第二次導関数と変曲点をざっくりおさらい(東京都立大2017理系第1問)
実際の入試問題で第二次導関数を求めてみましょう。
演習問題
$n$ を自然数とし,$e$ を自然対数の底とする。関数
$f(x)=x^{n-1}e^{-x}$
について,以下の問いに答えなさい。(東京都立大2017)
(1) すべての自然数 $n$ に対して,$x\geqq0$ のとき $e^x>\cfrac{x^n}{n!}$ が成り立つことを,$n$ に関する数学的帰納法によって示しなさい。
(2) 極限 $\displaystyle\lim_{x\rightarrow\infty}f(x)$ を求めなさい。
(3) $n\geqq3$ の場合に,$x>0$ の範囲における $f(x)$ の最大値,およびそのときの $x$ の値を求めなさい。また,$x>0$ の範囲における $y=f(x)$ のグラフの変曲点の $x$ 座標を求めなさい。
グラフが単調増加であることを利用する
(1)から始めます。すべての自然数 $n$ に対して,という言葉を見たら,まずは数学的帰納法で証明することを考えてみましょう。
$x\geqq0$ のとき $e^x>\cfrac{x^n}{n!}$ ・・・(*)
[I] $n=1$ のとき
$\cfrac{x^n}{n!}=x$
不等式を証明するために,(*)の右辺を移項して式が 0 以上になることを証明します。
$g(x)=e^x-x$ として
$g'(x)=e^x-1$
増減表は
$\def\arraystretch{1.5}\begin{array}{|c|c|c|}\hline x&0&\cdots\\\hline g'(x)&0&+\\\hline g(x)&1&\nearrow\\\hline\end{array}$
$x\geqq0$ のとき,$g(x)$ は単調増加であるから,$g(x)>0$ が成り立つ。
よって,$e^x>x$ が成り立つ。
[II] $n=k$ のとき,(*)が成り立つと仮定して,$n=k+1$ とすると
$h(x)=e^x-\cfrac{x^{k+1}}{(k+1)!}$
$h'(x)=e^x-\cfrac{(k+1)x^k}{(k+1)!}$
$(k+1)!=1\cdot2\cdots k\cdot(k+1)$ より
$(k+1)!=k!(k+1)$ となるので
$h'(x)=e^x-\cfrac{(k+1)x^k}{k!(k+1)}$
$=e^x-\cfrac{x^k}{k!}>0$
よって,$n=k+1$ のときも(*)が成り立つ。
[I],[II]より,$x\geqq0$ のとき,すべての自然数 $n$ に対して,$e^x>\cfrac{x^n}{n!}$ が成り立つ。(証明終わり)
はさみうちの原理
(2)に進みます。
(1)の不等式を使って,$f(x)$ の形に合わせていきます。
$e^x>\cfrac{x^n}{n!}$
$\cfrac{1}{e^x}<\cfrac{n!}{x^n}$
$0<e^{-x}<\cfrac{n!}{x^n}$
$0<x^{n-1}e^{-x}<\cfrac{x^{n-1}n!}{x^n}$
$0<x^{n-1}e^{-x}<\cfrac{n!}{x}$
はさみうちの原理より
$\displaystyle\lim_{x\rightarrow\infty}0<\lim_{x\rightarrow\infty}x^{n-1}e^{-x}<\lim_{x\rightarrow\infty}\cfrac{n!}{x}$
$\displaystyle0<\lim_{x\rightarrow\infty}x^{n-1}e^{-x}<0$
したがって
$\displaystyle\lim_{x\rightarrow\infty}f(x)=0$
(証明終わり)
第二次導関数を求める
(3)に進みます。変曲点が必要なので,第二次導関数,つまり二回目の微分を求めます。
$f(x)=x^{n-1}e^{-x}$ $(n\geqq3,\space x>0)$
$f'(x)=(x^{n-1})’e^{-x}+x^{n-1}(e^{-x})’$
$=(n-1)x^{n-2}e^{-x}-x^{n-1}e^{-x}$
$=x^{n-2}e^{-x}(n-1-x)$
ここで,いったん極値を求めておきます。
$x^{n-2}e^{-x}(n-1-x)=0$ とすると
$x>0$ より $x^{n-2}e^{-x}\not=0$ だから
$n-1-x=0$
$x=n-1$
$\def\arraystretch{1.5}\begin{array}{|c|c|c|c|c|}\hline x&(0)&\cdots&n-1&\cdots\\\hline f'(x)&&+&0&-\\\hline f(x)&&\nearrow&&\searrow\\\hline\end{array}$
最大値は
$f(n-1)=(n-1)^{n-1}e^{-(n-1)}$
$=(n-1)^{n-1}\cdot\cfrac{1}{e^{n-1}}$
$=\Big(\cfrac{n-1}{e}\Big)^{n-1}$
さらに微分します。
$f”(x)=(x^{n-2}e^{-x})'(n-1-x)+(n^{n-2}e^{-x})(n-1-x)’$
$=\{(x^{n-2})’e^{-x}+x^{n-2}(e^{-x})’\}(n-1-x)-x^{n-2}e^{-x}$
$=\{(n-2)x^{n-3}e^{-x}-x^{n-2}e^{-x}\}(n-1-x)-x^{n-2}e^{-x}$
$=x^{n-3}e^{-x}\{(n-2-x)(n-1-x)-x\}$
$=x^{n-3}e^{-x}\{(n-1)(n-2)-(n-2+n-1)x+x^2-x\}$
$=x^{n-3}e^{-x}\{(n-1)(n-2)-2(n-1)x+x^2\}$
変曲点を求めます。
$x^{n-3}e^{-x}\{(n-1)(n-2)-2(n-1)x+x^2\}=0$ とすると
$x^{n-3}e^{-x}\not=0$ だから
$x^2-2(n-1)x+(n-1)(n-2)=0$
二次方程式の解の公式より
$x=n-1\pm\sqrt{(n-1)^2-(n-1)(n-2)}$
$=n-1\pm\sqrt{n^2-2n+1-n^2+3n-2}$
$=n-1\pm\sqrt{n-1}$
変曲点が求められました。
したがって
最大値は $\Big(\cfrac{n-1}{e}\Big)^{n-1}$
変曲点は $n-1\pm\sqrt{n-1}$ (答え)
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