東京都立大2019理学部第2問 はさみうちの原理と区分求積 |sin nx| の山が並ぶパターン

関数 $f(x)$ は閉区間 $[0,\pi]$ で連続であり、$0\leqq x< y \leqq \pi$ ならばつねに $f(x)\leqq f(y)$ が成り立つとする。以下の問いに答えなさい。(首都大学東京(東京都立大)2019)

(1) 自然数 $n$ に対し、不等式
$$\displaystyle\sum_{k=0}^{n-1} f\left(\frac{\pi}{n}k\right)\int_{\frac{\pi}{n}k}^{\frac{\pi}{n}(k+1)}|\sin nx|dx\leqq\int_0^\pi f(x)|\sin nx|dx\\\leqq\sum_{k=0}^{n-1} f\left(\frac{\pi}{n}(k+1)\right)\int_{\frac{\pi}{n}k}^{\frac{\pi}{n}(k+1)}|\sin nx|dx$$
が成り立つことを示しなさい。
(2) 自然数 $n$ と整数 $k$ に対し、定積分
$$\displaystyle \int_{\frac{\pi}{n}k}^{\frac{\pi}{n}(k+1)}|\sin nx|dx$$
を求めなさい。
(3)$\displaystyle a_n=\int_0^\pi f(x)|\sin nx|dx$
で定まる数列 $\{a_n\}$ が収束することを示しなさい。


式がヤバすぎです。
これ区分求積やってるの。順番にやっていけば大丈夫。

式変形で証明する

まず、$0\leqq x< y \leqq \pi$ ならばつねに $f(x)\leqq f(y)$ というのは $f(x)$ が単調増加する関数である、という意味です。

単調増加って例えば $y=2x$ みたいにグラフが右にいくほど高くなるヤツのことで、逆にグラフが上がったり下がったりするヤツは単調増加ではない。

ここから $f(x)|\sin nx|$ のグラフをイメージするとこのような感じです。

絶対値がついているから、$\sin$ のグラフのマイナスの部分をひっくりかえす。$f(x)$ は単調増加だから山がだんだん高くなる。

また、不等式の左側の式はグラフで表すと以下のオレンジの部分になります。

右側はこうなります。


はあ。

ここでは実際グラフの形は正確には分からなくてもいいの。式変形で作っていくから。あくまでイメージ。

で、どうやって証明するんですか?

証明する式の形から逆算で考えるといいよ。

$\sin$ の山の一つについて検討する

まずは式の中で明確に大小関係が言える部分を考えます。そうすると関数 $f(x)$ のカッコの中の部分を使って
$\displaystyle\frac{\pi}{n}k\leqq x\leqq \frac{\pi}{n}(k+1)$
とできます。

$\displaystyle\frac{\pi}{n}k$ や $\displaystyle\frac{\pi}{n}(k+1)$ は山の一番低い部分だよね。その間に $x$ があるとするの。

上のグラフの $n=4$ のケースで言うと、$k=1$ だと $\frac{\pi}{4}k=\frac{\pi}{4},\frac{\pi}{4}(k+1)=\frac{2\pi}{4}$ になるよね。つまり、問題文の不等式の左側と右側の積分って $\sin$ の山 1 つ分を表している。

そこから
$\displaystyle f\left(\frac{\pi}{n}k\right)\leqq f(x)\leqq f\left(\frac{\pi}{n}(k+1)\right)$

$f(x)$ は単調増加だから、$y=f(x)$ と考えるとグラフで右にいくほど $y$ は大きくなる。だからこの関係が成り立つ。

証明する不等式に近づけていきましょう。今度は $|\sin nx|$ をかけます。
$\displaystyle f\left(\frac{\pi}{n}k\right)|\sin nx|\leqq f(x)|\sin nx|\leqq f\left(\frac{\pi}{n}(k+1)\right)|\sin nx|$
さらに積分してシグマをつけましょう。
$\displaystyle \sum_{k=0}^{n-1}\int_{\frac{\pi}{n}k}^{\frac{\pi}{n}(k+1)} f\left(\frac{\pi}{n}k\right)|\sin nx|dx\leqq \sum_{k=0}^{n-1}\int_{\frac{\pi}{n}k}^{\frac{\pi}{n}(k+1)} f(x)|\sin nx|dx\leqq \sum_{k=0}^{n-1}\int_{\frac{\pi}{n}k}^{\frac{\pi}{n}(k+1)} f\left(\frac{\pi}{n}(k+1)\right)|\sin nx|dx$

