オーバーツーリズム 外国人観光客が増えすぎたオランダは規制を導入している

日本では2018年に訪日外国人旅行者数が3千万人を突破し、過去最高を記録しました。政府は次の4千万人に向け旅行者の増大を促進する方針を立てています。一方、オランダでは一部の観光地に大勢の観光客が殺到し、増えすぎた観光客への対策を模索し始めています。

”アムステルダムには、美術館、ガイド付き運河ツアー、美しい建築物があり、被害を受けている。それに対処するために、市は最近、さまざまな法律を可決した。それには市内の大半の地域での新しいホテル建設の一時停止や、新しい罰金(公衆排尿または飲酒および無秩序な行為に対して140ユーロ)、Airbnbレンタルの新しい制限(ユニットあたり年間30泊)、歴史的な市内中心部での自転車レンタル用品やドーナツショップのような新しい観光中心のビジネスの禁止と制限の組み合わせを含む。”

オーバーツーリズム

外国人観光客が増えることは必ずしもいいことばかりではありません。人口160万人のバルセロナには年間3千万人が観光に訪れており、都市の環境や地元の人々の生活物価にも悪影響を与えています。

一方で多くの外国人観光客を受け入れることは、その都市の多様性や寛容性の水準を示しています。外国人観光客の受け入れを促進することは都市の価値を高める上で重要な要素であると言えるでしょう。

近年では格安航空会社の台頭やAirbnbによって割安な民泊サービスが手軽に利用できるようになってきました。海外旅行はより身近なものになり、観光客の爆発的な増大につながっています。格安な航空チケットや現地のホテルの確保を手軽なものにしたのは何よりインターネットです。インターネット上の情報は今まで注目されていなかった地点の魅力を国境を越えて伝達し、その情報を頼りに外国人観光客の訪問が増加しています。例え一つ一つのスポットが昔ながらに何も変化しなかったとしても、外国人観光客が訪れるべきスポットはブログやInstagramを通じて無限に増大していくのです。

こうした現象はオーバーツーリズムと呼ばれています。英文で取り上げたオランダは人口約1700万人の国家ですが、今やそこに年間約1900万人の観光客が訪れています。かつてはどの国の政府・地方自治体にとっても観光客の増大を促進することが課題だったのですが、その課題は観光地の適切な管理へと移りつつあるのです。

スペインのバルセロナにはその人口をはるかに上回る観光客が訪れている。

また、外国人観光客の増大に最も貢献している人々は中国人です。外国を訪れた中国人は2000年にはおよそ1千万人ほどで、2018年にはそれが1億5千万人に増加しました。日本は最もその恩恵を授かった人々の一つとなっています。

人々の生活と観光のバランスをどう保つか

どんな国でも外国人観光客はもともと歓迎されていたわけではありません。外国人嫌いや民族への蔑視によってそれらの観光客を快く思わない人々が多く存在していました。日本でも今や日本人より中国人や韓国人の方が数が多い観光スポットはいくらでもあり、もはや日常の光景になっています。ネット上ではそうした外国人観光客を迷惑な存在だと感じている人々の声であふれていますが、それは日本以外の国でも同様です。歩道の通行を妨げ路上で自撮り棒を伸ばす観光客を不快に思うのは民族差別とはまた異なった問題です。

アムステルダムでは観光客が殺到する一部の地域について規制を導入している。

しかし、外国人観光客が爆発的に増加しているとは言え、実際のところオーバーツーリズムが問題になっているのは観光客が集中する特定のスポットに限られます。従って過剰反応しないことが大切です。

その一方で、人々が生活する都市に外国人観光客が過剰に押し寄せれば人々の生活に支障がでます。アムステルダムは無制限に観光客を増やすのではなくバランスを考慮して管理していく方針に転換しつつあります。また観光税の導入も検討しており、集めた税金を人々の暮らしの改善に活用しようとしています。観光産業に関わっていない人々も含めて社会全体で恩恵を分かち合うことで、都市全体の寛容性を向上させることにつながります。

日本人よりもはるかに長い夏休みが取れるヨーロッパ人の間ではオーバーツーリズムが既に問題となっており、日本人もその経験を学ぶべきでしょう。