一般項が求められない数列-性質を仮定して検証する(横浜国立大2017理系第4問)

数列 $\{a_n\}$,$\{b_n\}$ は以下の条件をみたす。

(i) $a_1=1$,$a_n\not=0$ $(n=2,3,4,\cdots)$

(ii) $n=1,2,3,\cdots$ に対して,$b_n$ は $\cfrac{1}{a_n}$ より大きい最小の自然数である。

(iii) $n=1,2,3,\cdots$ に対して,$a_{n+1}=a_n-\cfrac{1}{b_n}$ が成り立つ。

次の問いに答えよ。

(1) $b_1,a_2,a_3,b_3$ を求めよ。

(2) $b_1b_2\cdots b_n a_{n+1}$ $(n=1,2,3,\cdots)$ を求めよ。

(3) $\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}\sum_{k=1}^n\cfrac{1}{b_k}$ を求めよ。

値を代入する

(1)から始めます。ここは実際に値を代入して,順番に求めていきましょう。

$a_1=1$

$\cfrac{1}{a_1}=1$ より $b_1=2$

$a_2=a_1-\cfrac{1}{b_1}=1-\cfrac{1}{2}$
$=\cfrac{1}{2}$

$\cfrac{1}{a_2}=2$ より,$b_2=3$

$a_3=a_2-\cfrac{1}{b_2}=\cfrac{1}{2}-\cfrac{1}{3}$
$=\cfrac{1}{6}$

$\cfrac{1}{a_3}=6$ より $b_3=7$

したがって

$b_1=2,a_2=\cfrac{1}{2},b_2=3,a_3=\cfrac{1}{6},b_3=7$ (答え)

積の式を置き換えていく

(2)に進みます。

ここは,(1)から $b_n$ についての規則性を考えましょう。そうすると

$b_n=\cfrac{1}{a_n}+1$

が成り立ちます。ただし,これはあくまで仮定なので,この式がちゃんと成り立つことを証明しておく必要があり,問題文より $b_n$ が自然数であることを示せば良いです。

そこで数学的帰納法を用いてみましょう。

$b_n=\cfrac{1}{a_n}+1$ のとき $b_n$ は自然数である ・・・(*)

として

[I] $n=1$ のとき

$b_1=\cfrac{1}{a_1}+1=\cfrac{1}{1}+1=2$

よって,$n=1$ のとき(*)は成り立つ。

[II] $n=k$ のとき(*)が成り立つ,すなわち$\cfrac{1}{a_k}$ は自然数であると仮定すると,$n=k+1$ のとき

$a_{k+1}=a_k-\cfrac{1}{b_k}$ より

$=a_k-\cfrac{1}{\cfrac{1}{a_k}+1}$
$=a_k-\cfrac{a_k}{1+a_k}$
$=\cfrac{a_k+{a_k}^2-a_k}{1+a_k}$
$=\cfrac{{a_k}^2}{1+a_k}$

両辺の逆数をとって

$\cfrac{1}{a_{k+1}}=\cfrac{1+a_k}{{a_k}^2}$
$=\cfrac{1}{{a_k}^2}+\cfrac{1}{a_k}$

$\cfrac{1}{a_k}$ が自然数だとすると,$\cfrac{1}{{a_k}^2}+\cfrac{1}{a_k}$ は自然数+自然数だから,これも自然数になる。そして $\cfrac{1}{a_{k+1}}$ が自然数なら $b_{k+1}$ も自然数だよね。結局,$b_1$ が自然数なら,$b_2$ も自然数,$b_2$ が自然数なら $b_3$ も自然数・・・,$b_n$ はすべて自然数ってことになる。

[I],[II] よりすべての自然数 $n$ について(*)が成り立つ。 

これで,ここから先,$b_n=\cfrac{1}{a_n}+1$ を使っても大丈夫ということになります。

$a_{n+1}=a_n-\cfrac{1}{b_n}$

両辺に $b_n$ をかけると

$b_na_{n+1}=a_nb_n-1$

また $b_n=\cfrac{1}{a_n}+1$ は両辺に $a_n$ をかけると

$a_nb_n=1+a_n$

となるので,代入して

$b_na_{n+1}=1+a_n-1=a_n$

となる。

ここから,$b_{n-1}a_n=a_{n-1}$,$b_{n-2}a_{n-1}=a_{n-2}$,$\cdots$ が成り立つことになります。

よって

$b_1b_2\cdots b_n a_{n+1}$
$=b_1b_2\cdots b_{n-1}a_n$
$=b_1b_2\cdots b_{n-2}a_{n-1}$
$\vdots$
$=b_1a_2$
$=2\cdot\cfrac{1}{2}$
$=1$ (答え)

極限を求める

(3)に進みます。

まず $a_{k+1}=a_k-\cfrac{1}{b_k}$ より

$\cfrac{1}{b_k}=a_k-a_{k+1}$

$\displaystyle\sum_{k=1}^n(a_k-a_{k+1})$
$=(a_1-a_2)+(a_2-a_3)+(a_3-a_4)+\cdots+(a_n-a_{n+1})$
$=a_1-a_{n+1}$
$=1-a_{n+1}$

つまり,$\cfrac{1}{b_n}$ の極限を求めることと,$1-a_{n+1}$ の極限を求めることは同じです。

そうすると,今度は $a_{n+1}$ の極限を考えれば答えが出せそうです。

このとき,過去に作った式を利用できないか考えてみるクセをつけましょう。(3)を解いているときには(1),(2)がヒントになるものです。

(2)より

$b_1b_2\cdots b_n a_{n+1}=1$

$a_{n+1}=\cfrac{1}{b_1b_2\cdots b_n}$

これ,どう考える?
んー,(1)からすると $b_n$ って数が増えていくから,それのかけ算ってことは 0 に収束しますかね?
そうそう,それが仮定ってヤツ。あとはそれが正しいことを示せば良い。

つまり,$b_n$ が単調増加の数列であることを示せばよいということです。

一つの方向性としては,$b_n$ についての漸化式を作ることです。例えば,$b_{n+1}=b_n+1$ のような式であれば,$b_n$ は単調増加であると言えます。ようするに $b_n$ と $b_{n+1}$ を比べて,$b_{n+1}$ の方が大きいということが言えれば良いわけです。

$b_{n+1}-b_n=\cfrac{1}{a_{n+1}}+1-\cfrac{1}{a_n}-1$
$=\cfrac{1}{a_{n+1}}-\cfrac{1}{a_n}$
$=\cfrac{1}{a_n-\cfrac{1}{b_n}}-\cfrac{1}{a_n}$

$b_{n+1}-b_n$ が正の数であれば,$b_n$ が単調増加であると言えます。

$b_n$ は自然数だから,$\cfrac{1}{b_n}$ は正の値です。よって

$a_n-\cfrac{1}{b_n}<a_n$

が成り立ちます。これの逆数をとると

$\cfrac{1}{a_n-\cfrac{1}{b_n}}>\cfrac{1}{a_n}$

$2<3$ とすると $\cfrac{1}{2}>\cfrac{1}{3}$ となる。逆数をとると,不等号の向きが逆になることに注意。

これより

$b_{n+1}-b_n>0$

したがって $b_n$ は単調増加である。

ここで,$a_{n+1}=\cfrac{1}{b_1b_2\cdots b_n}$ に戻りましょう。

$\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}a_{n+1}=0$ だから

$\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}\cfrac{1}{b_k}=1-0=1$ (答え)