【数III微分】接線の座標の存在範囲/漸近線を求めてグラフの概形を描く(九州大2020)
点 $(a,0)$ を通り,曲線 $y=e^{-x}-e^{-2x}$ に接する直線が存在するような定数 $a$ の値の範囲を求めよ。(九州大2020)
問題文から条件を考える
まず,ある曲線に接する直線とは接線のことです。接線の公式を思い出しましょう。
関数 $f(x)$ の $x=t$ における接線は
$y=f'(t)(x-t)+f(t)$
これを用いて,とりあえず接線の式を作ってみましょう。
$f(x)=e^{-x}+e^{-2x}$ として
$f'(x)=-e^{-x}+2e^{-2x}$
$=2e^{-2x}-e^{-x}$
$x=t$ における接線の方程式は
$g(x)=(2e^{-2t}-e^{-t})(x-t)+e^{-t}-e^{-2t}$
これが $(a,0)$ を通るので
$(2e^{-2t}-e^{-t})(a-t)+e^{-t}-e^{-2t}=0$
a を t の関数としてみなす
今までも,例えば二次関数で解が存在するかどうかを考えるときに,$y=ax^2+bx+c$ のような式から判別式 $D$ を作り,$D<0$ なら解が存在しない,という判断をしてきました。
これは $y$ を $x$ の関数とみなして,解の存在範囲を求めているということです。今回も同じように,$a$ を $t$ の関数とみなして,$a$ が存在するかどうかを考えていくことになります。
式を展開して
$(2e^{-2t}-e^{-t})a-(2e^{-2t}-e^{-t})t+e^{-t}-e^{-2t}=0$
$a=\cfrac{(2e^{-2t}-e^{-t})t-e^{-t}+e^{-2t}}{2e^{-2t}-e^{-t}}$
$=\cfrac{2te^{-2t}-te^{-t}-e^{-t}+e^{-2t}}{2e^{-2t}-e^{-t}}$
ここで計算を楽にするために,分母と分子に $e^{2t}$ をかけておきます。
$e^{-2t}\cdot e^{2t}=1$,$e^{-t}\cdot e^{2t}=e^t$ になる。
$=\cfrac{2t-te^t-e^t+1}{2-e^t}$
分母は $2-e^t$ よりは $e^t-2$ の方が一般的な形なので,分母と分子に $-1$ をかけて符号をひっくり返しておきます。
$=\cfrac{te^t+e^t-2t-1}{e^t-2}$
ここから,この関数がどのような形になるか考えます。
ここで,漸近線が引けることに気づけるかどうかが大事なポイントです。分母の $e^t-2$ は 0 になることができません。数学では 0 の割り算はできません。
このとき,$e^t-2=0$ になる $t$ が漸近線になります。漸近線を求めてみましょう。
$e^t-2=0$
$e^t=2$
ここで,対数の定義を思い出しましょう。
$a^b=c$ のとき $b=\log_a c$
これを用いて
$t=\log 2$
底が $e$ のときは式から省略できます。
これで,漸近線の一つが求められました。
$=\cfrac{(e^t-2)+2+te^t-2t-1}{e^t-2}$
$=1+\cfrac{te^t-2t+1}{e^t-2}$
さらに有理化します。
$=1+\cfrac{t(e^t-2)+2t-2t+1}{e^t-2}$
$=t+1+\cfrac{1}{e^t-2}$
ここでもう一つ,$a=t+1$ が漸近線であると言えます。
$t$ の値が大きくなると,$\cfrac{1}{e^t-2}$ は 0 に近づいていきます。つまり,関数のグラフは限りなく $a=t+1$ に近づいていくことになります。これが漸近線です。
漸近線が描けると,グラフの概形も見えてきます。
あとは,水平な直線を引いて直線と曲線が重なるとき,あてはまる $a$ が存在するということになります。
$g(t)=t+1+\cfrac{1}{e^t-2}$ として
ここで,商の導関数の公式を思い出しましょう。
$\Big\{\cfrac{1}{g(x)}\Big\}’=-\cfrac{g'(x)}{\{g(x)\}^2}$
これを用いて
$g'(t)=1-\cfrac{(e^t-2)’}{(e^t-2)^2}$
$=1-\cfrac{e^t}{(e^t-2)^2}$
$1-\cfrac{e^t}{(e^t-2)^2}=0$ として
$\cfrac{e^t}{(e^t-2)^2}=1$
$e^t=(e^t-2)^2$
$(e^t-2)^2-e^t=0$
$e^{2t}-4e^t+4-e^t=0$
$e^{2t}-5e^t+4=0$
$(e^t-1)(e^t-4)=0$
$e^t=1,4$
$e^t=1$ のとき
$t=0$
$e^t=4$ のとき
$t=\log 4$
よって
$t=0$ のとき
$g(t)=0+1+\cfrac{1}{e^0-2}$
$=1+\cfrac{1}{1-2}=0$
$t=\log 4$ のとき
$g(t)=\log 4+1+\cfrac{1}{e^{\log4}-2}$
ここで,応用として $e^{\log 4}$ の求め方をマスターしましょう。ポイントは,いったん $e^{\log 4}=x$ とおくことです。
$e^{\log4}=x$ として
$\log4=\log x$
$x=4$
すなわち $e^{\log4}=4$
$=\log4+1+\cfrac{1}{2}$
$=\log4+\cfrac{3}{2}$
$\log4=\log2^2=2\log 2$ だから
$=2\log2+\cfrac{3}{2}$
$\def\arraystretch{1.5}\begin{array}{|c||c|c|c|c|c|c|c|}\hline t&\cdots&0&\cdots&\log2&\cdots&\log4&\cdots\\\hline g'(t)&+&0&-&/&-&0&+\\\hline g(t)&\nearrow&&\searrow&/&\searrow&&\nearrow\\\hline\end{array}$
したがって
$a\leqq0,a\geqq2\log2+\cfrac{3}{2}$ (答え)
今回の問題は,接線の式を $a$ と $t$ の関数としてみなすのがポイントです。あとは,教科書通り漸近線を見つけ,グラフの概形を考えていきましょう。
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