【数IIB三角関数】一つのsinに値に当てはまるθが1個のときと2個のときを判別する(北海道大2020文系第2問)
関数
$f(\theta)=\cfrac{1}{\sqrt{2}}\sin2\theta-\sin\theta+\cos\theta\enspace(0\leqq\theta\leqq\pi)$
を考える。(北海道大2020)
(1) $t=\sin\theta-\cos\theta$ とおく。$f(\theta)$ を $t$ の式で表せ。
(2) $f(\theta)$ の最大値と最小値,およびそのときの $\theta$ の値を求めよ。
(3) $a$ を実数の定数とする。$f(\theta)=a$ となる $\theta$ がちょうど 2 個であるような $a$ の範囲を求めよ。
2倍角の公式を使う
(1)から始めます。
まず,与式の中に $\sin2\theta$ があります。これは 2 倍角です。
公式 $\sin2\theta=2\sin\theta\cos\theta$
よって,$t$ の式を変形して,$2\sin\theta\cos\theta$ の形を作る必要があります。
式を 2 乗してみましょう。
$t=\sin\theta-\cos\theta$
$t^2=\sin^2\theta-2\sin\theta\cos\theta+\cos^2\theta$
$\sin^2\theta+\cos^2\theta=1$ より
$=1-2\sin\theta\cos\theta$
$=1-\sin2\theta$
$\sin2\theta=1-t^2$
よって
$f(\theta)=\cfrac{1}{\sqrt{2}}\sin2\theta-(\sin\theta-\cos\theta)$
$=\cfrac{1}{\sqrt{2}}(1-t^2)-t$
$=-\cfrac{1}{\sqrt{2}}t^2-t+\cfrac{1}{\sqrt{2}}$ (答え)
平方完成して最大・最小を求める
(2)に進みます。
$f(\theta)$ は $t$ の2次関数になったので,平方完成すれば,最大・最小が求められそうです。
$f(\theta)=-\cfrac{1}{\sqrt{2}}t^2-t+\cfrac{1}{\sqrt{2}}$
$=-\cfrac{1}{\sqrt{2}}(t^2+\sqrt{2}t)+\cfrac{1}{\sqrt{2}}$
$=-\cfrac{1}{\sqrt{2}}\Big(t+\cfrac{\sqrt{2}}{2}\Big)^2+\cfrac{1}{2\sqrt{2}}+\cfrac{1}{\sqrt{2}}$
$=-\cfrac{1}{\sqrt{2}}\Big(t+\cfrac{\sqrt{2}}{2}\Big)^2+\cfrac{3}{2\sqrt{2}}$
$=-\cfrac{1}{\sqrt{2}}\Big(t+\cfrac{\sqrt{2}}{2}\Big)^2+\cfrac{3\sqrt{2}}{4}$
よって,$t=-\cfrac{\sqrt{2}}{2}$ で最大値をとる。
$t=-\cfrac{\sqrt{2}}{2}$ とすると
$f(\theta)=-\cfrac{1}{\sqrt{2}}\Big(-\cfrac{\sqrt{2}}{2}+\cfrac{\sqrt{2}}{2}\Big)^2+\cfrac{3\sqrt{2}}{4}$
$=\cfrac{3\sqrt{2}}{4}$
また,このときの $\theta$ の値を求めます。
式が $t=\sin\theta-\cos\theta$ のままでは,$\theta$ の値が分からないので,三角関数の合成を用いると良いでしょう。
三角関数の合成
$a\sin\theta+b\cos\theta=r\sin(\theta+\alpha)$
三角関数の合成より
$t=\sqrt{2}\sin\Big(\theta-\cfrac{\pi}{4}\Big)$
$t=-\cfrac{\sqrt{2}}{2}$ として,$\theta$ を求めます。
$\sqrt{2}\sin\Big(\theta-\cfrac{\pi}{4}\Big)=-\cfrac{\sqrt{2}}{2}$
$\sin\Big(\theta-\cfrac{\pi}{4}\Big)=-\cfrac{1}{2}$
$0\leqq\theta\leqq\pi$ より
$\theta-\cfrac{\pi}{4}=-\cfrac{\pi}{6}$
$\theta=\cfrac{\pi}{6}+\cfrac{\pi}{4}$
$=\cfrac{\pi}{12}$
また,上の図より,最小値は $t=\sqrt{2}$ のときです。
$f(\theta)=-\cfrac{1}{\sqrt{2}}\Big(\sqrt{2}+\cfrac{\sqrt{2}}{2}\Big)^2+\cfrac{3\sqrt{2}}{4}$
$=-\cfrac{1}{\sqrt{2}}\Big(\cfrac{3\sqrt{2}}{2}\Big)^2+\cfrac{3\sqrt{2}}{4}$
$=-\cfrac{\sqrt{2}}{2}\cdot\cfrac{18}{4}+\cfrac{3\sqrt{2}}{4}$
$=\cfrac{-9\sqrt{2}+3\sqrt{2}}{4}$
$=-\cfrac{3\sqrt{2}}{2}$
$t=\sqrt{2}$ として $\theta$ の値を求めます。
