【数III微分積分】関数の絶対値の積分(北海道大2017)
関数 $f(x)=1+\sin x-x\cos x$ について,以下の問いに答えよ。(北海道大2017)
(1) $f(x)$ の $0\leqq x\leqq 2\pi$ における増減を調べ,最大値と最小値を求めよ。
(2) $f(x)$ の不定積分を求めよ。
(3) 次の定積分の値を求めよ。
$\displaystyle\int_0^{2\pi}|f(x)|dx$
増減表を作る
(1)から始めます。
ここは,素直に微分して増減表を作っていきましょう。$x\cos x$ の部分は積の微分の公式を使います。
積の微分$\{f(x)g(x)\}’=f'(x)g(x)+f(x)g'(x)$
$f'(x)=\cos x-\{x’\cos x+x(\cos x)’\}$
$=\cos x-\cos+x\sin x$
$=x\sin x$
$x\sin x=0$ のとき
$x=0$ または $\sin x=0$
$\sin x=0$ のとき,$0\leqq x\leqq 2\pi$ に注意して
$x=0,\pi,2\pi$
増減表は
$\def\arraystretch{1.25}\begin{array}{|c||c|c|c|c|c|}\hline x&0&\cdots&\pi&\cdots&2\pi\\\hline f'(x)&0&+&0&-&0\\\hline f(x)&1&\nearrow&1+\pi&\searrow&1-2\pi\\\hline\end{array}$
$f(0)=1+\sin0-0\cos0=1$
$f(\pi)=1+\sin\pi-\pi\cos\pi$
$=1+0+\pi=1+\pi$
$f(2\pi)=1+\sin2\pi-2\pi\cos2\pi$
$=1+0-2\pi\cdot1=1-2\pi$
(答え)
三角関数の不定積分
(2)に進みます。
今度は積分ですが,$x\cos x$ の部分は部分積分を用います。
部分積分法
$\displaystyle \int f(x)g'(x)dx=f(x)g(x)-\int f'(x)g(x)dx$
$x\cos x$ の部分について積分してみましょう。
$\displaystyle\int x\cos x\enspace dx$
$\displaystyle=\int x(\sin x)’dx$
$\displaystyle=x\sin x-\int x’\sin x\enspace dx$
$\displaystyle=x\sin x-\int\sin x\enspace dx$
$=x\sin x-(-\cos x)$
$=x\sin x+\cos x$
となります。したがって
$F(x)=x-\cos x-x\sin x-\cos x+C$
$=x-x\sin x-2\cos x+C$
($C$は積分定数) (答え)
未知の解を求める
(3)に進みます。
(1)で求めた増減表から,$y=f(x)$ と $y=|f(x)|$ のグラフはこうなります。
実際に試験問題を解いているときは,グラフの形はざっくりしたもので大丈夫です。
気を付けるべき点は,関数が絶対値のとき,$x$ 軸の下の部分をひっくり返すことです。
こうして,実際にグラフを描いてみると積分区間を 2 つに分ける必要があることが分かります。上のグラフでは区間を分ける点をとりあえず $t$ としています。実際に $t$ を求めてみましょう。
$f(t)=1+\sin t-t\cos t=0$ とおく
先ほどのグラフで考えると $t$ の範囲は,$\pi<t<2\pi$ です。この範囲では,$\sin t$ はマイナスで,$\cos t$ はプラスとマイナスの両方があります。
この方程式は結局,式変形によって解くことができません。しかし,$\pi<t<2\pi$ の範囲でいろいろ数を当てはめてみると $t=\cfrac{3}{2}\pi$ のとき,たまたま式が 0 になることを発見できます。
$f\Big(\cfrac{3}{2}\pi\Big)=1+(-1)-\cfrac{3}{2}\pi\cdot0=0$
よって
$t=\cfrac{3}{2}\pi$
おそらくここで出題者が要求していることは,偶然成り立つに過ぎない法則を発見する能力です。
一見するとただの意地悪問題のように思えるかもしれません。しかし,出題者の意図はそれではないと思います。
私たちが何かの問題に取り組むとき,既に分かっている法則だけを利用する限り,その組み合わせによって得られる解のパターンは有限です。しかし,現実の世界ではその有限のパターンの外側に解が存在することがあり得るのです。ノーベル賞を受賞するような科学的発見も,そうした偶然の中から発見されることも多いのです。
$t=\cfrac{3}{2}\pi$ がたまたま発見された結果に過ぎないとしても,方程式が成り立つ限り,それは科学的思考として正当なものであると言えるのです。
(2)の結果を利用して
$\displaystyle S=\int_0^{\large{\frac{3}{2}\pi}}f(x)dx-\int_{\large{\frac{3}{2}\pi}}^{2\pi}f(x)dx$
$\displaystyle=\Big[x-x\sin x-2\cos x\Big]_0^{\large{\frac{3}{2}\pi}}-\big[x-x\sin x-2\cos x\Big]_{\large{\frac{3}{2}\pi}}^{2\pi}$
$=\cfrac{3}{2}\pi-\cfrac{3}{2}\pi(-1)-2\cdot0-0+0\cdot0+2\cdot1-\Big\{2\pi-2\pi\cdot0-2\cdot1-\Big(\cfrac{3}{2}\pi-\cfrac{3}{2}\pi(-1)-2\cdot0\Big)\Big\}$
$=\cfrac{3}{2}\pi+\cfrac{3}{2}\pi+2-2\pi+2+\cfrac{3}{2}\pi+\cfrac{3}{2}\pi$
$=6\pi+4-2\pi$
$=4+4\pi$ (答え)
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