【数III微分】平均値の定理を用いた不等式の証明の仕組み
平均値の定理の仕組み
まず,関数 $y=f(x)$ という何らかの関数があったとします。これの接線の傾きは $y’=f(x)$ です。
次に $x=a$ のときの $y$ の値を $y=f(a)$ として,点A $(a,f(a))$ とします。同じように $x=b$ のときの $y$ の値を $y=f(b)$ として,点B $(b,f(b))$ とします。
さらに,直線 AB の傾きを求めます。直線の傾きは $\cfrac{y \text{の変化量}}{x \text{の変化量}}$ だから,$\cfrac{y(b)-y(a)}{b-a}$ となります。
$\cfrac{f(b)-f(a)}{b-a}=f'(c)$,$a$ < $c$ < $b$ を満たす実数 $c$ が存在する。
平均値の定理と不等式の証明
[問題] 次の不等式を証明しなさい。
$0$ < $a$ < $b$ のとき,$\cfrac{1}{b}$ < $\cfrac{\log b-\log a}{b-a}$ < $\cfrac{1}{a}$
まず気づかないといけないのは $\cfrac{\log b-\log a}{b-a}$ の部分が $\cfrac{y \text{の変化量}}{x \text{の変化量}}$ になっていることです。$\log a$ と $\log b$ が $y$ の値であるとするならば,$y=\log x$ という関数が考えられます。そこで,いったん $f(x)=\log x$ とします。
グラフをもとに考えてみましょう。関数 $y=\log x$ における接線の傾きは $(\log x)’=\cfrac{1}{x}$ となるので,$x$ の値が $a$,$b$ のときの接線の傾きはそれぞれ $\cfrac{1}{a}$,$\cfrac{1}{b}$ です。
そして点 A と 点 B の間に点 C をおきます。点 C はその接線の傾き $\cfrac{1}{c}$ が直線 AB の傾きと同じになる点とします。平均値の定理より,この点は A,B の間のどこかに必ず作ることができます。
グラフを見ると分かりますが,$\log x$ のグラフでは $x$ の値が大きくなるほど接線の傾きが小さくなります。それぞれ比べると $\cfrac{1}{b}$ < $\cfrac{1}{c}$ < $\cfrac{1}{a}$ の関係になっています。
そして,直線 AB の傾き=点 C の接線の傾き なので,不等式は
$\cfrac{1}{b}$ < $\cfrac{\log b-\log a}{b-a}$ < $\cfrac{1}{a}$
となり証明終了です。
[証明]
$f(x)=\log x$ とすると,$f(x)$ は区間 [$a$,$b$] で連続,区間 ($a$,$b$) で微分可能であり $f'(x)=\cfrac{1}{x}$
区間[$a$,$b$]において,平均値の定理より
$\cfrac{\log b-\log a}{b-a}=\cfrac{1}{c}$ ・・・①
$a$ < $c$ < $b$ ・・・②
を満たす実数 $c$ が存在する。
0 < $a$ < $b$ と②より
$\cfrac{1}{b}$ < $\cfrac{1}{c}$ < $\cfrac{1}{a}$
これに①を代入して
$\cfrac{1}{b}$ < $\cfrac{\log b-\log a}{b-a}$ < $\cfrac{1}{a}$ (証明終わり)
平均値の定理と極限
[問題] $\displaystyle\lim_{x\rightarrow0}\cfrac{e^{2x}-1}{2x}$ を求めよ。
平均値の定理の形に持っていくために式に手を加えましょう。$1=e^0$ とすることができるので,
$\cfrac{e^{2x}-1}{2x}=\cfrac{e^{2x}-e^0}{2x-0}$
と書き換えられます。
次に,不等式を用意しましょう。ただし,不等式は $x$ を正の側から 0 に寄せていく場合と負の側から 0 に寄せていく場合で不等号の関係が逆になるので,場合分けしていきます。また分母が $2x$ なので,$x\not=0$ が前提になります。したがって,場合分けに 0 を含まないように注意しましょう。
[証明]
(i) $x$ > 0 のとき
$f(x)=e^x$ とすると,$f(x)$ は区間 [$0$,$2x$] で連続,区間 ($0$,$2x$) で微分可能であり $f'(x)=e^x$
区間[$0$,$2x$]において,平均値の定理より
$\cfrac{e^{2x}-e^0}{2x-0}=e^c$ ・・・①
$0$ < $c$ < $2x$ ・・・②
を満たす実数 $c$ が存在する。
$f(x)=e^x$ は単調増加するから,②より
$e^0$ < $e^c$ < $e^{2x}$
$e^0$ < $\cfrac{e^{2x}-1}{2x}$ < $e^{2x}$
また
$e^0=1$ (または $\displaystyle\lim_{x\rightarrow+0}e^0=1$ とも書ける)
$\displaystyle\lim_{x\rightarrow+0}e^{2x}=1$
よって,はさみうちの原理より
$\displaystyle\lim_{x\rightarrow+0}\cfrac{e^{2x}-1}{2x}=1$
$\displaystyle\lim_{x\rightarrow+0}e^0$ < $\displaystyle\lim_{x\rightarrow+0}\cfrac{e^{2x}-1}{2x}$ < $\displaystyle\lim_{x\rightarrow+0}e^{2x}$
$1$ < $\displaystyle\lim_{x\rightarrow+0}\cfrac{e^{2x}-1}{2x}$ < $1$
(ii) $x$ < 0 のとき
$f(x)=e^x$ とすると,$f(x)$ は区間 [$2x$,$0$] で連続,区間 ($2x$,$0$) で微分可能であり $f'(x)=e^x$
区間[$0$,$2x$]において,平均値の定理より
$\cfrac{e^0-e^{2x}}{0-2x}=e^c$ ・・・①
$2x$ < $c$ < $0$ ・・・②
を満たす実数 $c$ が存在する。
$f(x)=e^x$ は単調増加するから,②より
$e^{2x}$ < $e^c$ < $e^0$
$e^{2x}$ < $\cfrac{e^{2x}-1}{2x}$ < $e^0$
また
$e^0=1$
$\displaystyle\lim_{x\rightarrow-0}e^{2x}=1$
よって,はさみうちの原理より
$\displaystyle\lim_{x\rightarrow-0}\cfrac{e^{2x}-1}{2x}=1$
したがって,(i),(ii)より
$\displaystyle\lim_{x\rightarrow0}\cfrac{e^{2x}-1}{2x}=1$ (答え)
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