教養

先生に「あなたのお子さんは発達障害の可能性がある」と言われたら

小学生の子供を持つ保護者が面談などで学校の先生から「あなたのお子さんは発達障害(または学習障害)の可能性がある」と言われるケースは珍しいことではないようです。

もし学校の先生からそのような指摘を受けた場合、どのようにしたら良いのでしょうか。

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障害の有無は学校では判断できない

まず、前提として理解すべきことは「学校の教師が子供の障害の有無について判断することはできないし、してはいけない。」ということです。

障害の有無はあくまで専門医によって行われるものです。病気や障害の診断は医者にしか認められていません。従って学校の先生も「可能性がある」という言い方をします。「障害がある」と断定されているわけではないことに注意してください(万が一、先生が「障害がある」と断定してきたら、それは教師の職務権限を越えているので問題のある行為です。しかし私の知る限りではそうしたケースはさすがにないようですが)。

そうは言っても「可能性がある」と言われた時点で保護者にとってはとても不安になるでしょう。自分の子供が将来社会でまともに生きていけないと言われているように感じるのではないでしょうか。

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専門医を受診するメリット

もし先生から発達障害の可能性を指摘された場合、専門医を受診することは一つの方法です。しかし、実際受診してみても結局障害があるのかないのかはっきりしないことも多いものです。障害の判断はカゼの診断のようにその場でできるものではなく、長期に渡る観察が必要になります。

また発達障害と言っても明確な基準はありません。精神医学の世界では統合失調症や自閉症などは遺伝子の病気であることがはっきりしていますが、発達障害は症状も多様で障害があると断定することが困難です。その上、治療法もはっきりとしたものは存在していません。

保護者にとってみれば、たとえ医者から「あなたのお子さんは発達障害がある」を診断を受けたところで、それを治療する明確な方法は存在せず、結局何も救われないことが多いでしょう。

しかし受診することがすべて無意味ということではありません。学習障害の可能性がある場合、強い不安やパニック症状、うつ、睡眠障害などが伴うことがあります。医者とは結局薬を出すだけの存在かもしれませんが、こうした症状には薬を使うべきです。

もしかすると、子供に精神薬を服用させることに不安を感じるかもしれませんが、近年の薬は副作用も改善され死亡率も大幅に下がっています。薬としてむしろ安全な部類です(逆に言えばかなり安全なものしか外来受診の患者には処方されないということです。作用の強い薬を使う場合は入院しなければなりません。)

とは言え、ずっと薬を使い続けることは誰にとっても不安でしょう。大切なことは、まず服薬によって症状をコントロールできる状態に持ち込み、安定してから減薬の可能性を模索することです。うつなどの症状があっても、人との上手な関わり方を学んだり、ストレスになる環境を回避することによって薬を減らすことが可能になります。「薬に頼るなどけしからん。」と思う人も多いでしょうが、それならばただの「気持ちの問題」で片づけず、本人が抱える認知的要因や環境的要因に対し具体的な対策を考えるべきです。

また、不安やパニック症状、うつ、睡眠障害などは放置すると悪化するだけでなく今まで無かった新しい症状に連鎖してより重篤になります。複数の症状が連鎖した場合、そこから回復することはますます困難になるので、一日でも早く受診して治療すべきです。治療が予防を兼ねていることを理解しましょう。

こうした精神症状の他にも専門医を受診すべきケースがあります。それは単に学校の勉強に遅れているというだけでなく、日常的な動作や人とのコミュニケーション全般において著しい遅れが目立つ場合です。

しかしこの判断には注意が必要です。例えば「ウチの子は着替えが遅くてイライラする。障害でもあるのかしら?」というのは大抵の場合、障害ではありません。なぜなら大人に比べて子供の着替えが遅いのは当たり前だからです。大人が自分を基準にして子供を見るとしばしばこうした過ちに至ります。おかしいのは子供ではなく、イライラしている大人の方なのです。

その上でこう思うかもしれません。「ウチの子は他の子に比べても着替えが遅い。」その場合、まずは比べる相手を高望みしていないかどうか確認しましょう。出来の良い子を基準にするのは公平とは言えません。それに本当に着替えのスピードが平均値を下回っていたとしても、どんな子供にも得意・不得意があり、たまたま我が子は着替えが遅かったというだけかもしれません。つまりここで言う著しい遅れとは総合的な判断を必要とし、安易に判断すべきではないのです。親はもちろん専門家ではありませんが、なるべく客観的な視点に立って見た上で生活全般に渡って支障があると考えられる場合に受診すべきです。

