極値が 0 をとるとき,方程式が重解をとることを利用する(横浜国立大2020文系第3問)
実数 $a,b$ に対し,関数 $f(x)$ を
$f(x)=-x^3+(a+2)x^2-(3a-b-2)x-3(b-1)$
と定める。$xy$ 平面上で $y=f(x)$ の表す曲線を $C$ とする。次の問いに答えよ。
(1) どのような $a,b$ の値に対しても,$C$ はある定点を通ることを示せ。
(2) $f(x)$ は極値をとるとする。$C$ が $x$ 軸に接するような $(a,b)$ の存在範囲を $ab$ 平面上に図示せよ。
(3) $(a,b)$ が(2)で求めた範囲にあるとき,$f(x)$ の極値を $a$ の式で表せ。
a, b が 0 になる条件を考える
(1)から始めます。
$y=f(x)$ として,$x$ に何らかの値を代入すると $y$ は $a,b$ を含む値になります。これでは $a,b$ の値によって $y$ もさまざまな値をとることになります。
そこから,定点を通るということは,$y$ が $a,b$ を含まない数になれば良い,ということが分かります。
いったん,式の $a,b$ をそれぞれまとめてみましょう。
$f(x)=-x^3+(a+2)x^2-(3a-b-2)x-3(b-1)$
$=-x^3+ax^2+2x^2-3ax+bx+2x-3b+3$
$=-x^3+2x^2+2x+3+a(x^2-3x)+b(x-3)$
$x^2-3x=0$ かつ $x-3=0$ であれば,式から $a,b$ が消えます。
$x^3-3x=0$
$x(x-3)=0$
$x=0,3$
また
$x-3=0$
$x=3$
よって,$x=3$
$f(3)=-27+18+6+3=0$
したがって,$f(x)$ は定点 $(3,0)$ を通る。(答え)
極値が 0 をとるとき,方程式が重解をとることを利用する
(2)に進みます。
$f(x)=-x^3+(a+2)x^2-(3a-b-2)x-3(b-1)$ より
$f'(x)=-3x^2+2(a+2)x-3a+b+2$
$C$ が $x$ に接するということは,極値のうちの一つが $x$ 軸に接するということと同じことです。
$C$ は必ず $(3,0)$ を通るので,まずは $x=3$ で極値をとる場合を考えてみましょう。
(i) $x=3$ で極値をとるとき
$f'(3)=-27+6a+12-3a+b+2=0$
$3a+b-13=0$
$b=-3a+13$ ・・・①
横軸を $a$,縦軸を $b$ とするグラフを描くとすると,これは直線になります。
(ii) $x=3$ 以外で極値をとるとき
グラフを描いてみると分かりますが,$f(x)$ は $x$ 軸と 2 点で交わります。そして,このとき,$f(x)$ の $x=3$ 以外の解は重解をとります。
ここで,$f(x)$ が $x=3$ を解にもつことが分かっているので,いったん因数分解してみましょう。
組立除法を用いて
$f(x)=-x^3+(a+2)x^2-(3a-b-2)x-3(b-1)$
$\begin{matrix}-1&a+2&-3a+b+2&-3b+3&|\underline{3}\\&-3&3a-3&3b-3\\\hline-1&a-1&b-1&0 \end{matrix}$
$(x-3)\{-x^2+(a-1)x+b-1\}=0$
ここで,$\{-x^2+(a-1)x+b-1\}=0$ が重解ともつとすると,判別式 $D=0$ より
$D=(a-1)-2+4(b-1)=0$
$a^2-2a+1-2+4b-4=0$
$a^2-2a+4b-3=0$ ・・・②
$4b=-a^2+2a+3$
$b=-\cfrac{1}{4}(a^2-2a-3)$
$=-\cfrac{1}{4}(a-3)(a+1)$
このグラフは上に凸の曲線で,$x$ 軸と $-1,3$ で交わります。また,平方完成して頂点も求めておきましょう。
$b=-\cfrac{1}{4}(a^2-2a-3)$ より
$=-\cfrac{1}{4}(a^2-2a)+\cfrac{3}{4}$
$=-\cfrac{1}{4}(a-1)^2+\cfrac{1}{4}+\cfrac{3}{4}$
$=-\cfrac{1}{4}(a-1)^2+1$
頂点の座標は $(1,1)$
これで,描くグラフは傾きがマイナスの直線と,上に凸の二次関数のグラフであることが分かりました。ただし,この2つのグラフはどこかで交点を持つかもしれません。そのときには,グラフに交点の座標も書き込む必要があります。
①を②に代入すると
$a^2-2a+4(-3a+13)-3=0$
$a^2-2a-12a+52-3=0$
$a^2-14a+49=0$
$(a-7)^2=0$
$a=7$
①に代入して
$b=-3\cdot7+13$
$=-8$
よって①と②は $(7,-8)$ で接する。
(答え)
極値を求める
(3)に進みます。
三次関数は,重解をもたずに,異なる 3 つの実数解をもつ場合,極値が 2 か所できます。そのうちの一つが極小値で,もう一つが極大値です。よって,ここでは極小値と極大値を求めていきます。
(i) $x=3$ で極値をとるとき