ここで $\displaystyle f\left(\frac{\pi}{n}k\right)$ と $\displaystyle f\left(\frac{\pi}{n}(k+1)\right)$ は式の中に $x$ を含まないので定数です。よって、積分の式の外に追い出しましょう。
$\displaystyle \sum_{k=0}^{n-1} f\left(\frac{\pi}{n}k\right) \int_{\frac{\pi}{n}k}^{\frac{\pi}{n}(k+1)} |\sin nx|dx\leqq \sum_{k=0}^{n-1}\int_{\frac{\pi}{n}k}^{\frac{\pi}{n}(k+1)} f(x)|\sin nx|dx\leqq \sum_{k=0}^{n-1} f\left(\frac{\pi}{n}(k+1)\right) \int_{\frac{\pi}{n}k}^{\frac{\pi}{n}(k+1)} |\sin nx|dx$

これで左側と右側はできあがりですが、真ん中の部分を変形する必要があります。
$\displaystyle\sum_{k=0}^{n-1}\int_{\frac{\pi}{n}k}^{\frac{\pi}{n}(k+1)} f(x)|\sin nx|dx$

上でやったけど積分のところって $\sin$ の山 1 つ分。それをシグマ使って山を並べていくんだけど、そうすると積分の式は一つにまとまる。

シグマが $k=0$ から $k=n-1$ までということは
$\displaystyle\int_{0}^{\frac{\pi}{n}} \cdots+\int_{\frac{\pi}{n}}^{\frac{2\pi}{n}} \cdots+\int_{\frac{2\pi}{n}}^{\frac{3\pi}{n}} \cdots+\cdots+\int_{\frac{(n-1)\pi}{n}}^{\pi} \cdots=\int_{0}^{\pi}\cdots$
となるはずです。これで証明完了です。

したがって
$\displaystyle\sum_{k=0}^{n-1} f\left(\frac{\pi}{n}k\right)\int_{\frac{\pi}{n}k}^{\frac{\pi}{n}(k+1)}|\sin nx|dx\leqq\int_0^\pi f(x)|\sin nx|dx\leqq\sum_{k=0}^{n-1} f\left(\frac{\pi}{n}(k+1)\right)\int_{\frac{\pi}{n}k}^{\frac{\pi}{n}(k+1)}|\sin nx|dx$(証明終わり)

(2)

自然数 $n$ と整数 $k$ に対し、定積分
$$\displaystyle \int_{\frac{\pi}{n}k}^{\frac{\pi}{n}(k+1)}|\sin nx|dx$$
を求めなさい。

さっきも言ったけど、この積分は $\sin$ の山一つを表している。絶対値を外すためにはプラスのときとマイナスのときを考える必要がある。

絶対値の中身によって場合分けする

$\displaystyle \int_{\frac{\pi}{n}k}^{\frac{\pi}{n}(k+1)}|\sin nx|dx$
$x:\frac{\pi}{n}k\rightarrow\frac{\pi}{n}(k+1)$ のとき
$nx:\pi k\rightarrow\pi(k+1)$

つまり $k=1$ なら $\pi\rightarrow 2\pi$、$k=2$ なら $2\pi\rightarrow 3\pi$ みたいになる。$k$ が奇数なら $\sin$ はマイナスだし、偶数ならプラスってこと。

よって
(i) $k=2m+1$ のとき $\sin nx\leqq 0$ だから
$\displaystyle \int_{\frac{\pi}{n}(2m+1)}^{\frac{\pi}{n}(2m+2)} -\sin nx dx$
$\displaystyle =\frac{1}{n}[\cos nx]_{\frac{\pi}{n}(2m+1)}^{\frac{\pi}{n}(2m+2)}$
$\displaystyle =\frac{1}{n}\{\cos \pi(2m+2)-\cos \pi(2m+1)\}$

$\pi(2m+2)$ は $m=0$ からはじめると $2\pi,4\pi,6\pi\cdots$ となるから、$\cos$ の値は $1$ になる。同じく $\pi(2m+1)$ は $\pi,3\pi,5\pi\cdots$ となるから、$\cos$ の値は $-1$ になる。

