循環するタイプの特殊な数列の解き方(横浜国立大2018理系第4問)
$c$ を 5 で割り切れない 2 以上の整数とする。数列 $\{a_n\}$,$\{b_n\}$ は以下の条件をみたす。
(i) $a_n$ $(n=1,2,3,\cdots)$ は $0,1,\cdots,c-1$ のいずれかである。
(ii) $b_n$ は
$b_1=1$,$cb_{n+1}=5a_n+b_n$ $(n=1,2,3,\cdots)$
をみたす整数である。
次の問いに答えよ。
(1) $c=3$ のとき,$a_n$,$b_n$ $(n=1,2,3,\cdots)$ を求めよ。
(2) $n=1,2,3,\cdots$ に対して,$0<b_n<5$ を示せ。
(3) $c=5\ell+4$ ($\ell$ は 0 以上の整数)のとき,$a_n$,$b_n$ $(n=1,2,3,\cdots)$ を求めよ。
値を一つずつ当てはめてみる
(1)から始めます。
$a_n$ は教科書で習った等差数列や等比数列ともまったく異なるので,どうなるか想像がつかないかもしれません。
このような場合には,数列が実際どうなるのかを順番に求めてみると良いでしょう。
$3b_{n+1}=5a_n+b_n$ として
$b_1=1$ より
$3b_2=5a_1+1$
$a_1$ は $0,1,2$ のいずれかなので,順番に当てはめてみましょう。
・$a_1=0$ のとき
$3b_2=1$
$b_2=\cfrac{1}{3}$
$b_n$ は整数だから,不適。
・$a_1=1$ のとき
$3b_2=5+1=6$
$b_2=2$ (条件に合う)
・$a_1=2$ のとき
$3b_2=10+1=11$
$b_2=\cfrac{11}{3}$ (不適)
よって,$a_1=1$,$b_2=2$
他の項が求められました。あとは,何らかの法則性が見えてくるまで,作業を繰り返していきましょう。
$3b_3=5a_2+2$
・$a_2=0$ のとき
$b_3=\cfrac{2}{3}$ (不適)
・$a_2=1$ のとき
$b_3=\cfrac{7}{3}$ (不適)
・$a_2=2$ のとき
$b_3=4$ (条件に合う)
よって,$a_2=2$,$b_3=4$
$3b_4=5a_3+4$
・$a_3=0$ のとき
$b_4=\cfrac{4}{3}$ (不適)
・$a_3=1$ のとき
$b_4=3$ (条件に合う)
・$a_3=2$ のとき
$b_4=\cfrac{14}{3}$ (不適)
よって,$a_3=1$,$b_4=3$
$3b_5=5a_4+3$
・$a_4=0$ のとき
$b_5=1$ (条件に合う)
・$a_4=1$ のとき
$b_5=\cfrac{8}{3}$ (不適)
・$a_4=2$ のとき
$b_5=\cfrac{13}{3}$ (不適)
よって,$a_4=0$,$b_5=1$
$b_6=5a_5+1$
この式は,最初に作った $3b_2=5a_1+1$ と同じ形をしています。つまり,ここから先は同じ値を繰り返していくはずです。
結果的に,$a_n$ は $1,2,1,0$ の繰り返しで,$b_n$ は $1,2,4,3$ の繰り返しです。
したがって,
$\begin{cases}a_{4k+1}=1\\a_{4k+2}=2\\a_{4k+3}=1\\a_{4k}=0\end{cases}$ $(k=0,1,2,\cdots)$
$\begin{cases}b_{4k+1}=1\\b_{4k+2}=2\\b_{4k+3}=4\\b_{4k}=3\end{cases}$ $(k=0,1,2,\cdots)$
(答え)
数学的帰納法
(2)に進みます。ここは数学的帰納法を用いて証明していきましょう。
$0<b_n<5$ ・・・(*) として
[I] $n=1$ のとき
$0<b_1<5$
$0<1<5$
$n=1$ のとき,(*)は成り立つ。
[II] $n=k$ のとき(*)が成り立つと仮定すると,$n=k+1$ のとき
$0<b_{k+1}<5$
$0<cb_{k+1}<5c$
$0<5a_k+b_k<5c$
問題文をよく読み直してみると,(i)から $0\leqq a_n\leqq c-1$ という条件があることに気づきます。これを使ってみましょう。
$0\leqq a_k\leqq c-1$
$0\leqq5a_k\leqq5(c-1)$
$b_k\leqq5a_k+b_k\leqq5(c-1)+b_k$
$b_k\leqq cb_{k+1}\leqq5(c-1)+b_k$
$\cfrac{b_k}{c}\leqq b_{k+1}\leqq\cfrac{5(c-1)+b_k}{c}$
ここで,問題文より $c>0$ であり,また条件(i)より $a_n>0$ です。よって,$b_1=1$ から $5a_1+b_1$ は正の数だから,$cb_{n+1}=5a_n+b_n$ より,$b_1$ が正の数なら $b_2$ は正の数,$b_2$ が正の数なら $b_3$ は正の数・・・,となって$b_n$ はつねに正の数であることが分かります。
よって $0<\cfrac{b_k}{c}$ が成り立ちます。
また
$0<b_k<5$
より
$b_k<5$
$5(c-1)+b_k<5+5(c-1)$
$\cfrac{5(c-1)+b_k}{c}<\cfrac{5+5(c-1)}{c}$
$\cfrac{5(c-1)+b_k}{c}<5\Big(\cfrac{1+c-1}{c}\Big)$
$\cfrac{5(c-1)+b_k}{c}<5$
したがって
$0<\cfrac{b_k}{c}\leqq b_{k+1}\leqq\cfrac{5(c-1)+b_k}{c}<5$
$0<b_{k+1}<5$
よって,$n=k+1$ のときも(*)は成り立つ。
[I],[II]より,$0<b_n<5$ (証明終わり)
再び値を順番に当てはめてみる
(3)に進みます。
(2)より $b_n$ は $1,2,3,4$ のいずれかです。
$(5\ell+4)b_{n+1}=5a_n+b_n$ として
再び,値を順番に当てはめてみましょう。
$b_1=1$ より
$(5\ell+4)b_2=5a_1+1$
$5\ell b_2+4b_2=5a_1+1$
左右を見比べてみると,数列の値が整数という条件で恒等式が成り立つのは $4b_2$ を 5 で割ったときの余りが 1 になるときであることが分かります。$b_2$ に 1 から 4 の値を当てはめてみると,このようになるのは,$b_2=4$ のときだけです。
$b_2=4$ とすると
$20\ell+16=5a_1+1$
$5a_1=20\ell+15$
$a_1=4\ell+3$
よって,$a_1=4\ell+3$,$b_2=4$
$(5\ell+4)b_3=5a_2+4$
$5\ell b_3+4b_3=5a_2+4$
$b_3=1$ とすると
$5\ell+4=5a_2+4$
$a_2=\ell$
よって,$a_2=\ell$,$b_3=1$
$(5\ell+4)b_4=5a_3+1$
$5\ell b_4+4b_4=5a_3+1$
$b_4=4$ とすると
$20\ell+16=5a_3+1$
$a_3=4\ell+3$
よって,$a_3=4\ell+3$,$b_4=4$
ここで,最初の式に戻りました。あとは同じことの繰り返しです。
したがって
$\begin{cases}a_{2k+1}=4\ell+3\\a_{2k}=\ell\end{cases}$ $(k=0,1,2,\cdots)$
$\begin{cases}b_{2k+1}=1\\b_{2k}=4\end{cases}$ $(k=0,1,2,\cdots)$
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