DNAビッグデータが過去の未解決事件を裁く データベースとプライバシーをどう考えるか

民間の遺伝子鑑定会社は、あなたの遺伝子からあなたの祖先がどこに住んでいたか、どのような民族出身なのかを明らかにしてくれます。一方で、こうした個人のDNAデータは犯罪捜査にも役立ちます。FamilyTreeDNAは消費者に対し、DNAのデータを積極的に犯罪捜査に提供するよう呼び掛けています。

”FamilyTreeDNAは、法の執行が消費者データを入手することを許可するだけでなく、戦略を適用することによって自分自身を区別している。その会社は消費者に警察が犯罪を解決するのを助ける目的のために遺伝情報を寄付するよう要求している。あなたが他の会社を使って他の場所でDNA検査を受けたことがある場合は、無料でファイルをFamilyTreeDNAにアップロードできる。”

DNAデータベースが未解決事件に革命をもたらした

犯罪捜査におけるDNA鑑定は1990年代ごろから信頼性が向上し、本格的に用いられるようになりました。その当時のDNA鑑定は多額の費用がかかるものであり、誰もが検査を受けられるわけではありませんでした。

綿棒などで口腔の粘膜を採取するだけで手軽に遺伝子の検査が行える。

しかし、2000年に発足したFamilyTreeDNAなどの民間の遺伝子検査会社を利用すれば、個人でも手の届く金額で自分の遺伝子を調べてもらうことができます。遺伝子の検査結果から、自分がどの民族出身で先祖がどこに住んでいた可能性が高いかを調べることができます。その費用も日本円で1万~2万円程度なので、誰でも気軽に自分のルーツを探ることができるのです。民族構成が複雑な移民国家アメリカならではのサービスと言えるかもしれません。

また、こうしたデータは犯罪捜査にも役立っています。アメリカでは主に強制性交の事件で成果を上げています。この種類の犯罪では犯罪者と被害者が直接に接触するので遺伝子の証拠が残りやすいのです。

アメリカのFBIは法的執行により、こうした企業が所有している遺伝子のデータを入手することがしばしば認められてきました。最近になってFamilyTreeDNAなどの企業がFBIの調査に協力してきたことが明らかになっています。FBIは犯罪調査にあたり、FamilyTreeDNAが所有する200万件のデータにアクセスしていると考えられています。

カルフォルニア警察は、2019年1月に31歳と9歳の女性を強姦した容疑者を逮捕しました。犯罪が起きたのは1998年です。また、カルフォルニアのジェームス・アラン・ニールは1973年に11歳の少女を誘拐し殺害した容疑で逮捕されました。このようにDNAデータベースは過去の未解決事件を捜査する上で画期的なツールとして存在感を増すようになってきているのです。

犯罪捜査と個人情報のバランスをどう考えるか

しかし、これは国家権力が本人の知らぬ間に個人情報を取得しているということでもあり、プライバシーの侵害に相当するのではないかという疑念が生じます。そこでFamilyTreeDNAは2018年12月にサービス規約を変更し、DNA検査を申し込んだ顧客が情報を警察に提供するかどうかを選択できるようにしました。

上の英文にある通り、FamilyTreeDNAは個人情報保護の重要性を理解しつつも、こうしたデータが犯罪捜査に役立つことを認識し、顧客にむしろ積極的にDNAデータを公共の目的のために提供することを呼びかけています。