【数III・数列の極限】基本は n で割る 分子の有理化で不定形を解消

極限の問題何やっていいか分からなくて解けないです。
確かに式を見ただけでは何やっていいか判断つかないこと多いよね。経験値の問題なんだけどいくつか問題やってみて,方針の立てかた身につけていこうか。

n で割ってみる


$\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}\cfrac{n}{2n+1}$

$n$ を∞にすると分子は $n\rightarrow\infty$,分母は $2n+1\rightarrow\infty$ です。つまり $\cfrac{\infty}{\infty}$ となります。

このような形を不定形と言います。

$\cfrac{\infty}{\infty}=1$ ってしたらダメですか?
ダメ。∞ はあくまでメチャクチャ大きい数というだけで,決まった大きさを持たない。例えば 100億分の10兆だったら,それって 1 にならないよね。分母と分子の∞は同じものとは限らないの。∞ってあくまでボンヤリした数に過ぎない。
ここでも,$n$ に 100 兆とか代入するとして,$n$ と $2n+1$ がイコールになるって考えてみたらあり得ないでしょ?

そこで,式の分母と分子を $n$ で割ってみます。

$\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}\cfrac{n}{2n+1}=\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}\cfrac{\cfrac{n}{n}}{\cfrac{2n+1}{n}}$

$=\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}\cfrac{\cfrac{n}{n}}{\cfrac{2n}{n}+\cfrac{1}{n}}=\lim_{n\rightarrow\infty}\cfrac{1}{2+\cfrac{1}{n}}$

$\displaystyle=\cfrac{1}{2+0}=\cfrac{1}{2}$ (答え)

$\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}\cfrac{1}{n}=0$ だから,これをうまく活用して極限の値を求めようってのが方針。これを不定形の解消という。
んー,でも極限って色々パターンあるじゃないですか? $n$ で割ればいいのかどうかが分からない。
この問題でいうと分子は $\cfrac{n}{n}=1$ だし,分母は$2+\cfrac{1}{n}=2$ ってなるよね。こんな感じで $n$ で割ったら分母・分子がともに数字だけ残るか,数字+$\cfrac{1}{n}$ の形になればいける。これが最初の判断ポイント。

分子の有理化


$\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}(n+1-\sqrt{n^2+2n})$

今度は $n\rightarrow\infty$ とすると,$\infty+1-\sqrt{\infty}$ みたいなことになる。$\infty-\infty$ の形も不定形。
これも $\infty-\infty=0$ ではない。$100$ 兆―$99$兆だと $0$ にならないよね。

この場合の不定形の解消法は,分子の有理化です。

$\displaystyle=\lim_{n\rightarrow\infty}\cfrac{(n+1-\sqrt{n^2+2n})(n+1+\sqrt{n^2+2n})}{n+1+\sqrt{n^2+2n}}$

分子の有理化って習ったけど,なんで有理化するんですか?
要するに分数にしたいから。例えば,$\cfrac{4}{6}=\cfrac{4\times\cfrac{1}{2}}{6\times\cfrac{1}{2}}=\cfrac{2}{3}$ みたいな感じで,分母・分子に同じ数をかけたり割ったりしてももとの数と変わらない。その性質を使って $n$ で割りたいから分数にする。
よっぽど単純な問題じゃない限り極限の問題ってだいたい分数に持ち込むから,それも意識しておくといいよね。

$=\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}\cfrac{(n+1)^2-(n^2+2n)}{n+1+\sqrt{n^2+2n}}$
$=\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}\cfrac{n^2+2n+1-n^2-2n}{n+1+\sqrt{n^2+2n}}$
$=\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}\cfrac{1}{n+1+\sqrt{n^2+2n}}$
$=\cfrac{1}{\infty}=0$ (答え)

ルートを n で割る

$\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}\cfrac{5n}{\sqrt{n^2-3}-\sqrt{3n}}$

これも $\cfrac{\infty}{\infty-\infty}$ みたいな感じになって不定形だから,解消していく。

$=\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}\cfrac{\cfrac{5n}{n}}{\cfrac{\sqrt{n^2-3}-\sqrt{3n}}{n}}$
$=\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}\cfrac{5}{\cfrac{\sqrt{n^2-3}}{n}-\cfrac{\sqrt{3n}}{n}}$
ここで,$n=\sqrt{n^2}$ だから
$=\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}\cfrac{5}{\cfrac{\sqrt{n^2-3}}{\sqrt{n^2}}-\cfrac{}{}\cfrac{\sqrt{3n}}{\sqrt{n^2}}}$
$=\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}\cfrac{5}{\sqrt{\cfrac{n^2-3}{n^2}}-\sqrt{\cfrac{3n}{n^2}}}$
$=\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}\cfrac{5}{\sqrt{\cfrac{n^2}{n^2}-\cfrac{3}{n^2}}-\sqrt{\cfrac{3}{n}}}$
$=\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}\cfrac{5}{\sqrt{1-\cfrac{3}{n^2}}-\sqrt{\cfrac{3}{n}}}$
$=\cfrac{5}{\sqrt{1-0}-0}=5$ (答え)

慣れたら途中式もっと減らしていくと良い。要するに $n$ で割るならルートの中では $n^2$ で割るっていうことだよね。
少しわかってきたような。少しわかってきたような。
基本は $n$ で割る&分子の有理化だから,これを手掛かりに他の問題も取り組んでいくといいよ。