$\sqrt{2}=\sqrt{2}\sin\Big(\theta-\cfrac{\pi}{4}\Big)$
$\sin\Big(\theta-\cfrac{\pi}{4}\Big)=1$
$\theta-\cfrac{\pi}{4}=\cfrac{\pi}{2}$
$\theta=\cfrac{3}{4}\pi$
したがって
$\theta=\cfrac{\pi}{12}$ のとき,最大値 $\cfrac{3\sqrt{2}}{4}$
$\theta=\sqrt{2}$ のとき,最小値 $\cfrac{3}{4}\pi$ (答え)
1 個の t の値に当てはまる θ の個数を考える
(3)に進みます。
横軸を $t$ としてグラフを描くと,このようになります。
$a$ を縦方向に平行移動していくと,$a$ の値によって,あてはまる $t$ の値が,1個,2個の場合が出てくるのが分かります。
しかし,今回問われているのは,$t$ ではなく $\theta$ です。
注意しなければならないことは,1 つの $t$ の値にあてはまる $\theta$ は 1 つとは限らないことです。
$t=\sqrt{2}\sin\Big(\theta-\cfrac{\pi}{4}\Big)$ について
$0\leqq\theta\leqq\pi$ より
$-\cfrac{\pi}{4}\leqq\theta\leqq\cfrac{\pi}{4}$ のとき,1 個の $t$ に対して,当てはまる $\theta$ は 1 個。
$\cfrac{\pi}{4}\leqq\theta\leqq\cfrac{3}{4}\pi$ のとき,1 個の $t$ に対して,当てはまる $\theta$ は 2 個。
ただし,$\theta=\cfrac{\pi}{2}-\cfrac{\pi}{4}=\cfrac{\pi}{4}$ のときは,当てはまる $\theta$ は 1 個。
これらの場合における,$t$ の範囲を求めます。
$-\cfrac{\pi}{4}\leqq\theta<\cfrac{\pi}{4}$ のとき
上の単位円から範囲を考えます。
$-\cfrac{1}{\sqrt{2}}\leqq\sin\Big(\theta-\cfrac{\pi}{4}\Big)<\cfrac{1}{\sqrt{2}}$
式を変形して
$-1\leqq\sqrt{2}\sin\Big(\theta-\cfrac{\pi}{4}\Big)<1$
$-1\leqq t<1$
この範囲で $t$ に当てはまる $\theta$ は 1 個です。
$\cfrac{\pi}{4}\leqq\theta\leqq\cfrac{3}{4}\pi$ のとき
$\cfrac{1}{\sqrt{2}}\leqq\sin\Big(\theta-\cfrac{\pi}{4}\Big)\leqq1$
$1\leqq\sqrt{2}\Big(\theta-\cfrac{\pi}{4}\Big)\leqq\sqrt{2}$
$1\leqq t\leqq\sqrt{2}$
この範囲で $t$ に当てはまる $\theta$ は 2 個です。
ただし,$\theta-\cfrac{4}{\pi}=\cfrac{\pi}{2}$ のとき
$t=\sqrt{2}\sin\cfrac{\pi}{2}$
$=\sqrt{2}$
このとき,$t$ に当てはまる $\theta$ は 1 個です。
グラフに値を書き込んできましょう。
$t=-1$ のとき
$f(\theta)=-\cfrac{1}{\sqrt{2}}(-1)^2-(-1)+\cfrac{1}{\sqrt{2}}=1$
$t=-\cfrac{\sqrt{2}}{2}$ のとき
$f(\theta)=-\cfrac{1}{\sqrt{2}}\Big(-\cfrac{\sqrt{2}}{2}\Big)^2-\Big(-\cfrac{\sqrt{2}}{2}\Big)+\cfrac{1}{\sqrt{2}}$
$=-\cfrac{1}{2\sqrt{2}}+\cfrac{\sqrt{2}}{2}+\cfrac{1}{\sqrt{2}}$
$=\cfrac{3}{2\sqrt{2}}$
$t=1$ のとき
$f(\theta)=-\cfrac{1}{\sqrt{2}}\cdot1^2-1+\cfrac{1}{\sqrt{2}}=-1$
$t=\sqrt{2}$ のとき
$f(\theta)=-\cfrac{1}{\sqrt{2}}(\sqrt{2})^2-\sqrt{2}+\cfrac{1}{\sqrt{2}}$
$=-\cfrac{2}{\sqrt{2}}-\sqrt{2}+\cfrac{1}{\sqrt{2}}=-\cfrac{3}{\sqrt{2}}$
これらの値をグラフに値を書き入れていくと
$1\leqq a\leqq\cfrac{3}{2\sqrt{2}}$ の範囲で,当てはまる $t$ が 2 個あり,このとき,1 個の $t$ に当てはまる $\theta$ はそれぞれ 1 個ずつあるので,結局当てはまる $\theta$ は 2 個あることになります。
また,$-\cfrac{3}{\sqrt{2}}< a\leqq-1$ の範囲では,当てはまる $t$ が 1 個あり,$t$ に当てはまる $\theta$ は 2 個あります。
したがって
$-\cfrac{3}{\sqrt{2}}< a\leqq-1$ または $1\leqq a\leqq\cfrac{3}{2\sqrt{2}}$ (答え)
SNSでシェア