教養

ポピュリズムとは何か? 社会の対立軸の変化が新しい政党を生み出した

政治の世界ではポピュリズムが広がりつつあります。20世紀の頃は、資本主義に基づいて自由経済を拡大しようとする右派と、社会福祉の充実や経済的平等を求める左派との対立が主流でした。しかし、近年ではこうした「資本主義か社会主義か」という経済学的論争はあまり行われなくなり、リベラルと台頭するポピュリズムの対立が大きな争点になってきています。

”過去には、経済的困窮が福祉国家を通じた保護の要求を引き起こし、このことが社会民主主義政党に利益をもたらし、労働組合を強化した。現在、逆のことが起こっている。負の経済ショックは、時に福祉国家の縮小を政策の基盤として選挙運動を行い、再分配的な経済政策を擁護しない社会的に保守的な政治家へと有権者を向かわせる。”

 

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20世紀の対立構造が変化しつつある

近年起こっている新しい対立とは、ナショナリズムと保守主義を支持する人々と進歩的な立場の人々との対立です。これまでの社会民主主義政党は支持を失い、対立の軸の変化に応える新しい政党が出現しています。こうした新しい政党はいわゆるポピュリスト政党であり、反体制や反エリート主義に基づき、自分たちは一般の人々の真の利益を代表していると主張しています。

20世紀の頃は、不景気が起こると社会民主主義政党への支持が拡大し、経済的再分配を求める声が強くなっていたのですが、今日では不景気が起こると経済的不公平を拡大するはずの社会福祉の削減や、再分配よりも移民問題を重視する人々が増加するようになってきました。こうした人々がポピュリスト政党の支持者となっています。

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教育、文化、経済の格差

これは、かつて社会の対立軸が資本家と労働者であったことから、教育、文化、経済の格差へと対立軸が変化しているということです。教育や文化の格差は外国人を嫌う人々と多様性を重んじる人々の対立を生みます。

また、大量消費社会のあとに出現した若者たちは、環境問題に敏感で、伝統的な家族の価値観にとらわれず、多様性を重視し、過去の慣習に順応して出世することよりも経済的合理性を実現することを重視します。こうした若者の出現によって、古い世代の人々は社会から疎外されているという感覚を持つようになります。こうして「自分の土地の見知らぬ人」になった人々が多様性への嫌悪を抱き右派ポピュリズムに傾倒するようになっていると考えられています。

リーマンショック後、中国からアメリカへの輸出額は1.5倍以上に拡大した。研究者はこのことが大統領選挙の結果を左右した大きな要因であると主張している。

また、貿易における外国製品の脅威もポピュリズムを後押ししています。調査によると、2016年のアメリカ大統領選挙において、中国からの輸入品の影響で失業した人々が多い地域ほど、トランプに票を入れました。両者には強い相関関係があることが分かっています。同様に、イギリスにおけるブレグジットの問題でも相関関係があることが明らかにされています。

しかし、過去の資本家と労働者の対立においてもその二つを簡単に区分することが困難であったように、今日の対立軸もそれを定義することは簡単な事ではなく、研究者の間でもポピュリズムの定義は様々です。日本における右派ポピュリスト政党の支持者を考えるとき、欧米の議論をそのまま当てはめることは適切ではないように思えます。

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ポピュリズムは一時的な現象ではない

研究者の見解によれば、ポピュリズムが一時的な現象で終わることはありません。それは従来とは異なる新たな対立軸の出現の結果として生まれたものであり、研究が進んで対立の構造が整理されていくにつれ、ポピュリズムというぼんやりとした用語は別の定義を与えられるのかもしれませんが、私たちが目撃している現実そのものはもっと本質的なものであると考えた方が良さそうです。

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