【数Ⅱ指数対数】なぜ対数というものがあるのか?(2) 放射性同位体による年代測定で考古学者気分を楽しむ
前回に引き続き、対数を実用的に使う話をしましょう。
遺跡などから出土した土器など過去の遺物がどのくらい前に作られたものなのかを測定するのに放射年代測定という方法があります。これは炭素の同位体である炭素14を使うものです。
炭素14というのは普通の炭素より中性子が2個多い原子ということなのですが、ベータ線を放出しながら約5730年で割合が半分になる性質があります。炭素14は地球上の炭素の中にほんのわずかな割合で含まれています。
炭素は有機物を構成する大事な元素で、生き物は常に炭素を取り入れて体外に排出しています。従って、その生き物が生きている間は炭素14の割合は変化しません。しかし、その生き物が死ぬと新しい炭素が取り入れられなくなるので、時間とともに炭素14の割合が減っていくことになります。
半減期を基に割合を求める式
割合を $x$、年数を$t$ とすると
$\displaystyle x=\left(\frac{1}{2}\right)^\frac{t}{5730}$
となります。やっかいそうに見える式ですが、実際に $t$ に $5730$ を代入すると
$\displaystyle x=\left(\frac{1}{2}\right)^\frac{5730}{5730}=\frac{1}{2}$
となり、$11460$ を代入すると
$\displaystyle x=\left(\frac{1}{2}\right)^\frac{11460}{5730}=\left(\frac{1}{2}\right)^2=\frac{1}{4}$
となります。半減期5730年ごとに割合が半分になっていくイメージがつかめたでしょうか?
割合から年数を求める式を作る
しかし、今回私たちがやりたいことは割合を使って年代を測定することです。つまり $x$ ではなく $t$ を求める式が必要なのです。そこで、さきほどの式を変形していきましょう。計算は有効数字4ケタの考えで進めていきます。
$\displaystyle x=\left(\frac{1}{2}\right)^\frac{t}{5730}\\\displaystyle\frac{t}{5730}=\log_\frac{1}{2} x\\t=5730\cdot\log_\frac{1}{2}x$
このままでも関数電卓で計算できますが、底を $10$ にして常用対数にしてみましょう。
そこで、底の変換公式を使います。
$\displaystyle t=5730\cdot\log_\frac{1}{2}x$
$\displaystyle=5730\cdot\frac{\log_{10}x}{\log_{10}\frac{1}{2}}$
ここで
$\displaystyle\log_{10}\frac{1}{2}=\log_{10}1-\log_{10}2$
このとき、$\log_{10}1=0$で、また常用対数表より $\log_{10}2=0.3010$ だから
$\log_{10}1-\log_{10}2=0-0.3010=-0.3010$
よって
$\displaystyle t=5730\cdot\frac{\log_{10}x}{-0.3010}\\t=-19040\cdot\log_{10}x$
ところがこのままだと $x$ には $0$ から $1$ の間の数が入るので、常用対数表で調べることができません(常用対数表は$1$ から $10$ 未満の数で調べる)。そこで、式をもうすこし細工します。
$\displaystyle \log_{10}x=\log_{10}\frac{10x}{10}$
$=\log_{10}10x-\log_{10}10$
$=\log_{10}10x-1$
よって
$t=-19040\times(\log_{10}10x-1)$
実際に計算してみる
計算式がうまくいったか、確かめてみましょう。例えば測定した炭素14の割合が $50\%$ なら $x=0.5$ となるので $10x=5$ で常用対数表を調べます。表を見ると $0.6990$ となっているので、式に代入すると
$t=-19040×(0.6990-1)=5731$ となり、ほぼ半減期の年数が出てきました。
では、今度は炭素14の割合が $21\%(0.21)$ だったとしましょう。
表を探してみると、$0.3222$ となっています。式に代入しましょう。
$-19040\times(0.3222-1)=12910$(有効数字4ケタで計算)
年代測定の結果は $12910$ 年になりました。
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