【数A確率】全事象を利用する問題 すべてを足すと1になる(九州大)

図のような正六角形において、はじめにコインが頂点 $P_0$ にあるとする。サイコロを 1 回投げ、出た目に応じてコインを次の規則に従って動かす。
(i) 1 から 5 までの目が出た場合、出た目の数だけコインを反時計回りに動かす。例えば、コインが $P_4$ にあるときに 4 の目が出た場合は $P_2$ まで動かす。
(ii) 6 の目が出た場合は、$x$ 軸に関して対称な位置にコインを動かす。ただし、コインが $x$ 軸上にあるときは動かさない。例えば、コインが $P_5$ にあるときに 6 の目が出た場合は $P_1$ に動かす。
このとき、$n$ を自然数として、$n$ 回サイコロを投げた後に、コインが $P_0$ の位置にある確率を求めよ。(九州大2016改)


これの解き方はパターンと言えばパターンであっさり終わる。

ルール複雑すぎです。

全事象が 1 であることを利用する

規則が複雑なのでどうしていいか分からなくなるかもしれませんが、こういうときは落ち着いて丁寧に条件を検証していきましょう。

考えることは、「サイコロをふったら次にどこに行くか?」です。

そこで $n$ 回目の一つ前、つまり $n-1$ 回目のときを考えます。

コインが一つ前で $P_0$ にあったとすると、そこから再び $P_0$ になるのはサイコロの目が $6$ のときだけです。コインが $n-1$ 回目で $P_0$ にある確率を $p_0$ とすると、$n$ 回目で $P_0$ にくる確率は $\displaystyle p_0\times\frac{1}{6}$ となります。

次にコインが $P_1\rightarrow P_0$ で移動する場合を考えると、サイコロの目が $5$ のときだけなので、確率は $\displaystyle p_1\times\frac{1}{6}$ です。

あとは同じような話の繰り返しです。$P_2\rightarrow P_0$ で移動するのはサイコロの目が $4$ のときだけ、$P_3\rightarrow P_0$ で移動するのはサイコロの目が $3$ のときだけ…。結局、どの場合でも一つ前のコインの位置の確率に $\displaystyle \frac{1}{6}$ をかければよいことが分かります。

説明省略したけど、一応 $P_5$ の場合まで確認作業してね。

ここで、$p_0$ ~ $p_5$ は互いに排反なのでこれらの確率を足し合わせれば $n$ 回目に コインが $P_0$ にくる確率になります。

$\displaystyle p_0\times\frac{1}{6}+p_1\times\frac{1}{6}+p_2\times\frac{1}{6}+p_3\times\frac{1}{6}+p_4\times\frac{1}{6}+p_5\times\frac{1}{6}$

$\displaystyle =\frac{1}{6}(p_0+p_1+p_2+p_3+p_4+p_5)$

排反って何でしたっけ?

同時に起こることはないってこと。今回の場合だと、コインの位置が $P_1$ かつ $P_2$ である、なんてことは絶対ないでしょ?コインは 1 枚しかないんだから。

でも、ここからどうするんですか?

$p_0$ や $p_1$ は確率を表していますが、実際その確率がいくらなのかを求めることは複雑すぎてできそうにありません。しかし、結局コインは $P_0$ から $P_5$ のどこかに必ず存在しているのだから、$p_0+p_1+p_2+p_3+p_4+p_5$ は全事象を表していることになります。

つまり、$p_0+p_1+p_2+p_3+p_4+p_5=1$

例えばだけど、コインを投げて表の出る確率は $\displaystyle\frac{1}{2}$、裏の出る確率は $\displaystyle\frac{1}{2}$。そしてコインは絶対、表か裏のどちらかになるから  $\displaystyle\frac{1}{2}+\frac{1}{2}=1$。つまり表になる確率と裏になる確率を合わせたものは全事象 1 になる。

したがって、

$\displaystyle =\frac{1}{6}(p_0+p_1+p_2+p_3+p_4+p_5)$
$\displaystyle =\frac{1}{6}\times 1=\frac{1}{6}$ (答え)

ここでは確率が複雑すぎて求められそうにないときに、それぞれを足し合わせて全事象にする考え方をマスターしましょう。