nx をもつ関数の不等式の証明・極限を求める/中間値の定理(神戸大2017理系第1問)

$n$ を自然数とする。

$f(x)=\sin x-nx^2+\cfrac{1}{9}x^3$

とおく。$3<\pi<4$ であることを用いて,以下の問に答えよ。

(1) $0<x<\cfrac{\pi}{2}$ のとき,$f”(x)<0$ であることを示せ。

(2) 方程式 $f(x)=0$ は $0<x<\cfrac{\pi}{2}$ の範囲に解をただ 1 つもつことを示せ。

(3) (2)における解を $x_n$ とする。$\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}x_n=0$ であること示し,$\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}nx_n$ を求めよ。

不等式の証明

(1)から始めます。

まずは第二次導関数から求めましょう。

$f'(x)=\cos x-2nx+\cfrac{1}{3}x^2$
$f”(x)=-\sin x-2n+\cfrac{2}{3}x$

$0<x<\cfrac{\pi}{2}$ より

$-1<-\sin x<0$ ・・・①

また

$0<\cfrac{2}{3}\pi<\cfrac{2}{3}\cdot\cfrac{\pi}{2}$

$0<\cfrac{2}{3}x<\cfrac{\pi}{3}$ ・・・②

①+②

$-1<-\sin x+\cfrac{2}{3}x<\cfrac{\pi}{3}$

さらに,$f”(x)$ に合わせていきます。

$-1-2n<-\sin x-2n+\cfrac{2}{3}x<\cfrac{\pi}{3}-2n$

よって

$f”(x)<\cfrac{\pi}{3}-2n$

あとは $\cfrac{\pi}{3}-2n$ が負の数であることを示せば,$f”(x)<0$ が成り立つことになります。

$3<\pi<4$ より
$1<\cfrac{\pi}{3}<\cfrac{4}{3}$
$1-2n<\cfrac{\pi}{3}-2n<\cfrac{4}{3}-2n$

よって

$f”(x)<\cfrac{\pi}{3}-2n<\cfrac{4}{3}-2n$
$f”(x)<\cfrac{4}{3}-2n$

$n$ は自然数だから,$n\geqq1$ です。したがって,$2n\geqq2$ となるので,$\cfrac{4}{3}-2n$ はつねに負の数となります。

$f”(x)<\cfrac{4}{3}-2n<0$

$f”(x)<0$ (証明終わり)

中間値の定理

(2)に進みます。

ここでは中間値の定理を用いてみます。

中間値の定理って何?
中間値の定理は数 I か数 III で習うはずなんだけど,なんとなく忘れてること多いね。簡単に復習すると,関数をある区間で区切ったときに片側がプラスでもう一方がマイナス(あるいはその逆)ならその途中で絶対 $y=a$ のところ通るよねっていう理屈。
当たり前。
そう,当たり前。だけどこれが証明に使える。このヨコ線が $x$ 軸なら区間内に $f(x)=0$ の解が必ず 1 つ存在する。ただし,これが成り立つにはグラフがつねに右上がり(または右下がり)である必要がある。

そこで,いったん増減表を作ってグラフの増減を確認してみましょう。

$f'(0)=1$
$f’\Big(\cfrac{\pi}{2}\Big)=-2n\cdot\cfrac{\pi}{2}+\cfrac{1}{3}\Big(\cfrac{\pi}{2}\Big)^2$
$=-n\pi+\cfrac{\pi^2}{12}$
$=\cfrac{\pi(\pi-12n)}{12}$

$3<\pi<4$ と $n\geqq1$ より $\pi-12n$ はつねに負の値です。

$\cfrac{\pi(\pi-12n)}{12}<0$

また

$f(0)=0$
$f\Big(\cfrac{\pi}{2}\Big)=1-\cfrac{n}{4}\pi^2+\cfrac{\pi^3}{72}$
$=\cfrac{72-18n\pi^2+\pi^3}{72}$

