【数III複素数平面】外接円の中心の存在範囲を求める(北海道大2017)

複素数平面上に 3 点 O,A,B を頂点とする △OAB がある。ただし,O は原点とする。△OAB の外心を P とする。3 点 A,B,P が表す複素数を,それぞれ $\alpha$,$\beta$,$\gamma$ とするとき,
$\alpha\beta=z$
が成り立つとする。(北海道大2017)

(1) 複素数 $\alpha$ の満たすべき条件を求め,点 A ($\alpha$) が描く図形を複素数平面上に図示せよ。

(2) 点 P ($z$) の存在範囲を求め,複素数平面上に図示せよ。

複素数が垂直二等分線になる

(1)から考えていきます。

まずは,ざっくり図を描くべし。


外接円うまく描けない。
分かる。中心がどこにくるか迷うでしょ?


ある三角形があったとして,その外接円の中心はどこにあるのでしょうか。それは外接円の性質を考えれば分かるはずです。

垂直二等分線でしたっけ?
それそれ。
三角形の辺の垂直二等分線を引いて,その交点が外接円の中心。
なるほど。

外接円を描いてみると,円の半径より OP = BP となることが分かります。よって

$|z|=|z-\beta|$

$z=\alpha\beta$ より

$|\alpha\beta|=|\alpha\beta-\beta|$
$|\alpha|\cdot|\beta|=|\beta|\cdot|\alpha-1|$
$|\alpha|=|\alpha-1|$

つまり

$|\alpha-0|=|\alpha-1|$

この形は垂直二等分線でした。

したがって,$\text{A}(\alpha)$ が描く図形は,点 0,1 を結ぶ垂直二等分線。(答え)

計算は分かるけど,なんで A の位置が垂直二等分線上になるのか分からない。
確かに直感的には分かりにくいよね。

点 A,B をどの位置に置いたとしても外接円を作ることはできます。しかし,$\alpha\beta=z$ の関係から B,Z の位置が決まると A の位置もある 1 点に決まることが分かります。

問題文を読んだとき,普通ならば A,B の位置を決めて,それをもとに P の位置を決めるという順番で考えるはずです。

しかし,ここでは A の位置を問われているので,順番を入れ替えて B,P の位置から A の位置を求めるという計算を行っているのです。

ここで問われていることは発想の転換です。

円の中心の存在範囲を求める

(2)に進みます。

(1)で考察したことをもとにすると,今度は A,B の位置が決まれば,P の位置が 1 点に決まるはずです。

そして,さらに考えると,A,P の位置が決まれば,B の位置が 1 点に決まることになります。

A,B から P を決めると言っても,B はどこでも良いわけじゃない。だから,まず B の位置を決める。

OP = AP より
$|z|=|z-\alpha|$
$|\alpha\beta|=|\alpha\beta-\alpha|$
$|\alpha|\cdot|\beta|=|\alpha|\cdot|\beta-1|$
$|\beta|=|\beta-1|$

つまり,点 A と同様に点 B も点 0,1 を結ぶ垂直二等分線上です。

A,B の位置は分かりましたが,このままでは計算が進みません。このようなとき,$z$ を具体的に $z=x+yi$ とし,いったん複素数として表してみるとよいでしょう。

同様に,$\alpha$,$\beta$ も
$\alpha=\cfrac{1}{2}+si$
$\beta=\cfrac{1}{2}+ti$
としておきます。

文字多い。
文字が増えると不安になるかもね。ゴール地点を考えて。ここでは $z$ について求めるんだから,$x$ と $y$ だけで表される式ができればよい。つまり $s$,$t$ を消去していく方向で考える。

文字が増えると不安になるものです。しかし,ゴール地点を見極めて,不要な文字が最終的に消去できるのであれば,実際のところ文字をどう定めても問題ではないのです。

ここから
$z=\alpha\beta$
$=\Big(\cfrac{1}{2}+si\Big)\Big(\cfrac{1}{2}+ti\Big)$
$=\cfrac{1}{4}+\cfrac{1}{2}(s+t)i-st$

実部と虚部で整理して

$=\cfrac{1}{4}-st+\cfrac{1}{2}(s+t)i$

よって

$x+yi=\cfrac{1}{4}-st+\cfrac{1}{2}(s+t)i$

左右を比べると

$x=\cfrac{1}{4}-st$ ・・・①
$y=\cfrac{1}{2}(s+t)$ ・・・②

①より
$st=-x+\cfrac{1}{4}$

②より
$s+t=2y$

このように和と積が出来上がったら,解と係数の関係を思い出しましょう。

解と係数の関係
二次方程式の解が $\alpha$,$\beta$ のとき
$(x-\alpha)(x-\beta)=0$
$x^2-(\alpha+\beta)x+\alpha\beta=0$

解と係数の関係より
$X^2-2yX-x+\cfrac{1}{4}=0$

この二次関数に意味はありません。単に,$s$,$t$ を解に持つ二次関数というだけです。しかし,ここから $x$,$y$ の関係式を作ることができます。

$\cfrac{D}{4}=y^2-\Big(-x+\cfrac{1}{4}\Big)\geqq0$

意味のない式作るとか納得いかないです。
高校数学に入るとこういう話結構出てくる。一見,科学的でないように思うかもしれないけど,「意味はないけどたまたま成り立つ法則」ってのが,他のことで役に立つことがあるってのをここで理解して。法則が成立していることをもとに,それを利用することは,ちゃんと科学的思考になっているのよ。


点 A,B が存在するとき,$s$,$t$ はある実数として存在することになります。したがって,二次関数は異なる二つの実数解を持つはずです。

式を変形して
$x\geqq-y^2+\cfrac{1}{4}$

これで,求める $x$,$y$ の関係式が出来上がりました。

$y^2\geqq-x+\cfrac{1}{4}$ ってしたらダメですか?
数IIIで放物線やって $y^2=4px$ 習ったよね。確かにそっちで考えてもいいのだけど,今回の式だとむしろややこしくなるかも。

$x=-y^2+\cfrac{1}{4}$ は,$y=-x^2+\cfrac{1}{4}$ の $x$ と $y$ を入れ替えた式だと考えることができます。つまり逆関数です。

逆関数は,$x=y$ の直線において対称の関係にあるので,それぞれの点を対称移動させていくと,次のようなグラフになります。


したがって,P($z$) の存在範囲は