【数III極限・微積分】微分とはさみうちの原理

$0$ < $t$ < $\cfrac{\pi}{2}$ のとき,曲線 $y=\cfrac{1}{\cos^2 x}\Big(0$ ≦ $x$ ≦ $\cfrac{\pi}{2}\Big)$,$x$ 軸,$y$ 軸および直線 $x=t$ で囲まれた図形を $y$ 軸のまわりに 1 回転してできる立体の体積を $V(t)$ とする。以下の問いに答えよ。(熊本大)

(問1) $0$ < $a$ < $b$ < $\cfrac{\pi}{2}$ のとき,
$\pi(b^2-a^2)\cfrac{1}{\cos^2 a}$ ≦ $V(b)-V(a)$ ≦ $\pi(b^2-a^2)\cfrac{1}{\cos^2 b}$
(問2) (問1)の不等式を用いて,$\cfrac{d}{dt}V(t)=2\pi t\cfrac{1}{\cos^2 t}$ を示せ。
(問3) $V\Big(\cfrac{\pi}{3}\Big)$ を求めよ。

回転体の問題だね。$y$ 軸中心の円柱だから円の半径は $x$ になる。円の面積を積み上げていけば体積になるよね。
$\int \pi x^2 dx$ か。
でも,問題文の式を変形しても $x=$ナントカ~みたいな式にすることできないでしょ?
解けないです。
そこで,はさみうちの原理を使って体積求めてみるってのが今回の話。

不等式の証明

はさみうちの原理使うときって,基本的に不等式の証明からはさみうちの原理に持ち込んでいく。$a$ < $b$ < $c$ の不等式があって,$a$ と $c$ の極限値が一致したら $b$ の極限値もそれと同じ,っていう考え方だった。

次のグラフを描きます。

不等式の $V(b)-V(a)$ はグラフの色を塗った部分を $y$ 軸のまわりに 1 回転してできる立体の体積です。

真ん中に穴があいたドーナツ状の形になるよね。

不等式をつくるためには,色を塗った部分の面積よりも小さな部分と大きな部分を考えると良いでしょう。そうすると

四角形 ABED < 色を塗った部分 < 四角形 ABHG

という関係が見えてきます。

四角形 ABED を $y$ 軸のまわりに 1 回転すると円柱の真ん中に穴があいた立体ができます。

この体積は,半径 $b$ の円柱から半径 $a$ の円柱をひけば求められそうです。高さは $\cfrac{1}{\cos^2 a}$ です。

円柱の体積は(円の面積×高さ)だよね。

四角形ABEDを $y$ 軸のまわりに 1 回転してできる立体の体積は
$\pi b^2\cfrac{1}{\cos^2 a}-\pi a^2\cfrac{1}{\cos^2 a}$
$=\pi(b^2-a^2)\cfrac{1}{\cos^2 a}$

問題文の形になりましたね。
同じように不等式の右側も作る。

また,四角形 ABHG を $y$ 軸のまわりに 1 回転してできる立体の体積は
$\pi b^2\cfrac{1}{\cos^2 b}-\pi a^2\cfrac{1}{\cos^2 b}$
$=\pi(b^2-a^2)\cfrac{1}{\cos^2 b}$
したがって
$\pi(b^2-a^2)\cfrac{1}{\cos^2 a}$ ≦ $V(b)-V(a)$ ≦ $\pi(b^2-a^2)\cfrac{1}{\cos^2 b}$ (証明終わり)

はさみうちの原理に持ち込む

次に $\cfrac{d}{dt}V(t)=2\pi t\cfrac{1}{\cos^2 t}$ を考えます。
$\cfrac{d}{dt}V(t)$ というのは体積の式を $t$ で微分するということです。

体積の式分からないですよ。
微分は普通に公式使って求める方法と,$\displaystyle\lim_{h\rightarrow0}\cfrac{f(x+h)-f(x)}{h}$ を使って求める方法があった。今回の問題は,不等式→はさみうちの原理という流れが予測できるから,どうせ極限使うじゃない?ということは極限使うほうで考えると良さそうだよね。

$a=t$,$b=t+h$ とすると
$\displaystyle\cfrac{d}{dt}V(t)=\lim_{h\rightarrow0}\cfrac{V(t+h)-V(t)}{h}$
と表すことができる。(問1)の不等式を $h$ で割ると
$\pi(b^2-a^2)\cfrac{1}{\cos^2 a}$ ≦ $V(b)-V(a)$ ≦ $\pi(b^2-a^2)\cfrac{1}{\cos^2 b}$
$\pi(b^2-a^2)\cfrac{1}{h\cos^2 a}$ ≦ $\cfrac{V(b)-V(a)}{h}$ ≦ $\pi(b^2-a^2)\cfrac{1}{h\cos^2 b}$
$a=t$,$b=t+h$ を代入して
$\cfrac{\pi\{(t+h)^2-t^2\}}{h\cos^2 t}$ ≦ $\cfrac{V(t+h)-V(t)}{h}$ ≦ $\cfrac{\pi\{(t+h)^2-t^2\}}{h\cos^2 (t+h)}$

