学費と収入が割に合わない学部は? アメリカの場合

アメリカでは大学に通うために学費ローンを抱えている学生が多くいます。借金を抱えて大学に通うことに本当に見返りがあるのか、アメリカの学生にとっても大きな悩みの種です。この度、アメリカの教育省は各大学の卒業生たちについて、抱えている負債や就職時の初年度の収入についてのデータを公表しました。データによると、大学や学部によって、学生が卒業時までに抱える借金の額や、卒業後の収入に大きな差があることが分かりました。たとえば、就職初年度の所得が高かった職業の一つに看護師があります。さらに、大学によっては卒業した看護師が驚くような収入を得ているケースもあるようです。

”しかし、小規模な公的または非選択的(入学試験による学生の選別をあまりしない)非営利の私立機関での多くの看護または保健プログラムもまた、そのカテゴリーの上位を占める。たとえば、ソノマ州立大学での看護学の学士号プログラムは、債務の中央値が12,500ドル(136万円)、収入の中央値が110,300ドル(1205万円)である。”

私立大学に進むほうが借金は増えやすい

公表されているデータはあくまで就職初年度の年収の数値であるため、生涯所得を反映したものではありません。とは言え、一つの指標として貴重なデータとなっています。学生の債務の大きさで言うと、やはり公立系の大学よりも私立大学に進んだ学生の方が多くの債務を抱える傾向があるようです。4年生大学卒の学士号の場合、公立の大学の卒業生で債務が初年度の年収を上回ったのは全体の17%でしたが、私立大学の場合は半数以上の学生が債務の方が大きくなりました。特に医学や法律系の学生は多くの債務を抱える傾向がありました。しかし、これらの学生は生涯所得は高くなるので、債務に見合う利益があると考えた方が良さそうです。見返りの大きな学部ほど債務の額も大きくなりがちなのはアメリカでも同じようです。

収入の高い学部・低い学部

データによると、アメリカの大学における卒業生の初年度年収の高い学部は看護、コンピューターサイエンス、情報技術、電子工学、会計、経営、コンピューター工学です。収入の中央値は63,150ドル(690万円)に上ります。一方、収入の低い学部は、心理学、演劇、生物学、英文学、美術、健康とフィットネス、音楽です。収入の中央値は22,400ドル(244万円)でした。進む学部によって、大きな差があることが分かります。

看護師の仕事は年齢に応じた所得の向上は弱いものの、初年度から高い年収が期待できる職業である。

こうして見てみると、STEM分野と呼ばれる理系の学部が強さを発揮する中、例外的に生物学は見返りに乏しい学問であることが分かります。また、大学院卒を見てみると、ソーシャルワーカーやカウンセラー、教師といった部門も所得が低い傾向があるようです。

この傾向は日本でもある程度当てはまるものがあるでしょう。大学に進むにあたって奨学金を申請する受験生も多いかと思いますが、将来の進路を選択する上において参考にしてみると良いかもしれません。