。整数 aa と 00 でない整数 bb が g(a+bi)=0g(a+bi)=0 をみたすとき,以下の問いに答えなさい。(東京都立大2018)

(1) g(abi)=0g(a-bi)=0 が成り立つことを示しなさい。

(2) g(x)g(x) が x22ax+a2+b2x^2-2ax+a^2+b^2 で割り切れることを示しなさい。

(3) mm の値を求めなさい。

因数定理と剰余の定理

(1)から始めます。

g(a+bi)=0g(a+bi)=0 をみたすということは,方程式の解の一つが a+bia+bi であるということです。g(abi)=0g(a-bi)=0 も同様で,解の一つが abia-bi であるということです。

x35x2+mx13x^3-5x^2+mx-13 は 3 次関数ですが,そもそも解の一つが複素数 a+bia+bi であるとき,一般的にその共役な複素数 abia-bi も解であることは教科書に書いてある話です。

じゃあ,解決ということで。
そこ,もう一押し。

a+bia+bi と abia-bi が解であるなら,式は

g(x)=(xabi)(xa+bi)Q(x)g(x)=(x-a-bi)(x-a+bi)Q(x) 

という形に因数分解できるはずです。

ここで,分からなくなった。
おさらいするか。

簡単な例で考えてみましょう。x36x2+11x6=0x^3-6x^2+11x-6=0 という方程式があったとして,これを因数分解すると

(x1)(x2)(x3)=0(x-1)(x-2)(x-3)=0

となります。このとき,x=1,2,3x=1,2,3 が方程式の解です。これに x=1x=1 を代入すると

(11)(x2)(x3)(1-1)(x-2)(x-3)
0×(x2)(x3)=00\times(x-2)(x-3)=0

となるので,イコール 0 が成り立ちます。x=2x=2x=3x=3 のときも同様です。

このように,ある関数は xx-\sf{解} で因数分解できます。これは言い換えると,式は xx-\sf{解} で割り切れる(余りが 0 になる)ということです(因数定理)。

ここ,ポイント。

話を戻しましょう。g(x)g(x) の解が a+bia+bi だけでなく abia-bi も解であると仮定するなら

g(x)=(xabi)(xa+bi)Q(x)g(x)=(x-a-bi)(x-a+bi)Q(x) 

と因数分解できるはずです。

なるほど。

さらに余りを考えてみます。ある数は 割る数×商+余り という形で表すことができました。

x35x2+mx13x^3-5x^2+mx-13 は xx の 3 次式です。これを,x(a+bi)x-(a+bi),つまり 1 次式で割ると,その余りは 2 次以下の式になります。

この辺りは教科書に出てくる知識。

そこで,余りを px2+qx+rpx^2+qx+r と表してみます。

{g(x)=(xabi)(xa+bi)Q(x)+R(x)R(x)=px2+qx+r\begin{cases}g(x)=(x-a-bi)(x-a+bi)Q(x)+R(x)\\R(x)=px^2+qx+r\end{cases}

このとき,xx に a+bia+bi を代入しても,abia-bi を代入しても,式は割り切れるから余りは 0,つまり R(x)=0R(x)=0 が成り立ちます。

R(a+bi)=p(a+bi)2+q(a+bi)+rR(a+bi)=p(a+bi)^2+q(a+bi)+r
=a2p+2abpib2p+aq+bqi+r=0=a^2p+2abpi-b^2p+aq+bqi+r=0

ここで,式を実数と虚数に分けて整理します。

a2ppb2+aq+r+(2abp+bq)i=0a^2p-pb^2+aq+r+(2abp+bq)i=0

式が 0 になるということは,実数の部分と虚数の部分がどちらも 0 になるということです。

x+yi=0x+yi=0 のとき x=0x=0y=0y=0

よって

{a2pb2p+aq+r=02abp+bq=0\begin{cases}a^2p-b^2p+aq+r=0&\cdots\sf{①}\\2abp+bq=0&\cdots\sf{②}\end{cases}

これを利用します。

R(abi)=p(abi)2+q(abi)+rR(a-bi)=p(a-bi)^2+q(a-bi)+r
=a2p2abpib2p+aqbqi+r=a^2p-2abpi-b^2p+aq-bqi+r
=a2pb2q+aq+r(2abp+bq)i=a^2p-b^2q+aq+r-(2abp+bq)i

①,②を代入すると

=0=0 (証明終わり)

式を展開する

(2)に進みます。

(1)より

g(x)=(xabi)(xa+bi)Q(x)g(x)=(x-a-bi)(x-a+bi)Q(x) 

として,カッコを展開します。

={x(a+bi)}{x(abi)}Q(x)=\{x-(a+bi)\}\{x-(a-bi)\}Q(x) 

={x2(abi)x(a+bi)x+(a+bi)(abi)}Q(x)=\{x^2-(a-bi)x-(a+bi)x+(a+bi)(a-bi)\}Q(x)
=(x2ax+bixaxbix+a2+b2)Q(x)=(x^2-ax+bix-ax-bix+a^2+b^2)Q(x)
=(x22ax+a2+b2)Q(x)=(x^2-2ax+a^2+b^2)Q(x)

(証明終わり)

式を割る

(3)に進みます。このままでは手がかりがないので,式を実際に x22ax+a2+b2x^2-2ax+a^2+b^2 で割ってみると良いでしょう。

式は割り切れるので,余りは 0 です。
ここから,式が 0 になる条件を考えると

{ma2b2+2a(2a5)=013(a2+b2)(2a5)=0\begin{cases}m-a^2-b^2+2a(2a-5)=0\\-13-(a^2+b^2)(2a-5)=0\end{cases}

という式を作ることができます。式を変形すると

{m=3a2+b2+10a (a2+b2)(2a5)=13\begin{cases}m=-3a^2+b^2+10a&\cdots\sf{③} \\ (a^2+b^2)(2a-5)=-13&\cdots\sf{④}\end{cases}

④から片づけていきましょう。右辺が 13 であるということは,左辺は 1×131\times13 または 13×113\times1 のかけ算のパターンしかないことが分かります。また,a2+b2a^2+b^2 は a,ba,b がどんな値でも正の数になります。よって,左辺は 1×(13)1\times(-13) または 13×(1)13\times(-1) です。

(i) a2+b2=1a^2+b^2=12a5=132a-5=-13 のとき
2a5=132a-5=-13
2a=82a=-8
a=4a=-4

a2+b2=1a^2+b^2=1 に代入すると

16+b2=116+b^2=1
b2=15b^2=-15
b=±15b=\pm\sqrt{15}

bb は整数だから,不適。

(ii) a2+b2=13a^2+b^2=132a5=12a-5=-1 のとき

2a5=12a-5=-1
2a=42a=4
a=2a=2

a2+b2=1a^2+b^2=1 に代入すると

4+b2=134+b^2=13
b2=9b^2=9
b=±3b=\pm3

よって,a=2a=2b=±3b=\pm3

これらを③に代入すると

m=322+32+102m=-3\cdot2^2+3^2+10\cdot2
=17=17 (答え)