回転しながら水平方向に移動する動点 Q の描く軌跡(神戸大2017理系第5問)
$r,c,\omega$ は正の定数とする。座標平面上の動点 P は時刻 $t=0$ のとき原点にあり,毎秒 $c$ の速さで $x$ 軸上を正の方向に動いているとする。また,動点 Q は時刻 $t=0$ のとき点 $(0,-r)$ にあるとする。点 P から見て,動点 Q が点 P を中心とする半径 $r$ の円周上を毎秒 $\omega$ ラジアンの割合で反時計回りに回転しているとき,以下の問に答えよ。
(1) 時刻 $t$ における動点 Q の座標 $(x(t),y(t))$ を求めよ。
(2) 動点 Q の描く曲線が交差しない,すなわち,$t_1\not=t_2$ ならば $(x(t_1),y(t_1))\not=(x(t_2),y(t_2))$ であるための必要十分条件を $r,c,\omega$ を用いて与えよ。
Q の座標を求める
(1)から始めます。
時刻 $t$ における,点 P の座標は
$\text{P}(ct,0)$
となります。また,点 Q の座標は
$x(t)=ct+r\sin\omega t$
$y(t)=-r+(r-r\cos\omega t)$
$=-r\cos\omega t$
よって
$\text{Q}(ct+r\sin\omega t,-r\cos\omega t)$ (答え)
動点 Q の描く軌跡
(2)に進みます。
まずは動点 Q がどのような軌跡を描くかを考えましょう。
$x(t)$,$y(t)$ を微分して,増減表を作ります。
$x(t)=ct+r\sin\omega t$ を $t$ で微分すると
$x'(t)=c+r\omega\cos\omega t$
$\sin\omega t$ は合成関数だから,$\omega t$ を微分した $\omega$ をかけるのを忘れずに。
$c+r\omega\cos\omega t=0$ とすると
$\cos\omega t=-\cfrac{c}{r\omega}$
ここから $t$ の値を求めることはできません。しかし,$0\leqq\omega t\leqq2\pi$ の範囲で,何らかの解が 2 つ存在するだろうということだけは分かります。
ただし,$-\cfrac{c}{r\omega}$ が $-1$ から $1$ の範囲になければ,解は存在しません。
解が存在する場合は極値を持つので,たとえば増加しているグラフが減少する,ということが起きて,$x$ 座標が同じ点が 2 か所以上できる可能性が生まれます。つまり,曲線が交差する可能性があるということです。
逆に,解が存在しない場合は,関数はつねに増加,または減少するので,$y$ 座標が何であろうと曲線は交差しません。
そこで,交差しない条件を考えましょう。
$-\cfrac{c}{r\omega}<-1$ とすると
$\cfrac{c}{r\omega}>1$
$c>r\omega$
このとき
$x'(t)=c+r\omega\cos\omega t$
について考えると,$\cos$ の値は最小で $-1$ です。$c,r,\omega$ が正の数で,かつ $c>r\omega$ なら $x'(t)$ はつねに正の値になります。
また
$-\cfrac{c}{r\omega}=-1$
$\cfrac{c}{r\omega}=1$
$c=r\omega$
この場合,$\cos$ が $-1$ のときに $x'(t)=0$ となりますが,それ以外は $x'(t)$ はつねに正の値です。
今度は $-\cfrac{c}{r\omega}$ が 1 より大きい場合を求めます。
$-\cfrac{c}{r\omega}>1$
$\cfrac{c}{r\omega}<-1$
$c<-r\omega$
$c,r,\omega$ が正の数であることから,この不等式が成り立つ場合はありません。また,$-\cfrac{c}{r\omega}=1$ とすると,$c=-r\omega$ となるので,やはり成り立ちません。
したがって,$c\geqq r\omega$ のとき,動点 Q の描く曲線は交差しない。
今度は,$c<r\omega$ の条件で曲線が交差することを示しましょう。
このとき $x'(t)=0$ は 2 つの実数解をもちます。これらを $\alpha,\beta$ としておきます。
この条件で,今度は $y(t)$ を考えてみましょう。
$y(t)=-r\cos\omega t$
$y'(t)=r\omega\sin\omega t$
$r\omega\sin\omega t=0$ とすると
$\sin\omega t=0$
$0\leqq\omega t\leqq2\pi$ の範囲で
$\omega t=0,\pi,2\pi$
$t=0,\cfrac{\pi}{\omega},\cfrac{2\pi}{\omega}$
ここで,$\omega t=\pi$ のとき,$x'(t)=c-r\omega$ となり,$c<r\omega$ から $x'(t)$ は負の値となります。
また,$\omega t=2\pi$ のとき,$x'(t)=c+r\omega$ となるので,$x'(t)$ は正の値です。
増減表は
$\def\arraystretch{1.5}\begin{array}{|c|c|c|c|c|c|c|c|c|c|}\hline t&0&\cdots&\alpha&\cdots&\frac{\pi}{\omega}&\cdots&\beta&\cdots&\frac{2\pi}{\omega}\\\hline x'(t)&+&+&0&-&-&-&0&+&+\\\hline x(t)&0&\nearrow&&\searrow&&\searrow&&\nearrow\\\hline y'(t)&0&+&+&+&0&-&-&-&0\\\hline y(t)&-r&\nearrow&&\nearrow&r&\searrow&&\searrow&-r\\\hline\end{array}$
よって,$c<r\omega$ のとき曲線は交差する。
したがって,動点 Q の描く曲線が交差しない必要十分条件は
$c\geqq r\omega$ (証明終わり)
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