このとき,$(3,0)$ は極小値か極大値のどちらかです。もう一つの極値を求めて,比べてみましょう。
$x=3$ で極値をとるとき $b=-3a+13$ が成り立つので,これを代入して
$f'(x)=-3x^2+2(a+2)x-3a-3a+13+2$
$=-3x^2+2(a+2)x-6a+15$
ここから,もう一つの解を求めます。方法はいくつかありますが,解と係数の関係を用いるのが手っ取り早いです。
$-3x^2+2(a+2)x-6a+15=0$ の解を $3,\beta$ とすると
$3+\beta=\cfrac{2a+4}{3}$
$\beta=\cfrac{2a-5}{3}$
極値を求めると
$f(x)=(x-3)\{-x^2+(a-1)x+b-1\}$
$b=-3a+13$ を代入して
$=(x-3)\{-x^2+(a-1)x+3a+13-1\}$
$=(x-3)\{-x^2+(a-1)x+3a+12\}$
$x=3$ で極値をとるとき,$x=3$ で重解をとります。よって,$-x^2+(a-1)x+3a+12$ は $x-3$ で割り切れるはずです。
$\begin{matrix}-1&a-1&3a+12&|\underline{3}\\&-3&3a-12\\\hline-1&a-4&0\end{matrix}$
$=(x-3)^2(-x+a-4)$
よって
$f\Big(\cfrac{2a-5}{3}\Big)=\Big(\cfrac{2a-5}{3}-3\Big)^2\Big(-\cfrac{2a-5}{3}+a-4\Big)$
$=\Big(\cfrac{2a-14}{3}\Big)^2\cdot\cfrac{a-7}{3}$
$=\cfrac{4}{27}(a-7)^3$
$a$ が 7 より大きいとき $f(x)$ は 0 より大きく,7 より小さいときは $f(x)$ は 0 より小さくなります。
したがって
$a>7$ かつ $b=-3a+13$ のとき,$x=3$ で極小値 $0$,極大値 $\cfrac{4}{27}(a-7)^3$ をとり,$a<7$ かつ $b=-3a+13$ のとき,$x=3$ で極小値 $\cfrac{4}{27}(a-7)^3$,極大値 $0$ をとる。(答え)
ここで,$a=7$ とすると,$f(x)=0$ となります。しかし,3 次関数のグラフを描いてみると分かりますが,極大値と極小値がともに 0 になるというグラフは描けないはずです。この時点で $a=7$ のとき,$f(x)=0$ が三重解をとることに気づけば,(1)の答えを修正できるでしょう。
(ii) $x=3$ 以外で極値をとるとき
$b=-\cfrac{1}{4}(a-1)^2+1$ が成り立つので,これを代入して
$f(x)=(x-3)\{-x^2+(a-1)x+b-1\}$
$=(x-3)\Big\{-x^2+(a-1)x-\cfrac{1}{4}(a-1)^2\Big\}$
$=-(x-3)\Big\{x^2-(a-1)x+\cfrac{1}{4}(a-1)^2\Big\}$
$=-(x-3)\Big(x-\cfrac{a-1}{2}\Big)^2$
よって,$x=3$ 以外に $x=\cfrac{a-1}{2}$ で $x$ 軸に接し,このとき極値をとります。
極値はあともう一つ存在するので,求めていきましょう。
$f'(x)$ に $b=-\cfrac{1}{4}(a-1)^2+1$ を代入して
$f'(x)=-3x^2+2(a+2)x-3a-\cfrac{1}{4}(a-1)^2+3$
$-3x^2+2(a+2)x-3a-\cfrac{1}{4}(a-1)^2+3=0$ とすると
解の一つは $\cfrac{a-1}{2}$ です。もう一つの解を,解と係数の関係を利用して求めます。
$\cfrac{a-1}{2}+\beta=\cfrac{2}{3}(a+2)$
$\beta=\cfrac{2}{3}a+\cfrac{4}{3}-\cfrac{a}{2}+\cfrac{1}{2}$
$=\cfrac{a+11}{6}$
$f(x)$ に代入して
$f\Big(\cfrac{a+11}{6}\Big)=-\Big(\cfrac{a+11}{6}-3\Big)\Big(\cfrac{a+11}{6}-\cfrac{a-1}{2}\Big)^2$
$=-\cfrac{1}{6^3}(a+11-18)(a+11-3a+3)^2$
$=-\cfrac{1}{6^3}(a-7)(-2a+14)^2$
$=-\cfrac{4}{6^3}(a-7)^3$
$=-\cfrac{1}{54}(a-7)^3$
$a>7$ かつ $b=-\cfrac{1}{4}(a-1)^2+1$ のとき,$x=\cfrac{a+11}{6}$ で極小値 $-\cfrac{1}{54}(a-7)^3$,$x=\cfrac{a-1}{2}$ で 極大値 $0$ をとり,$a<7$ かつ $b=-\cfrac{1}{4}(a-1)^2+1$ のとき,$x=\cfrac{a-1}{2}$ で極小値 $0$,$x=\cfrac{a+11}{6}$ で極大値 $0$ をとる。(答え)
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