自然数 n と実数 a0,a1,a2,⋯⋯,an(an=0) に対して,2 つの整式
f(x)=k=0∑n akxk=anxn+an−1xn−1+⋯⋯+a1x+a0
f′(x)=k=1∑n kakxk−1=nanxn−1+(n−1)an−1xn−2+⋯⋯+a1
を考える。α,β を異なる複素数とする。複素数平面上の 2 点 α,β を結ぶ線分上にある点 γ で
β−αf(β)−f(α)=f′(γ)
をみたすものが存在するとき,
α,β,f(x) は平均値の性質を持つ
ということにする。以下の問いに答えよ。ただし,i は虚数単位とする。(九州大2021)
(1) n=2 のとき,どのような α,β,f(x) も平均値の性質をもつことを示せ。
(2) α=1−i,β=1+i,f(x)=x3+ax2+bx+c が平均値の性質をもつための,実数 a,b,c に関する必要十分条件を求めよ。
(3) α=21−i,β=21+i,f(x)=x7 は平均値の性質をもたないことを示せ。
今回の問題って,実は平均値の定理あんまり関係なくて,式を満たす条件を考えれば良い。数列の和とか見た目やっかいそうだけど,実際やってみるとそうでもないから,チャレンジするといいよ。
条件を満たすγを考える
(1)から考えていきます。
n=2 のとき
f(x)=a2x2+a1x+a0 ・・・①
f′(x)=2a2x+a1 ・・・②
となるので,①より
β−αf(β)−f(α)
=β−αa2β2+a1β+a0−a2α2−a1α−a0
=β−αa2(β2−α2)+a1(β−α)
=β−αa2(β+α)(β−α)+a1(β−α)
=a2(α+β)+a1 ・・・③
また,②より
f′(γ)=2a2γ+a1 ・・・④
③=④が成り立つとき,平均値の性質が成り立ちます。
ということは,α+β=2γ が成り立つかどうかを考えなければなりません。
ここで,γ が α,β を結ぶ線分上にあるという条件から γ のグラフ上の位置を考えてみます。
グラフ上に点 D(α+β) をおくと,四角形 OADB は平行四辺形となります。
このとき,線分 AB の中点を C(γ) とすると,点 C は線分 OD の中点です。
よって
γ=2α+β
α+β=2γ
となります。つまり,C(γ) が AB の中点であれば,平均値の性質が成り立つということです。
よって
β−αf(β)−f(α)=f′(γ)
が成り立つ。
したがって,n=2 のとき,どのような α,β,f(x) も平均値の性質を持つ。(証明終わり)
平均値の性質が成り立つ関数の条件
(2)に進みます。
α=1−i,β=1+i,f(x)=x3+ax2+bx+c として
β−αf(β)−f(α)
=β−αβ3+aβ2+bβ+c−α3−aα2−bα−c
=β−αβ3−α3+a(β2−α2)+b(β−α)
=β−α(β−α)(β2+αβ+α2)+a(β+α)(β−α)+b(β−α)
=β2+αβ+α2+a(β+α)+b
=(1+i)2+(1−i)(1+i)+(1−i)2+a(1+i+1−i)+b
=1+2i−1+1+1+1−2i−1+2a+b
=2+2a+b
また,f′(x)=3x2+ax+b より
f′(γ)=3γ2+aγ+b
γ は線分 AB 上の点だから,γ=1+ti (−1≦ t≦1) とすると
=3(1+ti)2+a(1+ti)+b
=3+6ti−3t2+2a+2ati+b
このようになったら,いったん式を実部と虚部でまとめましょう。
=3−3t2+2a+b+(6t+2at)i
ここで,β−αf(β)−f(α)=f′(γ) が成り立つと仮定すると
2+2a+b=3−3t2+2a+b+(6t+2at)i ・・・⑤
左辺は実数だから,恒等式が成り立つのは
6t+2at=0
のときである。
t(3+a)=0
よって,恒等式が成り立つ条件は t=0 または a=−3 のときである。
(i) t=0 のとき,⑤は
2+2a+b=3+2a+b
式は成り立たない。よって,不適。
(ii) a=−3 のとき,⑤は
2−6+b=3−3t2−6+b
3t2=1
t2=31
t=±31=±33
よって,恒等式が成り立つ t が存在する。
したがって,α,β,f(x) が平均値の性質をもつための必要十分条件は
a=−3,b,c は任意の実数(証明終わり)
平均値の性質が成り立たないことを示す
(3)に進みます。
α=21−i,β=21+i,f(x)=x7
α と β はそれぞれ共役な複素数です。
α,β を有利化すると
α=22−22i
β=22+22i
f′(x)=7x6 より
f′(γ)=7γ6
複素数平面習ったときに,
Z の 3 乗根を習ったと思う。あの考え方を使うと良さそう。
α を極形式で表すと
α=cos(−4π)+isin(−4π)
α7={cos(−4π)+isin(−4π)}7
ド・モアブルの定理より
α7=cos(−47π)+isin(−47π)
同様にして
β=cos4π+isin4π
β7=cos47π+isin47π
θ=4π と −47π において,sin と cos の値は一致するので,α=β7 と β=α7 が成り立ちます。
よって
β−αf(β)−f(α)=β−αβ7−α7
=β−αα−β
=21+i−21−i21−i−21+i
=1+i−(1−i)1−i−(1+i)
=2i−2i
=−1
β−αf(β)−f(α)=f′(γ) より
−1=7γ6 と仮定すると
γ6=−71
ここで,γ を極形式で表してみましょう。
γ=∣γ∣(cosθ+isinθ) (−4π≦θ≦4π) ・・・⑥
γ6=∣γ∣6(cosθ+isinθ)6
ド・モアブルの定理より
γ6=∣γ∣6(cos6θ+isin6θ)
よって,6θ の範囲は
−23π≦6θ≦23π
となります。
γ6=−71 だから,γ6 は実数です。つまり,極形式の isin6θ が 0 となる場合を考えます。
(i) 6θ=0 のとき
γ6=∣γ∣6
ここで,γ は線分 AB 上の点であることを思い出しましょう。
−4π≦θ≦4π の範囲において
22≦∣γ∣≦1
81≦∣γ∣6≦1
となり,γ6=−71 と矛盾する。
(ii) 6θ=π のとき
θ=6π
γ6=−∣γ∣6
このとき
−1≦−∣γ∣6≦−81
となり,γ6=−71 と矛盾する。
したがって,α=21−i,β=21+i,f(x)=x7 は平均値の性質をもたない。(証明終わり)
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