人間も耐用年数で測られる未来 AIに駆逐されるのではなくそれを活用する

近年、AIが人間の仕事を奪うかもしれないというテーマを扱った文章を頻繁に見かけるようになりました。今回取り上げる英文では、いずれ機械と人間が競合する世界において、機械に耐用年数があるように人間の耐用年数も計算され、比較される時代が来ることが示唆されています。

”あなたは人間を必要としている理由を厳密に正当化し、そしておそらくその人間の労働者の耐用年数がどのくらいかを示した会社の所定の一覧表を使用することさえ求められるだろう。(中略)そしておそらく、ある機械がいつ時代遅れになるかを予測するのに耐用年数の見込みが使われるのと同じ方法で、あなたの契約はそのアルゴリズムによって決定されるだろう。あなたの耐用年数が終わるとき、あなたは会社を解雇され、再び機械と競争しなければならない新しい仕事を見つけるために旅立つことになる。”

20世紀初頭に企業は人間を耐用年数で測り始めた

おそらくAT&Tは機械の耐用年数のデータを集めた初めての企業である。

会社が必要とされる様々な機器を購入するとき、支払う金額に対してそれがどのくらいの耐用年数を持つのかは重要な問題です。機器を購入するかどうかは、支払う金額とそれを耐用年数まで使用した場合にどれだけの利益を得られるかとの関係で決定されます。

機器の耐用年数は通常、統計的に求められます。つまり、「その機器がおよそ何年で壊れて使えなくなるか」についてのデータを集める必要があるのです。アメリカの電話会社AT&Tは20世紀初頭にこうしたデータを集め始めた最初の大企業であったと考えられています。耐用年数という言葉もこの頃に誕生したのです。

また、同時にこのアイデアは会社の労働者にも当てはめられることになりました。その社員が一体何年勤めることになるかの見当がつけば、給与や退職金の合理的な計算が可能になります。

機械が人間の労働をより高いレベルで置き換えるようになると、いずれ人間の耐用年数は機械のそれと比べられるようになるでしょう。もはや終身雇用が当然ではなくなった時代では、企業は人間の耐用年数の見込みを立て、そこから得られる利益と支払うべき費用を計算するようになります。企業はそのとき同様の計算を機械についても行い、人間の方が機械よりも利益率が高いことが証明されない限り、人間を雇うことはなくなるだろうと予想されています。

雇われにくくもなるが自立もしやすくなる

AIが人間の労働を置き換える未来は、雇用される側にとってみれば危機的な状況かもしれません。

その一方で、機械が人間に置き換われば、人的資源に依存せずに新たな企業を作ることも容易になっていくでしょう。AIはこれまで大企業があらゆる要素を複雑に構成することで優位に立ってきた物やサービスの生産を、より小規模な企業で実現する方法を提供する可能性があります。その未来はかなり先のことでしょうが、大企業はいずれ大量の人間を必要としなくなり、また労働者も大企業に頼らずとも自分たちの必要とする高度なレベルの物やサービスをAIによって手に入れる時代が来るでしょう。その点で言えば、人間はAIに駆逐されるというより、AIを活用する側に回ることで生き残る可能性が高いのです。