これが正の数か負の数かを確認してみる。

$3<\pi<4$ より

$9<\pi^2<16$
$162n<18n\pi^2<288n$
$-288n<-18n\pi^2<-162n$

また

$3<\pi<4$

$27<\pi^3<64$

不等式の右側について

$72-18n\pi^2+\pi^3<72-162n+64$
$72-18n\pi^2+\pi^3<136-162n<0$

よって,負の値です。

増減表は

$\def\arraystretch{1.5}\begin{array}{|c|c|c|c|c|c|c|c|}\hline x&(0)&\cdots&\alpha&\cdots&\beta&\cdots&\left(\frac{\pi}{2}\right)\\\hline f'(x)&(+)&+&0&-&-&-&(-)\\\hline f”(x)&&-&-&-&-&-\\\hline f(x)&(0)&\nearrow&&\searrow&0&\searrow\\\hline\end{array}$

区間内で $f”(x)$ はつねに負の値なので,極値は存在しないか,または 1 個だけ存在することになります。ここでは,$f'(x)$ の正負が途中で入れ替わっているはずなので,$x=\alpha$ で極値をとるとしています。

その結果,$f(x)$ は $f(0)=0$ からスタートしていったん増加し,$x=\alpha$ から減少に転じ,そのあとはつねに減少します。そして $f\Big(\cfrac{\pi}{2}\Big)$ は負の値だったので,途中で $f(x)=0$ を通るはずです。

今回少し応用だよね。区間全体では増加と減少のどちらもあるんだけど,$\alpha$ から $\cfrac{\pi}{2}$ の区間で見ればつねに減少だから,中間値の定理が成り立っているといえる。

したがって,方程式 $f(x)=0$ は $0<x<\cfrac{\pi}{2}$ の範囲に解をただ 1 つもつ。(証明終わり)

極限を求める

(3)に進みます。

(2)における解を $x_n$ とするということは

$f(x_n)=0$

が成り立つということです。

$f(x_n)=\sin x_n-n{x_n}^2+\cfrac{1}{9}{x_n}^3=0$
$n{x_n}^2=\sin x_n+\cfrac{1}{9}{x_n}^3$ ・・・③
${x_n}^2=\cfrac{\sin x_n}{n}+\cfrac{{x_n}^3}{9n}$

こんなカンジで分母に $n$ を持ってきて,$n\rightarrow\infty$ のとき $\cfrac{1}{n}\rightarrow0$ で収束させる。

$x_n$ はある決まった数(定数)だから,$\sin x_n$ と ${x_n}^3$ もなんらかの決まった数になるはずです。

よって

$\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}{x_n}^2=0$

だから

$\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}x_n=0$

これ,勝手に $x_n$ の極限も 0 ってしていいのか迷う。
教科書で習ったと思う。

$\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}a_n=\alpha$,$\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}b_n=\beta$ のとき

$\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}a_nb_n=\alpha\beta$

$a_n$ と $b_n$ をどっちも $x_n$ ってしたら,$\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}{x_n}=0$ のとき $\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}{x_n}^2=0$ が成り立つ。そしてその逆も成り立つ。

あとは,$\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}nx_n$ を求めましょう。

$n{x_n}^2=\sin x_n+\cfrac{1}{9}{x_n}^3$ ・・・③ より

$n{x_n}=\cfrac{\sin x_n}{x_n}+\cfrac{1}{9}{x_n}^2$

$\cfrac{\sin x}{x}$ の極限には公式がありました。

公式 $\displaystyle\lim_{x\rightarrow0}\cfrac{\sin x}{x}=1$

$n\rightarrow\infty$ のとき $x_n$ は 0 に収束するので

$\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}\cfrac{\sin x_n}{x_n}=1$

となります。

よって

$\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}\cfrac{\sin x_n}{x_n}+\cfrac{1}{9}{x_n}^2=1$ (答え)