$\displaystyle =\frac{1}{n}(1+1)=\frac{2}{n}$

(ii) $k=2m$ のとき $\sin nx\geqq 0$
$\displaystyle \int_{\frac{2m\pi}{n}}^{\frac{\pi}{n}(2m+1)} \sin nx dx$
$\displaystyle =-\frac{1}{n}[\cos nx]_{\frac{2m\pi}{n}}^{\frac{\pi}{n}(2m+1)}$
$\displaystyle =-\frac{1}{n}\{\cos \pi(2m+1)-\cos 2m\pi\}$

今度は $\pi(2m+1)$ は $\pi,3\pi,5\pi\cdots$ となるから $\cos$ の値は $-1$。$2m\pi$ は $0,2\pi,4\pi\cdots$ となるから $\cos$ の値は $1$ となる。

$\displaystyle =-\frac{1}{n}(-1-1)=\frac{2}{n}$
したがって、$\displaystyle \int_{\frac{\pi}{n}k}^{\frac{\pi}{n}(k+1)}|\sin nx|dx=\frac{2}{n}$

(3)

$\displaystyle a_n=\int_0^\pi f(x)|\sin nx|dx$
で定まる数列 $\{a_n\}$ が収束することを示しなさい。

$\sin$ の山ってどんどん大きくなるから発散するんじゃないんですか?

そうじゃなくて、$n$ を$\infty$ に持っていくんだからこんな感じよ。

$x$ の範囲は一緒で山の数が増えていく。見た目、収束しそうな感じになってるでしょ?

はさみうちの原理を使う

まずは(2)の結果を(1)に代入する。

$\displaystyle\sum_{k=0}^{n-1} f\left(\frac{\pi}{n}k\right)\frac{2}{n}\leqq\int_0^\pi f(x)|\sin nx|dx\leqq\sum_{k=0}^{n-1} f\left(\frac{\pi}{n}(k+1)\right)\frac{2}{n}$

こういう形きたらはさみうちの原理。

両側の極限出すヤツでしたっけ?

そうそう、それそれ。

左側の式からいきます。
$\displaystyle\sum_{k=0}^{n-1} f\left(\frac{\pi}{n}k\right)\frac{2}{n}$
$\displaystyle \frac{2}{n}$ は定数なので外に追い出します。
$\displaystyle \frac{2}{n}\sum_{k=0}^{n-1} f\left(\frac{\pi}{n}k\right)$
$n$ 入ってるけど、外に追い出していいんですか?というか基準が分からない。

ここでは変化する数は $k$ なんだから $k$ が含まれない部分は定数と考えるのよ。

区分求積に持ち込む

ここから極限を考えるのですが、$\displaystyle f\left(\frac{\pi}{n}k\right)$ の中身が分からないのでそのままでは極限の計算はできません。

$\displaystyle \lim_{n\rightarrow\infty} \frac{2}{n}\sum_{k=0}^{n-1} f\left(\frac{\pi}{n}k\right)$

ただ、教科書でこれっぽい形の式みたことない?

区分求積?あんまり覚えてないです。

区分求積の考え方は上の図のようになります。関数を長方形の面積の集まりとして表し、長方形の横幅を限りなく細かくしていくと、最終的に関数の積分(面積)になります。

長方形の面積の縦方向は $\displaystyle f\left(\frac{\pi}{n}k\right)$ で横方向が $\displaystyle \frac{\pi}{n}$ だから、面積は $\displaystyle \frac{\pi}{n}f\left(\frac{\pi}{n}k\right)$ だよね。

この形に合わせるために、式を細工します。
$\displaystyle \lim_{n\rightarrow\infty} \frac{2}{n}\cdot\frac{n}{\pi}\sum_{k=0}^{n-1} \frac{\pi}{n}f\left(\frac{\pi}{n}k\right)$
$\displaystyle= \frac{2}{\pi}\int_0^\pi f(x)dx$
右辺も同様に
$\displaystyle \frac{2}{\pi}\int_0^\pi f(x)dx$
よって、はさみうちの原理より
$\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty} a_n=\frac{2}{\pi}\int_0^\pi f(x)dx$
したがって、数列$\{a_n\}$ は収束する。
これ収束してるんですか?

してる。関数は具体的には分からないけど、定積分だから何らかの決まった面積が出てくる。ただ収束する値は関数の形によって変わってくるよね。