まとめると、

・専門医を受診することは必須ではないが、不安やパニック、うつ、睡眠障害などがある場合はすぐに受診した方がよい。

・薬は何にでも効く特効薬ではないが、特定の症状については高い効果が見込める。「気持ちの問題」で片づけない。

・薬だけに頼るのではなく本人の認知パターンやストレスになる環境を客観的に分析して、複数のアプローチで対処すべき。

・一部分ではなく生活全般において著しい遅れがみられる場合には専門医を受診すべき。

ということです。

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専門医を受診する必要がない場合

ここで「専門医を受診しなくてもよい」と断言するのはある意味では危険なことです。従って、あくまで一つの意見として考えてください。不安があれば受診すべきです。

専門医を受診しなくてもよい場合とは、そもそも日常生活に支障がないケースです。学校の先生から発達障害の可能性があると指摘されてもその根拠はしばしば不明瞭で、単に勉強ができないとか授業中に落ち着きがないというくらいの話でしかないことも多いようです。

子供の学校の成績が教室でほとんど最下位だったとしたら、保護者はがっかりし不安に思うでしょう。そうした場合、確かにその子供が将来一流大学に進みエリートの道を歩むことはほとんど期待できません。しかし社会の中で生き延びることができないというのは言い過ぎです。

国の統計には表れませんが、知的障害者として診断されることの多い IQ60 レベルの人でも障害の診断を受けず普通に高校を卒業し、結婚して子供を産み、家庭を築いているケースはかなりの数で存在すると考えられています。こうした人々はいわば国のスクリーニング検査で障害を発見できなかった人々です。

しかし、残念ながら現代の日本においては障害者と診断されそのカテゴリーに一度放り込まれると、就職や結婚などの可能性はほぼ完全に消えることになります。障害があると認定されることにはそれなりのリスクが伴うのです。だからこそ安易に障害があると決めつけずに長期的かつ総合的な判断が求められます。

(誤解があってはいけませんが、社会の保護が絶対に必要である人々がいることも忘れてはいけません。ここではどんな障害者でも放置しても生きていけると言っているのではありません。)

また、子供の発達はその子供によって大きく異なることも理解しましょう。学力や認知能力の伸びは子供によって時期が異なり、小学生で伸びる子、中学で伸びる子、高校で伸びる子がいます。子供の学力や精神的成熟が一時的に遅れていても、長期的にはあまり変わりません。他の子より多少遅れがあっても、保護者は焦らずに長い目でその子を見つめ続けることが大切です。もし障害が疑われたとしても学校の成績だけで決めつけず、親の目から生活全般の状況を客観的に判断し、専門医を受診すべきかどうかを判断しましょう。

早期の対処が肝心

もし専門医を受診し、発達障害の可能性が高いと診断されてもそれをすぐさま鵜呑みにすべきではありません。先ほども述べたように、発達障害の診断は長期の観察によってしか判断できません。発達障害の可能性があっても特殊学級などに移すべきかどうかは慎重に考えるべきです。たとえ多少問題があっても、可能な限り普通の人間として生きる道を模索することが大切です。

子供を特殊学級に移すべきかどうかという判断は子供のストレスの状態で考えると良いでしょう。普通学級でもその子が特にストレスを感じていないのであれば、そのまま普通学級に在籍させても構いません。学習の遅れがあったとしても特殊学級でその問題が解決するわけではありません。特殊学級はストレスをため過ぎないようにするための避難所であると考えるべきです。

また学習障害がないとしても学力の遅れが目立つ場合には学習塾に相談するのも一つの方法です。学習塾は会社によって対応がまちまちなので難しい部分がありますが、集団授業ではなく個別で対応してくれる塾を探してみると良いでしょう。

しかしながら、学習の遅れに対応できる先生を見つけることは簡単ではないかもしれません。大切なことは、講師の側とよくコミュニケーションをとって子供の性質を良く理解している先生を探すことです。そのためにいくつか塾を転々とすることは悪いことではありません。

学習に遅れがあっても早い段階であれば遅れを取り戻すこともできます。具体的に言えば小学4年生の段階では遅れを取り戻すことは難しくなることが多いと言われています。したがって、小学校低学年のうちに遅れを取り戻すことが肝心です。学習の遅れがあっても、それは障害ではなく単に遅れているだけであることも多いので、早めに手を打てば解消できる可能性があります。

大切なことは、もし小学校に入った自分の子供が学習に遅れが出た場合、放置せずに問題点を観察することです。早く対処するほど遅れを取り戻せる可能性も高くなるので、子供の状況を常に見守ることが肝心です。

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