【数III】2 つの放物線に接する3本の直線を求める(千葉大2020第7問)

$a$ は $0$ でない定数とする。2 つの放物線 $y=x^2$ と $x=\cfrac{1}{2a}y^2+\cfrac{3a}{4}$ の両方に接する直線がちょうど 3 本となるような $a$ の範囲を求めよ。

共通接線が 3 本できることあるんですか?
今回の放物線を実際描いてみるとこんな感じで,3 本引ける。


方針として,まず放物線の接線の式をつくり,その直線がもう一つの放物線と接する条件を考えます。そして,それに当てはまる点が放物線上に 3 か所できる $a$ の条件を求めればできあがりです。

式が作れそうな感じがしませんが。
放物線の式がやっかいだから工夫がいる。

まず,$x=\cfrac{1}{2a}y^2+\cfrac{3a}{4}$ から接線の式をつくっていきます。

$y=x^2$ からじゃないんだ。
あとで分かるけど,こっちのやっかいな方から接線とばした方が計算が整理しやすい。

接線の傾きを求めるために $x=\cfrac{1}{2a}y^2+\cfrac{3a}{4}$ を $x$ で微分します。

$y=x^2$ ・・・①
$x=\cfrac{1}{2a}y^2+\cfrac{3a}{4}$ ・・・②

①を $x$ で微分すると

$y’=2x$ ・・・③

②を $x$ で微分すると

ここでやるのが合成関数の微分。理屈抜きで言うと,$x$ は普通に微分して,$y$ は微分して $y’$ をくっつけておけばオッケー。

$1=\cfrac{1}{2a}\cdot2yy’$
$y’=\cfrac{a}{y}$ ・・・④

ここで,②の放物線上の点を$(X,Y)$とすると

$X=\cfrac{1}{2a}Y^2+\cfrac{3a}{4}$ ・・・⑤
$Y’=\cfrac{a}{Y}$ ・・・⑥

通常なら,こういったタイプの問題は $x$ 座標を $t$ とおいて考えていきます。しかし,今回は放物線の式が $y=$ ~ ではなく,$x=$ ~ の形になっているので $y$ 座標のほうを $Y$ とおいて考えていくとうまくいきます。

よって,⑤,⑥より接線の式は

$y=Y'(x-X)+Y$

これが $y=x^2$ と接するので

$Y'(x-X)+Y=x^2$
$x^2-Y'(x-X)-Y=0$
$x^2-Y’x+XY’-Y=0$

直線と放物線は 1 点で接するので判別式 $D=0$ が成り立つ。
$D$ > $0$ なら異なる 2 点で交わる。$D=0$ なら 1 点で接する。$D$ < 0 なら交わらない,だった。

$D=Y’^2-4(XY’-Y)=0$
$Y’^2-4XY’+4Y=0$

ここで,式を $Y$ の式に合わせていきます。

⑤,⑥を代入して

$\cfrac{a^2}{Y^2}-4\cdot\Big(\cfrac{1}{2a}Y^2+\cfrac{3a}{4}\Big)\cdot\cfrac{a}{Y}+4Y=0$
$\cfrac{a^2}{Y^2}-\cfrac{4aY^2}{2aY}-\cfrac{12a^2}{4Y}+4Y=0$
$\cfrac{a^2}{Y^2}-2Y-\cfrac{3a^2}{Y}+4Y=0$

式に $Y^2$ をかけると

$a^2-2Y^3-3a^2Y+4Y^3=0$
$2Y^3-3a^2Y+a^2=0$

次に,式を $Y$ の式とみなして,条件を満たす $Y$ が 3 つ存在する場合を考えます。ここで,思い出すと良いのが定数分離です。

移項して

$-2Y^3+3a^2Y=a^2$ 

グラフの形を求めていくよ。

$f(x)=-2Y^3+3a^2Y$ とすると

$f'(x)=-6Y^2+3a^2$

$-6Y^2+3a^2=0$ のとき

$6Y^2=3a^2$
$Y^2=\cfrac{a^2}{2}$
$Y=\pm\sqrt{\cfrac{a^2}{2}}=\pm\cfrac{a}{\sqrt{2}}$

グラフは $\cfrac{a}{\sqrt{2}}$ と $-\cfrac{a}{\sqrt{2}}$ で極値をとる。

$f\Big(\cfrac{a}{\sqrt{2}}\Big)=-2\Big(\cfrac{a}{\sqrt{2}}\Big)^3+\cfrac{3a^3}{\sqrt{2}}$
$=-\cfrac{a^3}{\sqrt{2}}+\cfrac{3a^3}{\sqrt{2}}=\cfrac{2a^3}{\sqrt{2}}$
$f\Big(-\cfrac{a}{\sqrt{2}}\Big)=-2\Big(-\cfrac{a}{\sqrt{2}}\Big)^3-\cfrac{3a^3}{\sqrt{2}}$
$=\cfrac{a^3}{\sqrt{2}}-\cfrac{3a^3}{\sqrt{2}}=-\cfrac{2a^3}{\sqrt{2}}$

定数分離は,図のようカンジで $a^2$ を動かしてグラフと何か所交わるかを見ていく。それによって $a$ の範囲が分かるという仕組み。色で塗りつぶした部分が 3 点で交わるポイント。
それが接線が 3 本引けるってことになるの?
塗りつぶした範囲では方程式の解が 3 つ存在する,つまり②の放物線における $y$ 座標が 3 つ存在あって,それぞれ①の放物線と接する直線が引けることになる。もし解が 2 つなら,直線は 2 本しか引けない。

最後に見落としてはいけないのは,$a$ はプラスのときとマイナスのときがあるので,分けて考える必要があることです。

(i) $a$ > $0$ のとき

$-\cfrac{2a^3}{\sqrt{2}}$ < $\cfrac{2a^3}{\sqrt{2}}$ だから

$-\cfrac{2a^3}{\sqrt{2}}$ < $a^2$ < $\cfrac{2a^3}{\sqrt{2}}$

不等式を分けて整理するとよい。

$-\cfrac{2a^3}{\sqrt{2}}$ < $a^2$
$-\cfrac{a^3}{a^2}$ < $\cfrac{\sqrt{2}}{2}$
$a$ > $-\cfrac{\sqrt{2}}{2}$

また

$a^2$ < $\cfrac{2a^3}{\sqrt{2}}$
$\cfrac{\sqrt{2}}{2}$ < $\cfrac{a^3}{a^2}$
$\cfrac{\sqrt{2}}{2}$ < $a$

まとめると $\cfrac{\sqrt{2}}{2}$ < $a$

(ii) $a$ < 0 のとき

$\cfrac{2a^3}{\sqrt{2}}$ < $-\cfrac{2a^3}{\sqrt{2}}$ だから

$\cfrac{2a^3}{\sqrt{2}}$ < $a^2$ < $-\cfrac{2a^3}{\sqrt{2}}$

不等式を分けると

$\cfrac{2a^3}{\sqrt{2}}$ < $a^2$
$\cfrac{a^3}{a^2}$ < $\cfrac{\sqrt{2}}{2}$
$a$ < $\cfrac{\sqrt{2}}{2}$

また

$a^2$ < $-\cfrac{2a^3}{\sqrt{2}}$
$\cfrac{\sqrt{2}}{2}$ < $-\cfrac{a^3}{a^2}$
$-\cfrac{\sqrt{2}}{2}$ > $a$

まとめると $a$ < $-\cfrac{\sqrt{2}}{2}$

したがって $a$ < $-\cfrac{\sqrt{2}}{2}$,$\cfrac{\sqrt{2}}{2}$ < $a$ (答え)