はさみうちやるから極限求める。

ここで
$\displaystyle\lim_{h\rightarrow0}\cfrac{\pi\{(t+h)^2-t^2\}}{h\cos^2 t}$
$=\displaystyle\lim_{h\rightarrow0}\cfrac{\pi(t^2+2ht+h^2-t^2)}{h\cos^2 t}$
$=\displaystyle\lim_{h\rightarrow0}\cfrac{\pi(2ht+h^2)}{h\cos^2 t}$
$=\displaystyle\lim_{h\rightarrow0}\cfrac{\pi(2t+h)}{\cos^2 t}$
$=\cfrac{2\pi t}{\cos^2 t}$
また
$\displaystyle\lim_{h\rightarrow0}\cfrac{\pi\{(t+h)^2-t^2\}}{h\cos^2 (t+h)}$
$=\displaystyle\lim_{h\rightarrow0}\cfrac{\pi(t^2+2ht+h^2-t^2)}{h\cos^2 (t+h)}$
$=\displaystyle\lim_{h\rightarrow0}\cfrac{\pi(2ht+h^2)}{h\cos^2 (t+h)}$
$=\displaystyle\lim_{h\rightarrow0}\cfrac{\pi(2t+h)}{\cos^2 (t+h)}$
$=\cfrac{2\pi t}{\cos^2 t}$
したがって,はさみうちの原理より
$\cfrac{d}{dt}V(t)=2\pi t\cfrac{1}{\cos^2 t}$ (証明終わり)

部分積分を用いて体積を求める

体積を微分した式が求められたので,これを積分すればもとの体積の式が作れそうです。
$\cfrac{d}{dt}V(t)=2\pi t\cfrac{1}{\cos^2 t}$ より
$\displaystyle V\Big(\cfrac{\pi}{3}\Big)=\int_0^{\small{\frac{\pi}{3}}} 2\pi t\cfrac{1}{\cos^2 t} \space dt$
式はかけ算の形になっているので,部分積分を使って積分していきます。
公式 $(\tan x)’=\cfrac{1}{\cos^2 t}$ より
$\displaystyle=\int_0^{\small{\frac{\pi}{3}}} 2\pi t(\tan t)’ \space dt$
$\displaystyle=\Big[2\pi t\tan t\Big]_0^{\small{\frac{\pi}{3}}}-\int_0^{\small{\frac{\pi}{3}}} 2\pi\tan t \space dt$
$\displaystyle=2\pi\Big[t\tan t\Big]_0^{\small{\frac{\pi}{3}}}-2\pi\int_0^{\small{\frac{\pi}{3}}} \cfrac{\sin t}{\cos t} \space dt$
ここで公式 $(\log x)’=\cfrac{1}{x}$ と,合成関数の微分より
$\{\log|\cos x|\}’=\cfrac{1}{\cos x}\cdot(\cos x)’$
$=-\cfrac{\sin x}{\cos x}$
となる。

$\tan$ の積分のやり方はパターンとして覚えておくべき。あと今回は問題文で $0$ < $t$ < $\cfrac{\pi}{2}$ ってなってて,$\cos$ がマイナスになることはないから絶対値はつけなくて大丈夫。

よって与式は
$\displaystyle=\Big[2\pi t\tan t\Big]_0^{\small{\frac{\pi}{3}}}+2\pi\Big[\log\cos t \space\Big]_0^{\small{\frac{\pi}{3}}}$
$=2\pi\cdot\cfrac{\pi}{3}\cdot\tan\cfrac{\pi}{3}+2\pi\log\cos\cfrac{\pi}{3}-2\pi\log\cos0$
$=2\pi\cdot\cfrac{\pi}{3}\cdot\sqrt{3}+2\pi\log\cfrac{1}{2}-2\pi\log 1$
$\log 1=0$ に注意して
$=\cfrac{2\sqrt{3}}{3}\pi^2+2\pi(\log 1-\log 2)$
$=\cfrac{2\sqrt{3}}{3}\pi^2-2\pi\log 2$
$=2\pi\Big(\cfrac{\sqrt{3}}{3}\pi-\log 2\Big)$ (答え)