方程式の解が有理数であるとき,式は割り切れるか割り切れないか(東京都立大2018文系第2問)
整数を係数とする 3 次式
$f(x)=x^3+ax^2+bx+c$
について,以下の問いに答えなさい。(東京都立大2018)
(1) 有理数 $r$ が方程式 $f(x)=0$ の 1 つの解であるとき,$r$ は整数であることを示しなさい。
(2) 整数 $f(1),f(2),f(3)$ のいずれも 3 で割り切れないとき,方程式 $f(x)=0$ は有理数の解をもたないことを示しなさい。
有理数の表し方
(1)から始めます。
有理数は互いに素である $m,n$ を用いて $\cfrac{m}{n}$ の形で表すことができるというのが,その定義でした。
$r$ は有理数だから,$r=\cfrac{m}{n}$ とすると
$f(r)=\cfrac{m^3}{n^3}+a\cdot\cfrac{m^2}{n^2}+b\cdot\cfrac{m}{n}+c=0$
両辺に $n^3$ をかけて
$m^3+am^2n+bmn^2+cn^3=0$
$m^3=-n(am^2+bmn+cn^2)$
よって,$m$ は $n$ の倍数である。$m$ と $n$ は互いに素だから,$m$ が $n$ の倍数となるのは,$n=1$ のときのみである。
したがって,$r$ は整数である。(証明終わり)
割り切れるか,割り切れないか
(2)に進みます。
(1)より,解が有理数ならば,それは整数となります。
そこで,解を $3k$,$3k+1$,$3k+2$ に分けて考えます。つまり,解が 3 で割り切れる場合と,3 で割ったら 1 余る場合,2 余る場合に分けるということです。この 3 つですべての整数を表すことができます。
まず,$f(1),f(2),f(3)$ を実際に求めてみます。
$f(1)=1+a+b+c$
$f(2)=8+4a+2b+c$
$f(3)=27+9a+3b+c$
$=3(9+3a+b)+c$
(i) 解が $3k$ のとき
$x^3+ax^2+bx+c=0$ より
$(3k)^3+a(3k)^2+b(3k)+c=0$
$27k^3+9ak^2+3bk+c=0$
$3(9k^3+3ak^2+bk)=-c$
よって,$c$ は 3 の倍数である。
(ii) 解が $3k+1$ のとき
$(3k+1)^3+a(3k+1)^2+b(3k+1)+c=0$
$27k^3+27k^2+9k+1+9ak^2+6ak+a+3bk+b+c=0$
3 の倍数をまとめましょう。
$3(9k^3+9k^2+3k+3ak^2+2ak+bk)+1+a+b+c=0$
$3(9k^3+9k^2+3k+3ak^2+2ak+bk)=-(1+a+b+c)$
よって,$1+a+b+c$ は 3 の倍数である。
(iii) 解が $3k+2$ のとき
$(3k+2)^3+a(3k+2)^2+b(3k+2)+c=0$
$27k^3+54k^2+36k+8+9ak^2+12ak+4a+3bk+2b+c=0$
3 の倍数でまとめると
$3(9k^3+18k^2+3ak^2+4ak+bk)+8+4a+2b+c=0$
$3(9k^3+18k^2+3ak^2+4ak+bk)=-(8+4a+2b+c)$
よって,$8+4a+2b+c$ は 3 の倍数である。
よって,$f(x)$ が有理数の解をもつとき,$f(1),f(2),f(3)$ のいずれかは 3 で割り切れる。
したがって,整数 $f(1),f(2),f(3)$ のいずれも 3 で割り切れないとき,方程式 $f(x)=0$ は有理数の解をもたない。(証明終わり)
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