【数III不定積分】置換積分法の公式が成り立つまで(合成関数の微分から考える)
普通に微分する場合
話を具体的にするために,$y=x(2x+1)$・・・(A) という関数を考えてみます。ここで $t=2x+1$ とすると
$t=2x+1$ ⇔ $x=\cfrac{t-1}{2}$
となるので,(A)は
$y=\cfrac{t-1}{2}\cdot t=\cfrac{t^2}{2}-\cfrac{t}{2}$ ・・・(B)
と表すこともできます。
ここで (A)を $x$ で微分してみましょう。
$y=x(2x+1)=2x^2+x$
$\cfrac{dy}{dx}=4x+1$ ・・・①
微分の反対が積分だから,この式を積分すれば $2x^2+x$ に戻ることになります(積分定数は省略)。
合成関数の微分はつじつま合わせ
次に $y=\cfrac{t^2}{2}-\cfrac{t}{2}$・・・(B)を微分してみましょう。
注意すべきは $t$ は $t=2x+1$ であり,関数であることです。ある関数の中にさらに別の関数が入っているものを合成関数と言います。
微分の結果が一致しなかったのは,(A)は $x$ で微分したのに,(B)は $t$ で微分したからです。微分する文字が異なれば結果も異なります。普段,微分するときには何となく数IIで習った公式をあてはめてしまいがちですが,本来 $x$ にあてはめるべき公式を別な文字にあてはめて計算すれば結果が異なるのは当然です。
とはいえ,(B)は $x$ の式ではないので,それでは微分できないことになってしまいます。そこで,本来なら微分できない式もつじつま合わせをすることで微分できるようになります。
$\cfrac{dy}{dt}=\cfrac{dy}{dx}\cdot\cfrac{dx}{dt}$
これは約分のような操作で $\cfrac{dy}{\cancel{dx}}\cdot\cfrac{\cancel{dx}}{dt}$ とすると左辺とイコールになるという仕組みです。
①より $\cfrac{dy}{dx}=4x+1$
また,$t=2x+1$ ⇔ $x=\cfrac{t-1}{2}$ より
$\cfrac{dy}{dx}=4\cdot\cfrac{t-1}{2}+1=2t-1$
また,$x=\cfrac{t-1}{2}$ より
$\cfrac{dx}{dt}=\cfrac{1}{2}$
よって
$\cfrac{dy}{dt}=\cfrac{dy}{dx}\cdot\cfrac{dx}{dt}=(2t-1)\cdot\cfrac{1}{2}$ ・・・②
これで微分ができました。
理屈から言って,これを積分すれば最初の式 $y=x(2x+1)$ に戻るはず。
$\displaystyle\int (2t-1)\cdot\cfrac{1}{2}\space dt=\cfrac{t^2}{2}-\cfrac{t}{2}$ (積分定数は省略)
$=\cfrac{t}{2}(t-1)$
$t=2x+1$ だから
$=\cfrac{1}{2}(2x+1)(2x+1-1)$
$=x(2x+1)$
置換積分の公式
$\displaystyle\int 4x+1\space dx=\int (2t-1)\cdot\cfrac{1}{2}\space dt$ ・・・③
これを $f(x)=4x+1$,$g(x)=\cfrac{t-1}{2}$ とすれば,教科書の公式
$\displaystyle\int f(x)\space dx=\int f(g(t))g'(t)\space dt$
ができあがります。
$\displaystyle \int (2t-1)\cdot\cfrac{1}{2}\space dt$
$\displaystyle=\int (4x+2-1)\cdot\cfrac{1}{2}\cdot2\space dx$
$\displaystyle=\int 4x+1\space dx$
$dt=2\space dx$ の部分が上で説明したつじつま合わせの部分です。直感的に分かりにくい部分ですが,式のイコール関係がちゃんと成り立っていることを確認しましょう。
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