ディープラーニングは大量のCO2を排出する

マサチューセッツ大学アマースト校のエマ・スターベル博士らは2019年6月5日付けで、ディープラーニングにおけるエネルギー消費量についての調査を発表した。論文ではディープラーニングによる機械学習を行うコンピューターが大量の二酸化炭素を排出することが示唆されている。

ディープラーニングの二酸化炭素排出量

測定はNVIDIA Tesla P100というデータセンターやディープラーニングに用いられるGPUを8台接続したコンピューターで行われた。必要な電力はおよそ1500ワットであった。測定はいくつかの学習モデルで行われたのだが、機械翻訳のためのモデルにおいては学習を行うのに必要な計算時間は推定で27万時間必要であった。言い換えればおよそ30年ということになるので、高価なGPUを8台繋げてもこれほど時間がかかる処理が存在しているというのは驚きだ。

そして、この処理に伴う二酸化炭素排出量はおよそ284トンと推定されている。計算時間が30年とすれば1年当たりおよそ10トンということになる。この量は日本人一人当たりの年間排出量に相当する。

再生可能エネルギーを購入するGoogle

こうしたコンピューティングに伴う電力消費と二酸化炭素排出の問題に取り組んでいるのがGoogleだ。同社は自社開発のTPUというプロセッサを用いてディープラーニングのクラウドサービスを提供している。

Googleはこうしたサービスを提供する際に膨大な電力を消費しているのだが、現在その電力を再生可能エネルギーの購入によって賄う方向にシフトしつつある。Googleのエネルギーの購入先は、再生可能エネルギー56%、天然ガス14%、石炭15%、原子力10%という内訳で、再生可能エネルギーの大部分は風力発電である。

Googleは再生可能エネルギーの利用率を100%にすることを目標としており、それぞれの企業が自社のコンピューターで作業をするよりも、Googleのクラウドを活用することによって二酸化炭素の排出量を減らすことができると主張している。

アルゴリズムの改良とエネルギー効率の改善が急務

スターベル博士は現状のディープラーニングは研究者にとって非常に高コストであり、素晴らしいアイデアがあってもそれが実行できないことを懸念している。今後、より効率の良いハードウェアやアルゴリズムの開発によって研究の可能性を広げ、環境への負荷を軽減することが求められている。