複素数平面の垂直条件(横浜国立大2018理系第3問)

α\alpha を複素数とする。zαz\not=-\alpha をみたす複素数 zz に対して,w=z+2αz+αw=\cfrac{z+2\alpha}{z+\alpha} と定める。z1=1|z-1|=1 をみたすようなすべての zz に対して,w1=1|w-1|=1 が成り立つ。次の問いに答えよ。

(1) α\alpha を求めよ。

(2) w=zw=z をみたす zz を求めよ。

(3) z0=1+iz_0=1+i とし,zz0z\not=z_0 かつ zαz\not=-\alpha とする。複素数平面上の 3 点 A(z0)(z_0),P(z)(z),Q(w)(w) を考える。直線 AP と直線 AQ が垂直に交わるような点 P の全体が表す図形を,複素数平面上に図示せよ。

z の式になおす

(1)から始めます。

一つの考え方は,w=z+2αz+αw=\cfrac{z+2\alpha}{z+\alpha} を w1=1|w-1|=1 に代入してみることです。しかし,この方法ではうまくいかないはずです。別な方法を考えなければいけません。

問題集などでは,ww の式が出てきたら,何となく zz の式になおすのがやり方でした。今回もそれでいくとうまくいきます。

w=z+2αz+αw=\cfrac{z+2\alpha}{z+\alpha}
(z+α)w=z+2α(z+\alpha)w=z+2\alpha
zw+α w=z+2αzw+\alpha w=z+2\alpha
zwz=2αα wzw-z=2\alpha-\alpha w
z(w1)=α(2w)z(w-1)=\alpha(2-w)
z=α(2w)w1z=\cfrac{\alpha(2-w)}{w-1}

これを z1=1|z-1|=1 に代入すると

α(2w)w11=1\Big|\cfrac{\alpha(2-w)}{w-1}-1\Big|=1

通分して

α(2w)w+1w1=1\Big|\cfrac{\alpha(2-w)-w+1}{w-1}\Big|=1

分数の絶対値は上下で分割して大丈夫。

α(2w)w+1w1=1\cfrac{|\alpha(2-w)-w+1|}{|w-1|}=1

w1=1|w-1|=1 だから

α(2w)w+1=1|\alpha(2-w)-w+1|=1

ここから,ww を消去する方法を考えます。

α=1\alpha=-1 とすると,左辺は

(2w)w+1|-(2-w)-w+1|
=2+ww+1=|-2+w-w+1|
=1=|-1|
=1=1

左辺=右辺が成り立つので,α=1\alpha=-1

一応,これで答えとしても良いのですが,問題文の「z1=1|z-1|=1 をみたすようなすべての zz に対して,w1=1|w-1|=1 が成り立つ。」ことを示しておいた方が良いでしょう。

w=z2z1w=\cfrac{z-2}{z-1} として,w1=1|w-1|=1 に代入すると,左辺は

z2z11\Big|\cfrac{z-2}{z-1}-1\Big|
=z2z+1z1=\Big|\cfrac{z-2-z+1}{z-1}\Big|

z1=1|z-1|=1 だから

1=1|-1|=1

左辺=右辺より,式は成り立つ。

従って

α=1\alpha=-1 (答え)

w=z になる場合

(2)に進みます。

(1)より α=1\alpha=-1 とすると

w=z2z1w=\cfrac{z-2}{z-1}

w=zw=z より

z=z2z1z=\cfrac{z-2}{z-1}
z(z1)=z2z(z-1)=z-2
z22z+2=0z^2-2z+2=0
z=1±12z=1\pm\sqrt{1-2}
z=1± iz=1\pm i (答え)

垂直になる条件

(3)に進みます。

複素数平面上に点A(z)(z),B(w)(w) があり,OA と OB が垂直に交わるとき,wz\cfrac{w}{z} は純虚数になります。

これ,何ででしたっけ?
極形式のところででてくる話。

zz と ww を極形式で表してみます。

z=r1(cosθ1+isinθ1)z=r_1(\cos\theta_1+i\sin\theta_1)
w=r2(cosθ2+isinθ2)w=r_2(\cos\theta_2+i\sin\theta_2)

とすると

wz=r2r1{cos(θ2θ1)+isin(θ2θ1)}\cfrac{w}{z}=\cfrac{r_2}{r_1}\{\cos(\theta_2-\theta_1)+i\sin(\theta_2-\theta_1)\}

OA⊥OB のとき,θ2θ1=90°\theta_2-\theta_1=90\degree だから

=r2r1(cos90°+isin90°)=\cfrac{r_2}{r_1}(\cos90\degree+i\sin90\degree)
=r2r1  i=\cfrac{r_2}{r_1}\space i

こうして,実数の部分が 0 になって消えて,虚数の部分だけが残るという仕組みです。

ただし,今回は始点が z0z_0 なので,z0z_0 を引いて原点に戻した上で割り算します。

wz0zzo=ki\cfrac{w-z_0}{z-z_o}=ki とする

r2r1\cfrac{r_2}{r_1} の値は分からないので,kk としています。

(1)より,z=w2w1z=\cfrac{w-2}{w-1}w=z2z1w=\cfrac{z-2}{z-1}

(2)より z=1± iz=1\pm i のとき,z=wz=w が成り立つ。よって,zz を z0=1+iz_0=1+i におきかえると,z0=wz_0=w が成り立つ。したがって

z0=z02z01z_0=\cfrac{z_0-2}{z_0-1}

これで,大丈夫なんですか?
あくまで,z0=1+iz_0=1+i という条件で成り立つということ。z0z_0 が他の値なら,当然,成り立たない。

z2z1z02z01zz0=ki\cfrac{\cfrac{z-2}{z-1}-\cfrac{z_0-2}{z_0-1}}{z-z_0}=ki (k0)(k\not=0)

ここ,z0z_0z02z01\cfrac{z_0-2}{z_0-1} にするの何で?
置き換えないで計算すると,全然解けないから。大体,入試問題って上で解いた答えを利用するのが普通だから,計算行き詰ったときに「(2)の答え使ったらいいんじゃね?」っていう発想ができるかどうかが勝負。理屈というより,(2)の答えを利用したら,たまたまラッキーで解けちゃうカンジ。

左辺について整理すると

(z2)(z01)(z1)(z02)(zz0)(z1)(z01)\cfrac{(z-2)(z_0-1)-(z-1)(z_0-2)}{(z-z_0)(z-1)(z_0-1)}
=zz0z2z0+2zz0+2z+z02(zz0)(z1)(z01)=\cfrac{zz_0-z-2z_0+2-zz_0+2z+z_0-2}{(z-z_0)(z-1)(z_0-1)}
=zz0(zz0)(z1)(z01)=\cfrac{z-z_0}{(z-z_0)(z-1)(z_0-1)}
=1(z1)(z01)=\cfrac{1}{(z-1)(z_0-1)}
=1(z1)(1+i1)=\cfrac{1}{(z-1)(1+i-1)}
=1i(z1)=ki=\cfrac{1}{i(z-1)}=ki

両辺に ii をかけると

1z1=k\cfrac{1}{z-1}=-k

両辺の逆数をとって

z1=1kz-1=-\cfrac{1}{k}
z=11kz=1-\cfrac{1}{k}

zz は実数なので,複素数平面上では xx 軸上の点ということになります。また,kk に 0 以外の値が入るので,zz は 1 になることはありません。

したがって

xx 軸上の 1 を除く部分(答え)